「何人殺した?」戦争の記憶と“加害”に迫る 塚本晋也監督最新作、緊迫の本編映像解禁
#ジェフリー・ラッシュ#ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?#ロドニー・ヒックス#塚本晋也
「最初は数えていましたが…やめました」壮年期アレンの告白
第83回ヴェネチア国際映画祭で日本作品初の「金の小獅子賞」受賞した『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』より、本編映像が解禁された。壮年期のアレンが、自ら戦場で奪った命の数について語る緊迫の場面が収められている。
・戦争体験を語れる人が減っていく今だからこそ観るべき一作『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』
・【動画】【何人?戦場で奪った命の数】塚本晋也監督最新作、“加害”の記憶に苦しむ帰還兵/映画『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』本編映像

監督・俳優として国内外で高い評価を受ける塚本晋也監督の最新作となる本作は、9月11日より日本公開中。第83回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、ワールドプレミア上映では約8分間にわたるスタンディングオベーションを受けたほか、「レオンチーノ・ドーロ賞(Leoncino d’Oro/金の小獅子賞)」を受賞。日本作品として初の同賞受賞を果たした。さらに、第51回トロント国際映画祭スペシャル・プレゼンテーション部門にも正式出品され、海外でも注目を集めている。
日本公開後も反響は広がっており、映画レビューサービス「Filmarks」では4.3の高評価を記録。「凄まじく素晴らしい。塚本晋也監督の一世一代の映画」「震えた。何度も目を背けたくなった。だがこの映画はそれを許さない」「世界各地で戦争が起きる現代。今見るべき作品」など、作品の力強さや、今この時代に観る意味を訴える声が寄せられている。
原作は、ベトナム戦争に従軍したアレン・ネルソンが、自らの戦争体験と帰還後の葛藤をつづったノンフィクション。ネルソンは自身の体験をもとに日本全国で1200回以上の講演を行い、「ほんとうの戦争」を語り続けてきた。塚本監督はその証言をもとに、「戦争加害者の傷」というテーマに真正面から向き合う。撮影はニューヨーク、ベトナム、タイ、沖縄で行われた。

今回解禁されたのは、壮年期のアレンが、自ら戦場で奪った命の数について語る緊迫の本編映像。アカデミー賞俳優ジェフリー・ラッシュ演じる精神科医ニール・ダニエルズとのカウンセリングを通じて、アレンが長年封じ込めてきた戦争の記憶と、自らの“加害”に向き合う姿が映し出される。
18歳でベトナム戦争の最前線へ送られ、多くの命を奪ったアレン。塚本監督のカメラが映し出すのは、恐怖と混乱が支配する戦場で、人が人を殺すことに次第に慣らされていく現実だ。燃え上がる村を前に、「何人殺した?」と問われたアレンは、静かにこう答える。「最初は数えていましたが…やめました。数が多くなりすぎた」。
一人ひとりに名前があり、人生があるはずの命が、いつしかただの“数”へと変わっていく——。その短い言葉からは、戦争によって人間性が失われていく恐ろしさが浮かび上がる。同時にそれは、アレンが帰還後も長年苦しみ、生涯をかけて向き合うことになる“加害”の記憶でもあった。
そして映像は一転、静かなカウンセリングルームへ。戦場から帰還し、長年PTSDに苦しみ続ける壮年期のアレンを演じるのは、『RENT』のブロードウェイ・オリジナルキャストとして知られるロドニー・ヒックス。その向かいに座るのは、アカデミー賞俳優ジェフリー・ラッシュ演じる心理学者ニール・ダニエルズ医師だ。

ダニエルズ医師が静かに問いかける。「なぜ人を殺した?」。何度も繰り返されてきたその問いに、アレンは苛立ちを見せながら、「戦争で兵士だったんです。殺すか殺されるか、2つに1つでした」と答える。
ダニエルズ医師はそれ以上追及することなく、「分かった。来週また会おう」と告げる。しかし、部屋を去ろうとするアレンの背中に、再び同じ問いが突きつけられる。「なぜ人を殺した?」。戦争だったから。兵士だったから。殺さなければ殺されていたから——。それでもなお問い続ける医師と、答えることのできないアレン。この長年にわたる対話こそが、彼が封じ込めてきた記憶と、自らが行った「加害」に向き合っていくための道のりとなる。
塚本監督が本作で描こうとしたのは、戦場で起こる殺戮だけではない。戦争が終わり、兵士が故郷へ戻った後にも、その身体と精神の中で戦争が続いていくこと。そして「命令されたから」「戦争だったから」という言葉の奥にある、自らの加害と向き合わなければならない苦しみだ。
塚本監督はこれまで、「戦争に行くとこんなことになる。本当に嫌でしょう」と、戦争を国家や英雄の物語ではなく、そこへ送り込まれた“一人の人間”の身体と精神から描くことの重要性を語ってきた。
今回の本編映像は、『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』というタイトルに込められた“問い”そのものを、観客へ突きつけるものとなっている。
『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』は現在公開中。
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