『星ガ丘ワンダーランド』中村倫也&佐々木希インタビュー

注目の若手2人が家族などについて語った!

#中村倫也#佐々木希

簡単な役なんてない(中村倫也)

連続ドラマ「下町ロケット」で正義感の強い若手エンジニアを好演し注目を集めた中村倫也。彼が主演をつとめる映画『星ガ丘ワンダーランド』が公開を迎える。本作で中村は、複雑な家庭環境で育ち、能動的な人間関係を築けない青年・温人を雰囲気たっぷりに演じている。

そんな温人の前に現れた義理の妹・七海に扮するのは佐々木希。こちらも華やかなイメージを封印して影のある女性を情緒たっぷりに演じた。

──両親の離婚や母の突然の死など、さまざまな思いを抱えた家族の物語でしたが、演じた温人、七海というキャラクターについてどんなアプローチをしたのでしょうか?

中村倫也(左)と佐々木希(右)

中村:生い立ちが物語のキーになっている役なのですが、僕自身の家族関係とはまったく違っていたので、撮影に入る前は、温人に通じるヒントのかけらを探し集めることに時間を費やしました。撮影前にロケ地の遊園地に1人で行ったりして想像力を膨らませました。温人は人との関わり合いに能動的ではなく、心に抱えているものも人にはぶつけない。そういう部分をしっかりと生々しく描いていきたいなと思っていました。

佐々木:私が演じた七海という女性と自分との共通点をなかなか見つけ出すことができなかったので、すごく難しいと感じました。でも幼いころに感じたことに、ほんの少し共通点があったので、そこをどんどん大きくしていきました。

──自分とはかけ離れた役を演じるというのは俳優としてはどういうお気持ちなのでしょうか?

中村:作品によって役というのは違いますし、どのような役でも自分との距離を測りながらつなげていくという作業をしています。今回も、いろいろなキャストやスタッフが、各方面から興味深いことを持ち込んできてくださったので、絶対面白いものができるなという思いはありました。なので自分もしっかりと身を引き締めて、温人に誠心誠意向き合っていかないとダメだと思って臨みました。簡単な役なんてありませんし、ワクワクしながらモチベーションを高く挑めました。

佐々木:自分が経験したことのない役や感情に向かっていく作業は楽しいです。「この人はどういう人生を歩むんだろう」と想像力を働かせて役柄に挑むのはとても楽しいですしやりがいがありますね。

尊敬できる方ですが、面と向かって言うのは恥ずかしい(佐々木希)
『星ガ丘ワンダーランド』
(C)2015 「星ガ丘ワンダーランド」製作委員会

──過去のPRなどを見ていても、お2人は同じ事務所で年も近いということで非常に仲が良い印象を受けました。しかし本作では微妙な距離感で対峙します。演技プランなどを話し合ったりしたのでしょうか?

中村:あったっけ?

佐々木:役柄についてはあまり話とかはしませんよね?

中村:話したところで……って感じだよね(笑)。

佐々木:本番前とか、自然とそういう空気にしていただけるんです。ありがたいです。

中村:話すよりも演技しちゃった方が早いんですよね。基本、ドラマでも映画でも、2人で話し合ったりすることはないですね。部屋を探す時に、間取り図をずっと眺めているよりも内見した方が絶対いい、みたいな……。そんな感じです。

中村倫也

──それはお2人の信頼関係があるからできることですか?

中村:昔から知っているというのは大きい気がしますね。完全に「初めまして」で人となりも分からないまま、親子だったり恋人役をやるよりは、人柄や空気感、持っている魅力、引き出したいものが分かっている方がスムーズだとは思いますね。

──過去にもドラマなどで共演されていますが、改めて本作で対峙して再確認した魅力などはありますか?

中村:幸薄い役が似合うなって(笑)。この作品の中で一番難しいのが七海だと思ったんです。幸が薄いんだけれど、こういう役って佐々木みたいな品や愛嬌がないとダメ。そういう部分を現場で形作って、七海という人物の輪郭をおぼろげな形で演じてくれた。信頼できる仲間として“ただ可愛いだけじゃないんだぞ”ってお兄ちゃん目線で感じていましたね。

佐々木:本当に尊敬できる方だなって。普段は事務所の先輩でもあるので、いろいろとプライベートな話もするのですが、現場にいるときは、佇まいを含めとても勉強させていただきました。もともとお芝居も素晴らしいのですが、現場での集中力だったり、空気のつくり方とか、さすが先輩って思いました。でも面と向かってこういうことを話すのは恥ずかしいです。

──普段はこういった話はしないのですか?

佐々木:普段はしません。でも本当にこの現場で改めて、人を引っ張っていく力を持っている方なんだなって実感しました。

そろそろ親孝行しないといけないって思います(中村倫也)
佐々木希

──本作は複雑な家族関係が物語の要になっていますが、お2人にとって家族ってどんなものですか?

中村:ある時に親が人間だって気づくじゃないですか。小さい頃って、親とか教師って絶対的な存在で、思春期になると反抗したり、頭ごなしに否定したりするけれど、自分が社会に出て地に足がついてくると、親のすごさとかを実感しますよね。一方で、親も不完全な人間だってことにも気づく。でも、やっぱり勝てない存在。そろそろ親孝行しないといけないって思います。自分にも新しい家族ができた時は、しっかり親から受け継いだものを自分の子どもにも伝えていきたいなって思いますね。

佐々木:私も感謝の気持ちでいっぱいですね。年齢を重ねるごとに親の偉大さを感じます。ひどいことを言ってしまってもいつでも優しくしてくれますし、親の愛情はすごいなと思います。いつか子どもができたときに、そういう愛情を注げたらいいなと思いますね。

──劇中にはお母さんのリンゴのスープが出てきますが、お2人にとって母親の思い出の食べ物ってありますか?

中村:初めて一人暮らしをしたとき、みそ汁のありがたみを実感しましたね。

佐々木:それ分かります!

中村:でも、わざわざ男の一人暮らしでみそ汁だけ作ったりしないじゃないですか。その頃から定食屋に行くようになりましたね(笑)。

中村倫也

──佐々木さんは料理がお得意ですよね。

佐々木:自宅で料理するときのレシピも母から聞いたものが多いです。一時期は電話しながら作ったりしていましたね。料理に目覚めたのも母の影響でした。母の料理はなんでも美味しいので、1つを選ぶのは難しいけれど、炊き込みご飯が好きですね。

中村:炊き込み、ご飯いいね。今度、佐々木の実家行こうかな(笑)。

佐々木:ぜひ来てください! いろいろなもの出してくれると思いますよ。から揚げも美味しいですよ。

──最後に作品のアピールを

佐々木:ミステリーですが、鑑賞後に心が温まるストーリーになっています。

中村:モントリオール世界映画祭(※)にも出品され、いい評価をいただきました。やっと日本の皆さんにもお披露目できますので、知り合い50人ぐらい連れて最寄りの映画館に来てください!

※第39回モントリオール世界映画祭/ファーストフィルム・ワールドコンペティション長編部門

(text&photo:磯部正和)

中村倫也
中村倫也
なかむら・ともや

1986年12月24日生まれ。東京都出身。05年に映画『七人の弔』俳優でデビュー。テレビドラマ、映画、舞台など幅広いジャンルで活動している。連続ドラマ『下町ロケット』では正義感の強い若手エンジニアを好演し話題に。現在放送中の連続ドラマ『お義父さんと呼ばせて』にも出演中の若手注目俳優。今後の待機作は、ドラマ『実録ドラマスペシャル 女の犯罪ミステリー 福田和子 整形逃亡15年』が3月17日放送、『双葉荘の友人』が3月19日放送、映画『日本で一番悪い奴ら』(6月25日公開)など。8月には劇団☆新感線『Vamp Bamboo burn〜ヴァン・バン・バーン〜』にも出演する。

佐々木希
佐々木希
ささき・のぞみ

1988年生まれ、秋田県出身。モデルとして活躍しながら、08年に『ハンサム★スーツ』で女優デビュー。『天使の恋』(09年)で映画初主演を飾った。主な出演作ドラマは『土俵ガール!』(10年)、『ファースト・クラス』(14年)、映画は『アフロ田中』(12年)、『風俗行ったら人生変わったwww』(13年)、『さいはてにて〜やさしい香りと待ちながら〜』(15年)、『星ガ丘ワンダーランド』(16年)など。