『おもてなし』藤井美菜インタビュー

韓国でも人気! 実力派女優が“結婚前の揺れる思い”を語る

#藤井美菜

心の余裕を持ててから結婚したい

田中麗奈とワン・ポーチェがW主演を務める、日本×台湾の合作映画『おもてなし』が公開。経営難に陥った琵琶湖畔にある老舗旅館「明月館」を舞台に、なんとか復活を目指して奮闘する人々の姿が描かれる。

この人間ドラマにキーパーソンとして出演しているのが、近年では韓国での活動も知られる藤井美菜。ワン演じるジャッキーの元恋人で婚約者のいる尚子に扮し、ジャッキーから、改装した「明月館」で結婚式を挙げるように提案され、ジャッキーと会ううちに、心が揺れる難しい役どころだ。新作映画には鬼才、キム・ギドクの『人間、空間、時間、そして人間(原題)』も控える藤井に話を聞いた。

藤井美菜
──「おもてなし」という日本の文化がタイトルです。最初に脚本を読まれたときの印象は?

藤井:私自身、韓国という日本ではないところで活動させていただくようになり、日本について振り返ったり、良さを再確認したり、日本人同士とは違うぶつかり合いがあったり。そうしたことを実際に経験してきたうえで、この脚本を読ませていただいたので、共感できる部分が多かったですし、素晴らしい脚本だと思いました。

──藤井さんが演じた尚子は、結婚前に心が揺れる役で、女性たちの共感を誘いそうです。

藤井:そうですね。私はまだ結婚はしていませんが、冷静に考えると、結婚前に昔の彼氏にあって、結婚を報告するなんてちょっとずるいと思いますが(苦笑)、でも結婚したあとは会えない相手だと考えると、最後のちょっとした未練が出るのも分からなくはないですよね。そういうリアルな気持ちを見せるキーパーソンだと思いました。ただ、元恋人に結婚式を頼むというのは尚子ならではの大胆さですね(笑)。

『おもてなし』
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──尚子の元恋人をワンさんが、婚約者を青木崇高さんが演じています。

藤井:役柄上もですが、ワンさんと青木さんも全然タイプが違うんです。青木さんは関西出身ならではのムードメーカーで、ワンさんはほんわかしている。それぞれの個性があっておもしろかったですし、タイプが違うことで、なんとなく尚子の気持ちも分かる気がしました(笑)。

──琵琶湖畔に建つ「明月館」がとてもステキでしたが、実際にある建物なのですか?

藤井:これ、どこまで話していいんだろう。実は、CGで作られたパートが多くて、外観もそうですし、セットで組んだり、違う場所で撮影したものをCGと合わせているので、「明月館」は実在していないんです。

──そうなんですか! あまりに自然で分かりませんでした。

藤井:自然でしたよね。撮影のときは、もちろん説明は受けていましたけれど、完成した感じは分からなかったので、実際に完成した作品で「明月館」を見て、私も感動しました。

藤井美菜
──では、あの素晴らしい旅館には、この映画のなかでしか会えないんですね。

藤井:はい。逆に、映画のなかでちゃんと存在しているという感動がすごくありました。ぜひ映画館で堪能してください。

──藤井さんご自身は、結婚生活にどんな憧れを持っていますか?

藤井:結婚するなら、もうちょっと料理とかを勉強しなきゃと思っています。家のなかのことはひとしきりちゃんとできるほうがいいのかな、と。でも現状は、自分自身のことで精いっぱいなので、今じゃないのかも。心の余裕を持ててから結婚したいな、と思っているんですけど。

──ところで、主演の田中さんとはお話されましたか?

藤井:私はほとんどワンさんとのシーンだったので、田中さんとは数シーンしか共演がありませんでした。でもご一緒させていただいて、田中さんも関西弁をお芝居として勉強されたので、お互いにイントネーションをチェックしあったりさせていただきました。あとは、田中さんの中国語が本当にお上手だったので、とても尊敬しましたね。ワンさんや監督さんとのコミュニケーションもその場で、中国語でされていました。

──藤井さんも韓国語がペラペラです。

藤井:韓国語は、そうですね。

30歳目前になって、腹が据わってきた
──今回は英語でのお芝居も披露されています。

藤井:お芝居で英語を使うのは初めてだったので、挑戦でした。韓国でお仕事をさせていただいていますが、韓国の方は非常に海外志向が高いので、私自身もボーダーなしにいろんな国のお仕事をしていきたいという気持ちを抱くようになりました。なので、今回は新しい機会をいただいたと思いました。ただ、韓国語でのお芝居もそうですが、言葉なので、セリフとしてちゃんと発音しないといけないと同時に、お芝居ということで、気持ちを乗せなければならないので、そのバランスの難しさに、今回もすごく悩みましたね。

藤井美菜
──今後も英語でのお芝居は。

藤井:すごくいい刺激をもらったので、やっていけたらとは思います。

──海外でのお仕事というと、新作ではキム・ギドク監督とご一緒されました。

藤井:そうなんです。こちらはオダギリジョーさんも出演されていて、オダギリさんも含め、日本人キャストは日本語のセリフなので、今回は、韓国語は使ってはいませんが。

──キム・ギドク監督というと、世界に知られた鬼才ですね。

藤井:天才のうちのひとりだと私も思っていたので、こういう機会をいただけて有難いですね。日々、何かを吸収できていた撮影期間だったと思います。

藤井美菜
──今年の7月に30歳になられます。意識しますか?

藤井:29歳になりたてのときが、一番衝撃を受けていました。あと1年で30歳なんだ!って(苦笑)。28歳までは、全然アラサーの意識がなくて、まだ20代♪っと、余裕に思っていたところがあったのですが、29歳になった途端に、その数字に衝撃を受けまして(笑)。子どもの頃に抱いていた30歳に全然近づけていないというのを痛感しちゃって。29歳の前半はもがきました。でも逆にいま、30歳目前になって、腹が据わってきたというか、楽しみになってきました。次へのステップだなって。

──わたしたちも、30歳からの藤井さんも楽しみです。それでは改めて『おもてなし』の魅力を教えてください。

藤井:この作品は、すごく非現実的なことが起こるとか、すごくドラマチックな内容が展開するといったものではなく、みんながいつか経験したり、今まで経験してきたような、そうした等身大の人との関わり合いで生まれる摩擦や葛藤、感情の動きを丁寧に描いています。いろんな世代の方が楽しめる、自分の人生を振り返るきっかけになるような作品になっていると思うので、たくさんの方に見ていただけると嬉しいです。

(text&photo:望月ふみ)

藤井美菜
藤井美菜
ふじい・みな

1988年7月15日生まれ、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴ出身。06年に『シムソンズ』で映画デビュー。また同年、全国高等学校野球選手権大会のキャンペーンにてイメージキャラクターに抜擢される。12年からは日本と韓国を行き来して活動中。おもな出演作に映画『女子―ズ』(14年)、『デスノート Light up the NEW world』(16年)、『しゃぼん玉』(17年)、韓国のテレビシリーズ『私たち結婚しました 世界版』など。キム・ギドク監督の新作『人間、空間、時間、そして人間(原題)』への出演も話題を集めている。