名匠ジャンフランコ・ロージ監督がとらえた国境の真実

『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』(13年)と『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』(16年)でベルリン、ヴェネチアをドキュメンタリー映画で初めて制し、アカデミー賞ノミネートも果たした名匠ジャンフランコ・ロージの監督最新作『国境の夜想曲』(原題:『NOTTURNO』)が、来年22年2月11日から全国で公開されることが決定し、さらにこの度、ポスタービジュアルと共に予告編が公開された。

予告編では、オレンジ色の囚人服を着た無数の男たちが刑務所を徘徊する衝撃的なシーンで幕を開ける。

アメリカ国旗を掲げた装甲車が物々しく並ぶ場面が差し込まれつつも、亡き息子を思う母親、心に深い傷を負った子どもたちなど、戦争や侵略に翻弄され辛い状況に置かれた人々の苦境と「空が綺麗だ」と笑い合う恋人たちの姿が映し出され、どんな状況にあっても生きることを諦めない人々の力強さと希望を感じさせる。ショパンのノクターン第8番の旋律に乗せて「この作品の静謐さは、まるで俳句のようだ。感動し、圧倒された」というアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥのコメントで締めくくられる予告編は、見るもの全ての心を揺さぶるだろう。

・公開された本編映像はコチラ!

また、公開されたビジュアルは、どこか遠くを見つめる少年の表情が大きく印象的に使われ、国境地帯に住む人々の営みをとらえた場面の数々とどこまでも続く海のブルーが相まって、添えられた「どんな場所でも、どんな夜でも、かならず朝は来る」というキャッチコピーが希望の夜明けを感じさせるものに仕上がった。

独り旅で危険地帯に取り残された民衆の声に耳を傾けたロージ監督

『国境の夜想曲』は3年以上の歳月をかけて、イラク、クルディスタン、シリア、レバノンの国境地帯で撮影された。

この地域は2001年の9.11米同時多発テロ、2010年のアラブの春に端を発し、直近ではアメリカのアフガニスタンからの撤退と、現在と地続きで、侵略、圧政、テロリズムにより、数多くの人々が犠牲になっている。

そんな幾多の痛みに満ちた場所をロージ監督は通訳を伴わずに独り旅をし、そこに残された母親や子ども、若者の声に耳を傾け続ける。

母親たちの死を悼む哀悼歌、癒えることのない痛みを抱えた子どもたち、精神病院の患者たちによる政治の無意味さについての演劇。

そこには夜の暗闇から、一条の希望を見いだし生きようとする者たちの姿があった……。

ジャンフランコ・ロージ監督最新作『国境の夜想曲』は、2022年2月11日から全国で公開される。