『TENET テネット』ジョン・デヴィッド・ワシントン インタビュー

クリストファー・ノーラン最新作に出演!驚きの現場について語る

#ジョン・デヴィッド・ワシントン#テネット

ジョン・デヴィッド・ワシントン

この撮影で、自分の芸術性や可能性を再発見できた

『TENET テネット』
2020年9月18日より全国公開
(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

世界中の映画ファンたちが新作を待ち望む監督の一人といえば、『ダークナイト』シリーズや『インセプション』『ダンケルク』のクリストファー・ノーラン監督。公開前からすでに話題沸騰中だが、観客の常識を一瞬で吹き飛ばす究極の映像体験とタイムサスペンス超大作として注目を集める最新作『TENET テネット』が、いよいよベールを脱ぐ

主人公が課されたミッションは、人類がずっと信じ続けてきた、〈時間のルール〉から脱出すること。そんな難解かつ巨大な任務に巻き込まれてしまう“名もなき男”をハリウッドの名優デンゼル・ワシントンの息子としても知られるジョン・デヴィッド・ワシントンが見事に演じている。そこで今回は、時間が逆行するゲーム性をリアルに描いた本作の撮影秘話や見どころについて話を聞いた。

──まずは、この企画と脚本に魅かれた理由を教えてください。

ジョン・デヴィッド・ワシントン(JDW):パリンドローム配列のタイトルがついた作品で、監督がクリストファー・ノーランときたらやらないわけがないよね。クリスは僕のヒーローなので、出演できるかもしれないという事実にはとてもワクワクしたし、何を期待されているかも未知数だった。でも、脚本をようやく読ませてもらえたとき、オリジナリティあふれる素晴らしいストーリーだと思ったし、どのように映像化していくのかを想像するだけでも、興奮が高まったよ。そこから一歩ずつ進めて行ったんだけど、素晴らしい経験だったね。

──クリストファー・ノーランはあなたにとってヒーローだと仰いましたが、なぜ見逃してはならない革新的な作品を作り続けられているのだと思いますか?
『TENET テネット』撮影中の様子/ジョン・デヴィッド・ワシントン(左)とクリストファー・ノーラン監督(右)

JDW:僕が言うのも恐縮だけど、映画的なストーリーテリングに秀でた監督だと思う。つまり、コンセプトや世界の組み立て方が素晴らしいということだね。彼の構築する世界には彼特有のルールが確立されていて、そこが楽しいんだ。とはいえ、最終的にはキャラクターのセリフや動機に共感しなければならないんだけど、クリスの作品はそこも明確に描かれていて、登場人物の確固たる視点が感じられるよね。とにかく彼のストーリーテリングの才、彼の作り出す人物、脚本の書き方が何よりも好きなんだ。

──実際に、仕事を一緒にしてみていかがでしたか?

JDW:まさに夢が叶ったという感じで、期待を超える体験となったよ。 他のキャスト陣を代表して語るつもりはないけど、少なくとも僕が感じたことは、クリスは役者に寄り添う監督であるということ。僕が直感に任せて演技をした時も、そういったアイデアを完全に受け入れてくれて、支持してくれた。同じことの繰り返しは嫌だったみたいで、「君に合わせるから自由に演じて」などと言ってくれることもあって、本当に驚いたよ。
クリストファー・ノーラン監督と撮影監督のホイテ・ヴァン・ホイテマは二人とも華々しい経歴の持ち主であり、彼らの作ってきた作品を知っているだけに、「大丈夫、自由にやってみて。君に合わせるから」と言われるとは想像もしなかった。「そこに立ってて。そうしないとうまく行かないから。はい、顔を下げてセリフを言ってみて」などと演出されるのだろうと想像していたし、過去にもそうやって演出された経験もあっただけに、第一線で活躍する伝説の二人が僕に判断を委ねるなんて驚きだったよ。そのおかげで、ものすごく自信がついたし、僕はこの体験を通して大きな喜びを得ることができ、自分の中の芸術性や可能性を再発見することもできたんだ。芝居のプロセスについて本当に多くのことを学ぶことができたけど、それはクリストファー・ノーランのおかげだと思っているよ。

──ロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキ、ケネス・ブラナー、マイケル・ケインなど錚々たるキャスト陣とも共演されましたが、いかがでしたか?
『TENET テネット』撮影中の様子

JDW:夢のようなキャスト陣で、みんな素晴らしかった。芝居のスタイルがそれぞれ違うから、必ずしも理想的ではない環境のなか、自分の芝居を相手に合わせるのに時間がかかることもあったけれど、誰も文句を言わなかったし、スムーズに進めることができたよ。話し合い、実行するのみ。そして話し合いをしないほうがうまく演技できる場合もあったという感じかな(笑)。
なかでも、素晴らしいと思ったのは、ロバートの演技へのアプローチ。彼とはあえてくどくど話し合わずに演技に突入することもあったけど、やりながら発見できることもあり、キャラクターの動機や行動を環境に任せることができて上手くいったよ。エリザベスとの共演に関しては、まだ話すことができないシーンがいくつかあるのだけど、彼女の演技には訴えかけるものがある。ケネスに関しても、まだ詳しくは言えないけど、素晴らしい演技を披露していて、これは作品を見たらわかると思う。本当にみんなのパフォーマンスにはただただ驚かされたから、僕も彼らの力に見合う演技をしなければならなかったんだ。

──クリストファー・ノーランはなるべくVFXに頼らず、特殊効果をインカメラで撮ることにこだわる監督で知られています。その分演技はしやすかったですか?

JDW:素晴らしく演技がしやすかったよ! リアルな空間に足を踏み入れることができると、全てが生き生きとしていて、そこに遊び感覚が生まれるからね。そして、本来はそうあるべきだとも思っている。リーダーである監督はそういうことを可能にする環境を整える立場にあるけど、俳優はその環境を活かさなければならないんじゃないかな。俳優がリサーチを重ねて全力を注いでいれば、手がかりを頼りに発見できたことを演技に昇華して提供でき、想像を超えるものを作り上げることができるよね。そしてしかるべき環境が提供されてこそ、他にはないような何かを作り上げることができるんだ。クリスはそういう環境を提供してくれたよ。

──この作品は様々な国でロケ撮影しているそうですが、それにまつわる難しさ、楽しさはありましたか?

JDW:これに関しては、スタッフ全員に感謝しているんじゃないかな。ロケ地によっては、カメラ部隊やヘアメイクの部隊にとって必ずしも理想的でない場所もあったと思うけれど、僕はどのロケ地も多いに楽しむことができたよ。また各地で撮影していることも映画の一つの魅力になっていると思う。スケール感があるのは言うまでもないけれど、実際に現地で撮影したことで、細かいニュアンスを活かした作品になったと感じるよ。デジタルで背景を描きこむようなことはしていないから、実際に僕たちがその時々に見た光景を観客はそのまま目にすることになるしね。世界各国の観客に披露することになると思うけれど、それも楽しみだよ。

──プロデューサーのエマ・トーマスさんとの仕事はいかがでしたか?

JDW:本当に忙しそうにしていたけれど、彼女は気遣いの行き届いている人で、エネルギーを無駄にすることがない人。要求はなんであれ、かならずやり遂げてくれるんだ。それに母性を感じさせてくれるところもあり、安心して取り組むことができたよ。軽やかでボジティブな人柄がこちらにも良い影響を与えてくれるし、監督のバランスを保たせるところも素晴らしかった。二人が長いこと成功し続けているのは、そのバランスが要因なのではないかと感じたくらいだよ。

──クリストファー・ノーランの作品を大きなスクリーンで見なければならない理由はなんでしょう?

JDW:彼の映画の魅力は、驚きに満ちていて現実逃避できるところ。『TENET テネット』はどんな媒体で見ても堪能することができると思うけど、映画館で見ることができたらきっとより長く記憶の中に残るし、最大限の体験を期待できると思うよ。

ジョン・デヴィッド・ワシントン
ジョン・デヴィッド・ワシントン
John David Washington

1984年7月28日生まれ、アメリカ・ロサンゼルス出身。9歳の時に、父であるデンゼル・ワシントン主演の『マルコムX』(92年)に子役として出演し、映画デビュー。その後、プロアメリカンフットボール選手として6年間活躍する。引退後は、本格的に俳優としてのキャリアをスタートさせ、2015年からアメリカンフットボールを題材にしたテレビドラマ『ballers/ボーラーズ』に出演する。2018年にはスパイク・リー監督の映画『ブラック・クランズマン』で主人公ロン・ストールワース刑事を演じて注目を集め、ゴールデングローブ賞の最優秀主演男優賞にノミネートされるなど、高く評価される。