「もし子どもがAVに出たいと言い出したら?」親が絶対やってはいけないことは…
【日本映画界の問題点を探る/番外編/AV出演の本当のリスクとは?4/最終回】6月に施行されたAV出演被害防止・救済法(※1)。今なお賛否が渦巻く本法律の成立に寄与したのが小室友里だ。かつてAV女優として大人気を博した小室に話を聞く4回目(最終回)。
※1:正式名称「性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律」。AV新法とも呼ばれている。
現在のAV業界は、2015年頃に起きたAV出演強要問題をきっかけに発足したAV人権倫理機構や知的財産進行協会(略称:IPPA)によって管理されており、状況は改善されつつあるという。しかし、それでもまだ見直すべき点は多いと指摘する小室。
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「AV業界は、国から業務改善の通達を2度ほど受けていたと聞いています。AV業界も通達を受けできる限りの努力をしてきたとは思いますが、一般社会的にまだ足りていなかったところへ、今回のAV新法によって一気にハレーションが起こった状態ではないでしょうか。ただ、この法律に限らず、まだまだ改善点は多いというのが私の印象です。たとえば、『AVにおける表現の自由とは何か』について。AV業界以外の方々からの意見を頂戴し、一般的に自分たちの作品がエンターテインメントとして成り立っているのか?いう目線も必要だと思います。あとは、AVを制作している方に向けた性のリカレント教育(学び直し)。子どもたちが受けている包括的性教育を、AV業界としても知っておいてひとつも損はないと思います。大人たちも、このタイミングを新たなスタートと捉え、エンターテインメントとしてのAVを作るにはどうしたらいいかをいま一度考えてみて欲しいです。『環境は意思より強い』という言葉があるように、いかに環境を変えて行けるかがAV業界の生き残り大作戦の1つになるのではないでしょうか」
業界全体を盛り上げていくためにも、小室が必要だと感じているのは女優たちの横のつながりを強化すること。
「組合ほど大きなものではなくてもいいので、女優さんたちの間で働き方や将来を話し合えるコミュニティを作ってはどうでしょうか。AV業界は、問題提起や改善に対してどこか他人事のようなところがあると感じています。かくいう私も昔はそんな感じで、プロダクションやメーカー任せなところがありました。でも、どうしたら自分たちが働きやすくなるのかといった意見をみんなで話し合い、それを共有することで、変化のきっかけも生まれるのではないでしょうか。自分たちで自分たちの働き方を良くしていくためには、チャレンジする価値のあることだと思います」
そして最後に、先輩でもある小室からこれからAV業界に入ることを考えている女性たちやその家族に向けて伝えたいことがあるという。
「これは塩村議員もおっしゃっていますが、ご自身の意思としてやりたいのであれば、それは全く否定されるものではありません。ただその一方で、被害に遭っている人がゼロではないということはしっかりと認識されてお入りになったほうがいいと思います。つまり自分が被害者になる可能性もあるということです。日本は、『ノー』と言わなければ『イエス』になる社会です。ご自身が被害者側になった時、『ノー』と言うことも、『ノーだった』ことを証明するのも大変です。いまでもAVに出演した女性がどこかで苦しんでいて、自分もその1人になる可能性が十分にあるということだけは忘れないでいただきたいです。また余談ですが、私の元にはよく、親御さんからの、「もし自分の子どもがAVに出たいと言ってきたら、あるいは出ていたらどうすればいいですか?」という相談があります。私は、まずは『どうして出てみたいのか』を聞いてあげてください、とお返事しています。これは話し合いでも説得でもなくカウンセリングに近いのですが、絶対に否定することなく、『あなたの意見を尊重するから、まずは話を聞かせて欲しい』と伝えることが大切です。逆効果なのは止めること。止めれば止めるほど反発心が生まれます。まず耳を傾けて、そのうえで、『どうして出て欲しくないのか』と伝えることは、親子というよりも、人間同士の対話になると思います」(了)(text:志村昌美/photo:中村好伸)
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