韓国人監督もオスカー受賞、外国出身監督なくしてハリウッドは成り立たない!

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『パラサイト』でアカデミー賞で監督賞を受賞したポン・ジュノ監督
『パラサイト』でアカデミー賞で監督賞を受賞したポン・ジュノ監督

ポン・ジュノ監督がアカデミー賞で作品賞・監督賞など4冠に輝いてから約1ヵ月。ハリウッドでポン・ジュノ・フィーバーが続いている。米国での『パラサイト 半地下の家族』の興収は5200万ドルを突破。ハリウッドではジュノ監督へ仕事の依頼が相次いでいるといわれており、次のプロジェクトとして、『パラサイト』のテレビミニシリーズ化をアダム・マッケイ監督とHBOで製作すると報じられた。

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近年、アカデミー賞監督賞の受賞者はアメリカ以外の外国出身者が多い。11年以降を見ると、『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼルを除き、全て外国出身者だ。

11年『英国王のスピーチ』トム・フーパー(イギリス)
12年『アーティスト』ミシェル・アザナヴィシウス(フランス)
13年『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』アン・リー(台湾)
14年『ゼロ・グラビティ』アルフォンソ・キュアロン(メキシコ)
15年『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(メキシコ)
16年『レヴェナント: 蘇えりし者』イニャリトゥ(メキシコ)
17年『ラ・ラ・ランド』デイミアン・チャゼル(アメリカ)
18年『シェイプ・オブ・ウォーター』ギレルモ・デル・トロ(メキシコ)
19年『ROMA/ローマ』アルフォンソ・キュアロン(メキシコ)
20年『パラサイト』ポン・ジュノ(韓国)

ハリウッドにはこれまで、イギリスをはじめとするヨーロッパや英語圏のオーストラリア、ニュージーランドから多くの監督が集まってきた。アジアでもジョン・ウーやアン・リーが数多くのハリウッド映画を監督している。特にジョン・ウーがハリウッドで注目されたのは早く、93年『ハード・ターゲット』がハリウッド進出1作目。その後、96年『ブロークン・アロー』、97年『フェイス/オフ』、00年『M:I-2』などを監督した。

ジュノ監督のオスカー受賞で韓国映画人にスポットが当たったが、実は韓国に目が向けられるのはこれが初めてではない。13年に3人の韓国人監督がハリウッド映画を製作している。キム・ジウン監督はアーノルド・シュワルツェネッガー主演の『ラストスタンド』、パク・チャヌク監督はミア・ワシコウスカやニコール・キッドマンが出演した『イノセント・ガーデン』、そしてポン・ジュノ監督は『スノーピアサー』だ。3作とも興行が振るわなかったからか、その後ハリウッド映画を監督することはなかった。

再び韓国映画界にハリウッドが注目を寄せているわけだが、韓国映画人のハリウッド進出を後押ししそうな動きもある。『パラサイト』を製作した韓国のCJエンタテインメントが、『ミッション:インポッシブル』シリーズなどを手がけるハリウッドの製作会社スカイダンス・メディアに出資した。今後両社が共同製作する作品が増えれば、韓国人監督や俳優の起用が増えるかもしれない。(文:相良智弘/フリーライター)

相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。