76歳現役ダンサー田中泯「笑おうが怒ろうが自由。そのきっかけはすべて、見ている人の中にある」

#ドキュメンタリー#まれ#メゾン・ド・ヒミコ#名付けようのない踊り#大泉洋#犬童一心#田中泯#鎌倉殿の13人

(C)2021「名付けようのない踊り」製作委員会
(C)2021「名付けようのない踊り」製作委員会

大泉洋との対談特別映像公開『名付けようのない踊り』

犬童一心監督が世界的なダンサーとして活躍する田中泯の踊りと生き様を追った映画『名付けようのない踊り』が、1月28日に全国公開される。このたび、大泉洋と田中泯の対談特別映像が公開された。

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公開された動画では、2人の出会いから、俳優としてのアプローチ方法の違い、そして田中の踊りから大泉が受けた刺激と衝撃が語られる。

2人の初共演は、2015年放送のNHK朝の連続テレビ小説『まれ』にさかのぼる。「でも実は、そのちょっと前に京都の撮影所でお会いしているんですよ」と大泉が明かと、田中は「本当に? 記憶違いなんじゃないの?」と笑ってみせる。

大泉は続いて朝ドラ『まれ』の撮影を振り返り「塩田に立ってるあのお姿は、本物よりも本物らしいというか。何をやってもそうなっちゃうのがすごいなと。大河ドラマ(『鎌倉殿の13人』)でも泯さんだけがタイムスリップしてきた人に見えるんですよ。なんでなんだろうなと思いますよね」と感心する。

また、近年、俳優として映画・ドラマへの出演が相次ぐ田中が「僕はセリフを覚えるのが嫌いだし、上手に喋れるわけでもない。だからまず、その人はどういう気配を放っているのか、背中はどうなっているのか、肩がどうなっているのか、そっちの方に関心がいってしまう。身体がその人になるというかね」とその役作りの秘訣を解説。

それを受けて大泉も、「僕らだと、どうしてもセリフに頼っちゃうから。でも泯さんはそうじゃない。泯さんの踊りというのもそういうところから入っているんでしょうね」と納得の様子だ。

大泉が田中の踊りを初めて見たのは、中野区にある小劇場「plan-B」での公演だったが、その光景がどうにも忘れられなかったという。

「あの地下の狭いスタジオでギュウギュウになりながら見たんですが、暗闇の中から弱い光がフワッと浮かび上がると、泯さんが角材をおでこに当てて三角形にしていて。そこから動かないわけです。でもそこでおでこの角材がドーンと外れて、泯さんが崩れ落ちて、倒れてしまった。どうするのかなと思ったら、そこからまた角材を持ってジワーッと、ゆっくりと立ち上がって。また三角形になった。誰も何も言わない。とにかく静寂が流れるだけ。あれは何でしょうねぇ」

「あれだけ動かないものを見ているのに、体験としてはすごいスリリングなわけですよ。もう劇的としか言いようがない。衝撃的な体験でしたね」

「それで終わった後に泯さんとお話をする機会があって。『あの角材で三角形になった時はどんな気持ちだったんですか』と聞いたら、『きれいな三角形でしょ、と思っているんです』と。『では角材がバーンと外れたのはああいう演出なんですか』と聞いたら、『あれはビックリしました』って。『ハプニングなんですか?』と聞いたら『そうですよ』だって」

熱を帯びて語る大泉に対して、田中も笑顔で「終わった後に、あなたが『笑っちゃいけないんですか』って言ったのがうれしかったんですよ」とクスクス笑い。さらに、次のように芸術論を語った。

「僕はね、笑おうが怒ろうが、その見ている人の中に、きっかけがすべてあるはずなんです。だからあそこでゲラゲラと笑い声が出ても、まったく僕は平気なんですよ。平気というよりはむしろ望んでいるわけです。それが当たり前なんだから」

大泉は本作品について、「誰もが泯さんの踊りを生で見られるというわけではないからこそ、この映画は見た方がいい。こんな世界があるのかと思いますし、めくるめく(踊りの)世界が広がってるので。そういった意味では犬童監督がよくぞいろんなところについて行って、撮ってくれたなと思いますね」としみじみ語る。

そして最後に、「なぜ今、彼に惹かれるのか?」との問われた大泉は、次のように答えた。

「僕は突きつけられる感覚というか、それでいいのか、お前と言われてるような感覚があるんです。自分じゃ、なかなかムチを入れられないんですけど、そのムチを目の前で入れてもらえるというか。そういう感覚が欲しくて、田中泯を見たいと思うんじゃないですかね」

動画前編(https://youtu.be /XRo2e8pDdxE)

動画後編(https://youtu.be /8LtsQ6fAEY4)

田中泯と共に旅するような新感覚映像体験

本作品は、1978年にパリデビューを果たし、世界中のアーティストと数々のコラボレーションを実現するなど、現在までに3000回を超える公演を実現してきた田中泯のダンスを、『メゾン・ド・ヒミコ』への出演オファーをきっかけに親交を重ねてきた犬童一心監督が、ポルトガル、パリ、東京、福島、広島、愛媛などを巡りながら撮影し、『頭山』でアカデミー賞短編アニメーション部門に日本人で初めてノミネートされた山村浩二によるアニメーションなども交えながら描いたドキュメンタリー作品。

74歳のときポルトガル・サンタクルスの街角で踊り「幸せだ」と語る姿は、どんな時代にあっても好きなことを極め、心のままに生きる素晴らしさを気付かせてくれる。同じ踊りはなく、どのジャンルにも属さない田中のダンスを間近に感じさせながら、見る者の五感を研ぎ澄ます新たな映像体験をもたらしてくれる。

『名付けようのない踊り』は、1月28日に全国公開される。

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