『光をくれた人』アリシア・ヴィキャンデル インタビュー

撮影中に相手役と恋に…オスカー女優が“本物の愛”語る

#アリシア・ヴィキャンデル

単純に彼女を責めたりはできないはず

2度の流産により悲しみに暮れる夫婦。ある日、偶然にも2人のもとに流れ着いた小舟に乗っていたのは男性の死体と赤ん坊だった。間違っていると知りながら、2人は赤ん坊を我が子として育てるのだが……。

愛について、そして幸せについて問いかける感動作『光をくれた人』で、複雑に揺れ動く母の思いを迫真の演技で見せたのはアリシア・ヴィキャンデル。撮影中、夫役を演じたマイケル・ファスベンダーと恋に落ちたことでも話題となった本作について、ヴィキャンデル自身に語ってもらった。

──あなたが演じたイザベルは、孤島で灯台守をする夫を愛するも、度重なる流産の悲しみから立ち直れずにいる女性です。イザベルをどんな女性だととらえて演じたのですか?

『光をくれた人』
(C)2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO.LLC

ヴィキャンデル:イザベルは生き生きとしてエネルギーに満ち溢れた女性です。すこし気まぐれで、実は彼女の両親も娘のことを現実が直視できない子だと思っている。でもトムと出会い、彼は自分らしくいられる最初の相手だと気付くの。今までに出会ったことのないタイプの人である彼に出会い、彼女は一緒にいることで落ち着けるんだと思います。リラックスして、素のままでいられるんです。
 この時代は、戦争により多くの人が失われた時代だったので、人々は団結していました。イザベル自身も、トムが戦争で見てきたこと、人を失う辛さを理解していたからこそ、彼を救いたいという思いがあったのです。彼女は率直で、分かりやすい性格です。真っ直ぐすぎるため、時によく考えずに行動をしたり、発言をしてしまうこともあります。しかしそれは、彼女の純粋な心から生まれることだから、単純に彼女を責めたりはできないはずです。

──本作で描かれる夫婦愛に心打たれます。

ヴィキャンデル:この作品は古風なストーリーだと思います。善人と悪人という構成ではなく、みんな感情を持った人間らしい人々で常識がある。そんな人たちの愛を描いています。それは男女だけでなく、親子や友人同士についても。それぞれの心の葛藤を乗り越えるために何をすべきか、本物の愛を見つけて、家族を築くというそれぞれの願望が軸となっているんです。

──この作品に出演したことで、ご自身に変化はありましたか?

ヴィキャンデル:はじめて台本を読んだとき、号泣してしまいました。とても身近で人間味のあるこの作品が大好きになり、すぐに映画よりも深く描写されている原作を読むことにしました。
 私はこの作品を古風に感じました。通常であれば、本を読んだり映画を見た時、どちらか一方に賛同したり、キャラクターやストーリーに対して、明確な意見を持つのですが、実際は、私たちの人生はこの映画のようなものなのだと思います。相手を深く知り、なぜそのような行動を取ったのか理由が分かれば、それに共感できるようになり、自分の行動も鑑みるようになる。その時、あまり誇れない決断を下した自分の経験も思い出すはずです。

この映画は、メロドラマだからこそ万人の心に響く
『光をくれた人』
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──デレク・シアンフランス監督は『ブルー・バレンタイン』などで高い評価を得ている方です。一緒にお仕事された感想は?

ヴィキャンデル:この作品に入る前から、『ブルー・バレンタイン』『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』など、デレク・シアンフランス監督の作品は大好きでした。
 撮影前には2週間のリハーサルをして、1920年代のイギリス英語風の訛りのトレーニングを受けた後に初日を迎えたのですが、撮影時は現場で暮らしていたんです。監督が、撮影現場で暮らせるように環境を整えてくれていたんです。
 だから撮影では、部屋の中で2人の間に起きている本当の日常を撮られているようで恥ずかしかったですね。私たちの身の回りで起きている本当の出来事、本当の人間物語のようで、なんというか感情的に消耗しました。
 デレクはすごく控えめで寛大な人。シーンを撮影している時も自由にさせてくれて、何が起こるかとりあえず見ているの。そして「最初のセリフからもう一度始めて」と途中で言ったりする。私たちはそのシーンに既に入り込んでいるから、気持ちを切り替えてやり直す必要がないんです。そこに入り込んだまま、同じシーンを繰り返すだけ。特殊な撮り方だと思うわ。
 デレクと最初に会った時に彼は、「メロドラマを作りたい」と言っていました。メロドラマと聞くとネガティブな印象があったけど、それは完成した作品を見た後に間違った印象だったと気づきました。メロドラマは最も難しいジャンルの一つで、それに挑戦した監督を私は尊敬します。メロドラマはピュアで基本的な感情を描いていて、このジャンルがこれだけ人々に愛されるのは万人の心に響くからです。だから彼の勇気ある決断は素晴らしいと思います。

『光をくれた人』
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──マイケル・ファスベンダーとの初共演の感想を教えてください。本作の撮影中に恋に落ちたそうですね。

ヴィキャンデル:マイケルとの共演は本当にいい体験になったわ。役者として尊敬していたし、彼の過去作品はほとんど観たと思う。彼は作品にすべてを捧げるタイプなの。撮影に入ると、すべてのテイクにおいて持っているものを全部出し切るわ。

アリシア・ヴィキャンデル
アリシア・ヴィキャンデル
Alicia Vikander

1988年10月3日生まれ、スウェーデン出身。幼少期はスウェーデン王立バレエ学校に通いバレリーナを目指す。2010年に『Pure』で長編映画デビューを果たし、ベルリン国際映画祭シューティングスター賞などを受賞。『アンナ・カレーニナ』(13年)で注目を集め、『ロイヤル・アフェア愛と欲望の王宮』(13/年)、『ガンズ&ゴールド』(14年)などに出演。『リリーのすべて』(16年)ではアカデミー賞助演女優賞を受賞。その他の主な出演作品は、『コードネームU.N.C.L.E』(15年)、『エクス・マキナ』(16年)、『ジェイソン・ボーン』(16年)など。