ごく普通の青年はいかにしてオーストラリア史上最悪の犯罪者になったのか

第74回カンヌ国際映画祭で主演男優賞、第11回オーストラリア・アカデミー賞で最多8部門を受賞した『NITRAM』が、邦題を『ニトラム/NITRAM』として、3月25日から全国で公開されることが決定し特報映像(https://www.youtube.com/watch?v=WR8WZ9tNIxk)と場面写真が公開された。

同作は、1996年4月28日に、オーストラリアの世界遺産でもある観光地ポート・アーサー流刑場跡で起こった無差別銃乱射事件の犯人の半生を描いた初の映画作品。

コロンバイン高校銃乱射事件の3年前に起こり、2倍以上の死者数を出した通称「ポートアーサー事件」は、銃規制の必要性を全世界に問いかける先駆けとなり、さらに当時27歳の単独犯の思想的動機が不明瞭であることも拍車をかけ、新たなテロリズムの恐怖に各国が騒然となった象徴的な出来事として、今なお議論が絶えない歴史的な事件だ。

同作が描くのは、事件当日に至るまでの犯人の“日常”と“生活”。

舞台は、90年代半ばのオーストラリア、タスマニア島。かつて囚人の流刑地だった、観光しか主な産業がない閉塞したコミュニティに暮らす20代半ばの青年が、いかにして同国史上最多の被害者を出した銃乱射事件の犯人となったのか。何より「普通」の人生を求めていた彼が、なぜ銃を求め、いかに入手し、犯行に至ったのか。

その不可解な半生が、破格の臨場感と緊張感で描かれていく。

主人公「ニトラム(NITRAM)」を演じるのは、『ゲット・アウト』(17年)、『スリー・ビリーボード』(17年)などのケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。『ノーカントリー』(07年)でデビュー以降、『アンチヴァイラル』(12年)、『ゲットアウト』、『スリー・ビルボード』、『フロリダ・プロジェクト』(17年)、『デット・ドント・ダイ』(19年)など現代の名匠たちの作品に相次いで出演する、今ハリウッドで最も熱い視線を浴びるライジングスターだ。

「ニトラム」の内面に巣食う孤独と劣等感、屈折した男性性とナルシシズムを痛々しいまでのナイーブな演技で強烈に表現する“怪演”を見せ、カンヌ国際映画祭、シッチェス・カタロニア映画祭などで主演男優賞を受賞した。

オーストラリア国内では賛否両論の中で上映され絶賛を呼ぶ

監督は、「現代オーストラリア最高の映画作家」と称されるジャスティン・カーゼル。カンヌ映画祭国際批評家週間特別賞を受賞したデビュー作『スノータウン』(11年)以降、マリオン・コティヤールとマイケル・ファスベンダーを主演に迎えたハリウッド・メジャー作品『アサシン クリード』(16年)の監督などを務める一方、オーストラリア史の英雄ネッド・ケリーを描いた『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』(19年)を国内で低予算で撮るなど、メジャーとインディペンデント、グルーバルとローカルの間を自在に行き来し、唯一無二のキャリアを重ねる若き巨匠。

カーゼル監督の最高傑作にして到達点と各国映画祭・メディアで絶賛されているのが同作。

事件から25年しか経過しておらず、オーストラリア国内でも未だ議論が交わされ続け、当初映画化に当たっては否定的な声も大きかったにも関わらず、犯人の青年の人物像を、多角的・多層的・多極的に描き切った倫理的な姿勢、その比類なき映像美学と圧倒的なリアリティが、国内ジャーナリズムからも高く評価され、2021年12月に発表されたオーストラリア・アカデミー賞では作品賞・監督賞・脚本賞ほか主要8部門で最多受賞を果たした。

このたび公開された特報映像では、ケイレブ演じる「ニトラム」が子どもの時から好きだった花火遊びや、犬や猫との遊びに興じる様子とともに、サーファーに憧れ、海を眺める後ろ姿が印象的に切り取られ、彼のパーソナリティの一端が感じられる映像になっている。

『ニトラム/NITRAM』は、2022年3月25日より、全国で公開される。

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