【今日は何の日】アルツハイマーのふりをしてでも会いたい!「シルバーラブの日」に見てほしい感動作

#43年後のアイ・ラヴ・ユー#コラム#ブルース・ダーン#今日は何の日

43年後のアイ・ラヴ・ユー
『43年後のアイ・ラヴ・ユー』
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「シルバーラブの日」は、当時(1948年)68歳だった歌人の川田順が、恋仲になった30歳近く年下の大学教授夫人と家出したことに由来する記念日だそうだ。川田が詠んだ「墓場に近き老いらくの恋は恐るる何もなし」という歌から、当時「老いらくの恋」という言葉が流行した。今回「シルバーラブの日」にちなんでご紹介する作品の「老いらくの恋」は、どこまでもピュアでハートフルなのでぜひご覧いただきたい。

運命の女性に再び会いたいくて施設へ…『43年後のアイ・ラヴ・ユー』

『43年後のアイ・ラヴ・ユー』は、妻を亡くしてLA郊外で一人暮らしをしている70歳の元演劇評論家、クロードの純愛物語である。クロードを演じるのは、アルフレッド・ヒッチコック、フランシス・フォード・コッポラ、クエンティン・タランティーノなど数々の巨匠に愛されてきたハリウッドの名優、ブルース・ダーン。

クロードには、かつて妻と出逢う前に恋に落ちた運命の人がいた。女優のリリアンである。演劇評論家と女優は出逢ってすぐに惹かれ合い、たちまち恋に落ちて蜜月を過ごした。だが、とあるハードルがあって二人の愛は成就することはなく、クロードの心の中にはリリアンと過ごした日々が美しくも悲しい思い出として残った。そんな彼の恋心を再び揺さぶったのが、「女優リリアンがアルツハイマーで施設に入所」という新聞記事である。かつての恋人が病を患っている事を憂慮するとともに、なんとか自分のことを想い出してもらって彼女にもう一度「アイ・ラヴ・ユー」を伝えたいという気持ちが加速する。リリアンに逢いたい! との想いでクロードが考え出した秘策が、アルツハイマーになった振りをしてリリアンのいる施設に入る事だった。

ブルース・ダーン

離れて暮らす娘や孫たちには「しばらくスペイン旅行に行く」と嘘をつき、近所に住む盟友のシェーンを巻き込んでひと芝居打つことで見事施設への入所に成功する。アルツハイマーの進行は止められない、だが遅れさせることはできるという信念のもと、クロードはリリアンの記憶の扉を開くべく様々なアプローチを試みる。クロードのリリアンへの愛は、恋愛感情でもあり大きな大きな人間愛でもある。その一途な愛に、見る者はきっと心を打たれるに違いない。

おじいちゃんが主人公とあって、冒頭から「○○には△△がいい」「俺は□□を飲んでいる」といった高齢者あるあるの薬トークから幕を開ける辺りも面白い。施設入所計画に手を貸してくれた、盟友シェーンとのやり取りも絶妙だ。人はいくつになっても恋心を忘れない。「いい年をして」などと一蹴せずに、シルバーラブの日をきっかけに高齢者の恋愛に温かい目を向けていただけたらうれしい。(T)