『バーフバリ 王の凱旋』S.S.ラージャマウリ監督インタビュー

世界興収300億円を稼ぎ出したインド映画の鬼才を直撃!

#S.S.ラージャマウリ

本作を製作したのは、世界規準の物語だったから

絶叫上映のイベントなどで話題となったインド映画『バーフバリ 伝説誕生』。その続編にして完結編の『バーフバリ 王の凱旋』が、本日よりついに日本公開される。

世界興収300億円! 古代インドの神話的叙事詩「マハーバーラタ」をベースにした愛と復習の一大エンターテインメント作品について、インド映画の鬼才、S.S.ラージャマウリ監督に語ってもらった。

──『バーフバリ』2部作というインド映画の歴史に残る巨大な企画の発端と、製作プロセスについてお聞かせください。

監督:私は幼い頃からアマール・チートラ・カータ社が出している子ども向けのインド神話のコミックに夢中でした。そうした影響からか、映画監督になって以来、私は常にインド神話的な英雄物語を作りたいと思っていました。10年ほど前、私の父(本作の原案者V.ヴィジャエーンドラ・プラサード)が最初にシヴァガミのキャラクターに関するアイデアを話してくれ、とても興奮しました。父が話してくれたのは映画のファーストシーンにある、シヴァガミが自らの命と引き換えに幼な子を救う感動的な場面でした。それから、私たちはまず、『バーフバリ』2部作に登場する様々な登場人物を創り出していきました。そして、その登場人物たちが織り成す壮大な物語を組み立てていきました。製作準備が開始されたのは2012年の年末で、撮影開始は2013年に入ってからでした。

──最初から2部作にする予定だったのでしょうか?

監督:いいえ、違います。最初は1本の映画にする予定だったのですが、一旦撮影を始めてみると、様々な感情や見せ場が交錯する3代にわたる物語を1本の映画で語りきるのは不可能だと感じ、急遽2部構成に変更しました。

『バーフバリ 王の凱旋』撮影中のS.S.ラージャマウリ

──「マハーバーラタ」の影響についてお聞かせください。

監督:私はいつもインド神話の数々に魅かれてきましたし、私自身も私の作品も当然、その影響を大きく受けています。『バーフバリ』2部作の登場人物の多くは、「マハーバーラタ」の何人かの登場人物の性格や特徴を受け継いでいます。私のすべての作品だけでなく、実際問題、インド人のほとんどが神話の影響を受けています。

──主人公バーフバリに、インド映画のスター、プラバースをキャスティングした理由を教えてください。

監督:このキャラクターを演じてもらう俳優とは丸4年間を共に過ごさなければなりませんでした。そのため、よほど気心が知れた俳優でなければうまくいきません。私とプラバースは11年前の“CHATRAPATHI”で組んで以来、とても友好的な関係を築いてきました。父がバーフバリというキャラクターを話してくれたとき、真っ先に浮かんだのが彼、プラバースでした。彼以外には考えられませんでしたし、実際完璧に演じてくれました。

『バーフバリ 王の凱旋』撮影中のS.S.ラージャマウリ

──ヒロインを、演技力と美貌を兼ね備え、アクションにも長けた“レディ・スーパースター”、アヌシュカ・シェッティが演じています。配役の理由は?

監督:私はアヌシュカの素晴らしいプロフェッショナリズムを常に賞賛しています。彼女はとても責任感があり、全身全霊を込めて映画に取り組みます。『バーフバリ』2部作でも彼女は様々なことにチャンレンジしましたが、それには大変な訓練が必要でした。でも、彼女は不平も言わず、質問一つもしないでそれをやり遂げました。彼女の適応力と吸収力にはほんとうに驚きました。彼女も私の第一候補にして唯一の存在でした。私にとってデーヴァセーナは彼女以外に考えられませんでした。

──『バーフバリ』2部作を見ると、『十戒』、『ベン・ハー』、『クレオパトラ』、『グラディエーター』、『ロード・オブ・ザ・リング』、『300 〈スリーハンドレッド〉』といったハリウッドの歴史超大作の数々が次々とを思い浮かびます。あなたはそれらの映画を意識し、それを超えようと意図しましたか?

監督:『バーフバリ』は古代の王族と彼らの闘いの物語です。そしてそれらのハリウッド映画もそうです。そのため、キャラクター設定や衣装、そしてそこで繰り広げられる感情などは、まったく違う国の違う物語にもかかわらず、どうしても似てしまいがちです。それは、こうした物語が普遍的で万国共通のテーマを持っていることに他ならないからだと思います。
私が『バーフバリ』を製作した理由のひとつは、この物語がそうした世界規準の物語だったからです。

──『バーフバリ 王の凱旋』では特に、強い女性キャラクターたちがとても印象的です。

監督:インド映画には伝統的に強い女性が登場してきましたが、その多くは脇役でした。近年確かに強い主演級の女性キャラクターが増えてきています。それは観客が求めていることの反映でもあるのです。

──『バーフバリ』2部作は全世界でこれ以上ないというほどの大成功を収めましたが、あなたはそれに満足していますか? それとも何かやリ残したと思うことはありますか?

監督:確かに、『バーフバリ』2部作は全世界でとても大きな興行的成功と同時に、私たちが期待した以上の観客の皆さんはじめ、批評家からの絶賛をいただきました。多くの皆さんに本当に感謝しています。しかし、自分の仕事に完全な満足を感じられる映画監督はいないと思います。私は常に、私の映画を通して、私が語る物語を一人でも多くの人々に伝えられればと考えています。

──今後、『バーフバリ』2部作のさらなる続編やスピンオフ作品の計画はありますか?

監督:現在具体的なものは何もありません。
 次回作についても、企画は本当にたくさんありますが、確定しているものはまだ何もありません。

好きな監督はクリストファー・ノーラン
『バーフバリ 王の凱旋』
2017年12月29日より全国順次公開
(C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.

──あなたの好きな映画監督、または影響を受けた映画監督を教えてください。

監督:インドでいうとシャンカル監督(『ロボット』)とラージクマール・ヒラニ監督(『きっと、うまくいく』『PK』)です。外国ならクリストファー・ノーラン監督(『ダークナイト』『ダンケルク』)ですね。

──好きな映画は?

監督:インド映画だと“MAYABAZAAR”(57年製作のテルグ語神話映画の古典的名作、主演:N.T.ラーマ・ラオ)と『炎』(75年製作のヒンディー語映画、主演:アミターブ・バッチャン、8年間ロングランを続けた伝説の大ヒット作)。外国映画だと『ベン・ハー』と『ライオン・キング』ですね。

──日本の作品では?

監督:黒澤明監督をとても尊敬しています。特に『隠し砦の三悪人』、『七人の侍』、『羅生門』が大好きです。

S.S.ラージャマウリ
S.S.ラージャマウリ
S.S.Rajamouli

1973年10月10日生まれ、インドのカルナータカ出身。ベテラン脚本家の父を持ち、CMやドラマ演出などを経験した後、ロングランヒットとなった『Student No.1』(01年)で監督デビュー。『Yamadonga』(07年)、『Magadheera』(09年)など大ヒット作を次々と手がけたヒットメーカー。その他の作品に『あなたがいてこそ』(10年)、ハエが主人公の異色作『マッキー』(12年)など。