創立100周年を迎えたディズニー、二度の低迷期を乗り越え愛され続ける秘密を探る

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【興行トレンド】2023年10月16日、創立100周年を迎えたウォルト・ディズニー・カンパニー。ウォルト・ディズニーと兄ロイ・ディズニーが1923年10月16日にロサンゼルスにアニメーションスタジオを設立し、アニメーション事業は挫折と復活を繰り返してきた。1937年「白雪姫」から始まった長編ディズニーアニメーション映画の歴史は、66年にウォルト・ディズニーが死去するまでが第1期だ。「ピノキオ」(40年)、「シンデレラ」(50年)、「眠れる森の美女」(59年)など数々の名作を生み出す黄金期は、ウォルト自身が引っ張っていた。

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第2期は低迷期。66年のウォルト死去後から80年代前半まで。彼が亡くなると、アニメーション部門は徐々に縮小されて製作ペースが鈍り、3~4年に1本しか公開できなくなる。

「男の子路線」の冒険ドラマで手痛い失敗、ピクサー旋風が復活の鍵

第3期は復活期で、80年代後半から90年代まで。84年にディズニーのCEOとして迎えられたマイケル・アイズナーはアニメ制作の強化に着手。残っていたアニメ部門のスタッフから新しい企画を募り、86年「オリビアちゃんの大冒険」、88年「オリバー/ニューヨーク子猫ものがたり」を公開。89年に「リトル・マーメイド」が大ヒットする。映画のヒット以上にディズニーアニメにとって意義深かったのは、アカデミー賞で作曲賞と主題歌賞(アンダー・ザ・シー)を受賞したこと。ディズニーアニメが主題歌賞を受賞するのは、40年「ピノキオ」が「星に願いを」で受賞して以来、約50年ぶりのこと。ミュージカル・ナンバーの数々が映画を盛り上げる「ディズニーミュージカルアニメ」の復活ともいえる。

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復活の立役者が主題歌と作曲を手掛けたアラン・メンケンだ。『リトル・マーメイド』に続き、91年『美女と野獣』、92年『アラジン』の主題歌と作曲も担当し両部門でアカデミー賞を受賞。ディズニーアニメは第2期黄金期を迎える。『美女と野獣』や94年『ライオン・キング』はブロードウェーのミュージカルになり、多面展開された。

だが第4期は再び低迷する。2001年『アトランティス/失われた王国』、02年『トレジャー・プラネット』では、「男の子路線」、すなわち青年を主人公にした冒険ドラマを製作したが、興収は1億ドルに届かず伸び悩んだ。

当時旋風を巻き起こしていたのがピクサーだ。95年に世界初の長編CGアニメーション『トイ・ストーリー』、98年に『バグズ・ライフ』を公開。その後は1~2年に1本のペースで製作を続け、連続大ヒットを記録している。おもちゃやモンスターの世界などユニークな物語設定にしながらも、友情や家族の絆などを描き、普遍的な感動を伝えるストーリーで、ディズニーアニメのお株を奪った。

第5期は2000年代末から現在。ディズニーではマイケル・アイズナーの長期政権の後、2005年にロバート・アイガーがCEOに就任する。06年にピクサーを買収し、中心的クリエイターのジョン・ラセターとピクサーのCEOエド・キャットマルにディズニーアニメの立て直しを託す。

ピクサーでは、監督やストーリー作りの担当者などがチームを組み、意見を出し合って何度も修正を加えながら、ストーリーを練っていく。彼はこの手法をディズニーアニメにも導入。“新生ディズニーアニメ”最初の作品が、犬を主人公にした08年『ボルト』だ。

その後、09年『プリンセスと魔法のキス』、10年『塔の上のラプンツェル』とディズニーミュージカルアニメを復活させた。そして13年『アナと雪の女王』(日本公開14年)が大ヒットし、ディズニーアニメ興行成績新記録を樹立する。10年代以降は『ベイマックス』(14年)、『ズートピア』(16年)、『モアナと伝説の海』(16年、日本公開17年)、『アナと雪の女王2』(19年)といった優れた作品を生み出した。(文:相良智弘/フリーライター)

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