『五億円のじんせい』望月歩インタビュー

要チェック! 若き実力派が初主演作について熱く語った

#望月歩

撮影前はプレッシャーもあった

17歳の高校生・望来(みらい)は、幼い頃に五億円の募金で心臓手術を受け、命を救われた過去を持つ。母や周囲の期待にこたえようとする一方で、自分に五億円の価値があるとも思えずにいる望来は、ある日、SNSで自殺宣言をする。それを読んだ見知らぬ人からのメッセージをきっかけに、五億円を返してから死ぬことにした望来。一人で旅に出て、アルバイトで日当を稼ぎ始めるが……。

主人公の望来を演じるのは、テレビドラマ『3年A組―今から皆さんは、人質です―』での好演も記憶に新しい望月歩。今春に高校を卒業したばかりの若き実力派に、主演作に対する思いや学生時代のエピソードを聞いた。

──望来くんは素直な高校生といった感じの子で、それが望月さんの雰囲気に合っていました。望月さん自身は、どんなところが役と似ている、あるいは違うと思いましたか?

望月:僕はそこまで素直じゃないと思います、ひねくれているわけでもないですけど(笑)。望来は他人に求められている自分があります。僕自身はそれほど多くを求められているわけではないのですが、そういう重荷のようなものを感じることはあるので、そこは共感できました。五億円とか病気を抱えているとか、そこは自分にはない部分でわからないので、記事や体験談を読むなどして調べました。

──手術痕を見られるシーンのときに望来くんの気持ちを実感されたそうですね。

望月歩

望月:はい。ここ(胸)に感覚があるんですよね。最初はメイクによる傷の感覚だけだったのですが、だんだんと無意識のうちに“この傷を守らないと”みたいな感覚になってきて、(手術跡と共に生きるのは)こういうことなんだ、というのがわかってきたんです。それ以来、メイクさんに手術痕を描いてもらっていました。

──物語の最初と最後では、望来くんの表情がずいぶんと違って見えます。日焼けもして、たくましさも出てきて。撮影は順撮りではなかったそうですが、物語を通して成長した様子を表現するのは大変でしたか?

望月:肌の日焼けの色は、「このシーンは落として! ここはつけて!」という感じで、メイクさんがやってくれました。役の内面の部分では、「このとき望来はこう思っている」というのをノートに整理して書いておきました。撮影前にそれを見て、「これから撮るのは、このときにこう感じた後だ」と確認してから演じていました。

──この作品は「NEW CINEMA PROJECT」という新たな才能を発掘する企画によるもので、監督も脚本も一部のキャストもオーディションで選ばれましたが、一般的な現場と違う雰囲気はありましたか?

望月歩

望月:スタッフさんの熱量はどの現場でもすごいので、今回だけが特別に強かったわけではないのですが、今回は主演だったので、監督と脚本家がずっと話し合ったりしているのを初めて見る機会があり、「(作品への)愛がすごいな」と思いました。

──今回の撮影中で、もっとも心に残ったことは何ですか?

望月:僕の役はいろいろな人と関わっているので、どれも大事なんです。なんだろうなあ。一番好きな役は平田満さんが演じているホームレスの男性なのですが、セットの中で平田さんと一緒に話をしていたときに、平田さんご本人の人柄の温かさを感じました。僕としてはすごくよいシーンだったなと思います。

──映画に主演することへのプレッシャーはありましたか?

望月歩

望月:僕次第でどうとでもなる、と言われたので、だからこそ頑張ろうと思えました。すごく準備もしたし。撮影前はプレッシャーもありましたが、撮影に入ったらそういう気持ちもとれて楽しくて。

──作品以外のことも少しお聞きしたいのですが、望月さんは中学生の頃にはすでに演技をされていましたが、役者になろうとしたきっかけは?

望月:小学生の頃、嵐さんに憧れてダンスを始めたんです。そこで知り合った方を通じてお芝居に触れる機会があって、やってみよう、という感じでした。

──中学生や高校生の頃は、学校と仕事を両立されていたと思いますが、部活などはしていましたか?

望月:中学の頃はテニスをやりたかったんですが、日焼けするからダメ。バスケもやりたかったけれど、チーム競技だから仕事で休んだときに仲間に申し訳ないからダメ。それで、卓球をやっていました。高校は、2年生の後半からバレーボールをやっていました。部を設立したというか。

──バレーボールもチーム競技ですが、それは大丈夫なんですか?

望月:仲がよい人たちがバレーボール部を立ち上げたところに僕も入ったので、まあいいかという感じで(笑)。楽しかったです。

──これまで望月さんが演じてきた役では影があるものが印象的でしたが、ご本人はダンスやスポーツもしていたり、とてもアクティブなんですね。

望月:ふだんは外に行くのも好きだし、家にいるのも好きです。お風呂に入ってから散歩に行ったりとか(笑)。

──オフの日にしたいことや、最近ハマっていることなどはありますか?

望月:お風呂上りにベランダにイスを持ってきて、そこに座ってぼーっとしてるのが好きです。落ち着くというか、幸せです。

卒業したら役者一本でやる、と決めていた
望月歩
──今春に高校を卒業されて、これからは役者一本でやっていくということで、新たな意気込みなどはありましたか?

望月:それがなかったんですよ。かなり前から「高校卒業したら役者一本でやる」と決めていたので。「よし!」という感じはなくて、「やっとできるな」という感覚が強かったです。

──これから演じてみたい役や目標はありますか?

望月:『3年A組―今から皆さんは、人質です―』をやってから、いつかは先生の役をやりたいな、と思うようになりました。

──先生役の菅田将暉さんに触発されて? なぜ先生役をやってみたいのですか?

望月:菅田さんも先生の役をやりたいと言っていたそうなんですが、菅田さんからすごい熱量を受けたんですよ。「すげえなぁ」って思って。その熱を伝える側に自分もなりたい、と思ったからですね。

──望月さんが感じている、役者の魅力とはなんですか?

望月:それぞれ(の役者)が家やいろいろな場所で準備したものを、現場で合わせるのが一番楽しいところだと思います。わくわくします。

──そのようなとき、自分が思うような演技ができたときとうまくいかなかったときがあるかと思いますが、うまくいかなかったときは気持ちの切り替えは早い方ですか?

『五億円のじんせい』
(C)2019 『五億円のじんせい』NEW CINEMA PROJECT

望月:その日はへこみますよね。終わってから“ぐわーっ”て(笑)。でも、次の日になれば「そんな暇はないから頑張らなきゃ」と思えます。

──最後に、完成した作品をご覧になっての望月さんの感想と、ムビコレの視聴者にメッセージをお願いします。

望月:完成した作品を最初に見たときは、自分の芝居なので気持ち悪かったです(笑)。録音した自分の声を聞いて、違和感を感じる感覚。でも途中からは作品として見ることができて、主人公の成長や勇気を感じることができたのは嬉しかったです。僕(望来)がいろんな人と出会って、いろんな経験をして、いろんな言葉をもらって成長する物語なので、作品を観て勇気を感じてもらえたり、一歩を踏み出すきっかけになってくれたらいいな、と思います。

(text:中山恵子/photo:岸豊)

望月歩
望月歩
もちづき・あゆむ

2000年9月28日生まれ。2015年公開の映画『ソロモンの偽証』(2015)に出演し、演技力の高さで注目を集める。テレビドラマ『マザー・ゲーム』(2015)、『母になる』(2017)、『アンナチュラル』(2018)、『3年A組―今から皆さんは、人質です―』(2019)など多くの話題作に出演。2016年には『真田十勇士』で舞台にも立った。今後、さらなる活躍が期待される若手実力派。