熱狂する5万6000人超のファンの姿までクッキリ! 4K映像で蘇る伝説的ライヴ

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『ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK -The Touring Years』
(C)Subafilms Ltd.
『ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK -The Touring Years』
(C)Subafilms Ltd.

…前編「全盛期のビートルズが目の前に〜」より続く…

【映画を聴く】『ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK -The Touring Years』後編
4Kリマスターされたボーナス映像も必見!

“少しも気を緩めることができない140分”と書いたばかりだが、『ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK -The Touring Years』の本編は、正確には109分。エンド・クレジット後に31分ものボーナス映像が追加されており、それと合わせて140分という内訳になっている。

そのボーナス映像というのは1965年8月15日、NYのシェイ・スタジアムで行なわれた伝説のライヴ・パフォーマンス。これまでも『ザ・ビートルズ・アンソロジー』などで断片的に見聴きすることができた素材だが、本作では映像を4Kリマスターで再編集。熱狂する5万6000人以上のファンひとりひとりの表情まではっきり分かるほど見通しのいい高精細映像となって蘇っている。ボーナス映像ながら、本編にも負けず劣らず貴重な記録だ。

また、このボーナス映像のほか、先行リリースされたライヴ・アルバム『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』でも際立っているのが、ジャイルズ・マーティンによってレストアされたサウンドの素晴らしさだ。当時の彼らのライヴ録音には、ファンの凄まじい金切り声が終始入り込み、音楽作品として鑑賞するにはやや難のあるクォリティしか望めなかったのだが(『ハリウッド・ボウル』が長くCD化されなかった理由もそこにあると思われる)、今回の音源はベールが一枚剥がされたような、実にクリアで瑞々しい歌と演奏を堪能することができる。

言うまでもなく、ジャイルズはビートルズのプロデューサーで今年3月に90歳で亡くなったジョージ・マーティン卿の息子だが、ここでのビートルズ愛に溢れた仕事ぶりを聴くにつけ、彼がいかに父から受け継いだ使命を真摯に全うしようとしているかが伝わってくる。と同時に、現代ほど演奏者のモニタリング環境が整っていない50年前に、“ジェット機の飛行音もかき消すほど”と言われた歓声の中でここまで腰の据わった演奏を繰り広げていたビートルズの演奏力の高さにも改めて驚かされる。今回のリミックス&リマスター音源でも歓声は相変わらず凄まじいが、歌と演奏がそれに埋もれることなく、グッと前にせり出してくるのだ。

先述のロンドン・レスター・スクエアでのワールド・プレミアには、ポール・マッカートニーとリンゴ・スターのほか、オノ・ヨーコやオリヴィア・ハリスン、そしてマドンナや元オアシスのリアム・ギャラガー、エリック・クラプトンらの姿も見られた。当のポールとリンゴがすこぶる元気なのが何より嬉しく、年々ビートルズが伝説化していくのに反して現役感を増す両人の近作は、いずれも聴き応えのあるものばかりだ。

そうなってくると気になるのが、1970年の映画『レット・イット・ビー』のこと。これまでオフィシャルにDVD/Blu-ray化されないまま“懸案事項”となっているこの作品のリリースも、来年あたりには実現するのだろうか? (文:伊藤隆剛/ライター)

『ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK -The Touring Years』は9月22日より公開中。

伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの 趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラ の青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる 記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。

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