『恋するリベラーチェ』マイケル・ダグラス インタビュー

同性愛者にして20世紀の最も偉大なエンターテイナーに挑んだオスカー俳優

#マイケル・ダグラス

リベラーチェはカメラに向かって直接語りかけた最初の人物だろう

20世紀の最も偉大なエンターテイナーの1人で、エルヴィス・プレスリーやエルトン・ジョンなどにも影響を与えたピアニスト、ヴワツィーウ・ヴァレンティノ・リベラーチェ。世界一ギャラの高い音楽家としてギネスブックにも登録され、6つのゴールドディスクを獲得したトップスターと、その“個人秘書”との関係を描いた『恋するリベラーチェ』が、11月1日より公開される。

驚異的な成功を収め、キッチュな衣装と一流の才能で知られるリベラーチェは、同性愛者であることをかたくなに否定し続けた。本作では、恋人スコット・ソーソンとの出会いと蜜月、破局の過程が華麗なるピアノサウンドと共に綴られていく。

監督は、先日、長期休暇を宣言したスティーヴン・ソダーバーグ。主人公リベラーチェをマイケル・ダグラスが、恋人ソーソンをマット・デイモンが演じている。本作でゴージャスな“おネエ”ぶりを披露しているダグラスに話しを聞いた。

──今年5月にカンヌ国際映画祭でプレミア上映されたときには拍手が鳴り止まなかったそうですが、ある意味で大胆な役に挑戦しようと思った理由を教えてください。

ダグラス:この企画で私が魅力的だと思ったのは、まず脚本家リチャード・ラグラヴェネーズの脚本だ。長い間私が見てきた脚本の中でも最高の1本だった。以前から私はラグラヴェネーズの大ファンでね。よく書けた脚本を読んだうえに、リベラーチェを演じてくれというオファーだ。そんなチャンスはめったにつかめるものじゃない。しかも監督はスティーヴン・ソダーバーグで、共演者はマット・デイモンだなんてね。

──50年代に大成功を収め、その後30年以上トップに君臨したリベラーチェですが、あなたは生前の彼に会ったことがあるそうですね。

ダグラス:ほんの少しだけだが、2、3回会ったことがある。父(俳優のカーク・ダグラス)の家と彼の家が近かったんだ。彼は本物のエンターテインメントを理解していた。ラスベガスのショーで大人気を博し、テレビ番組(『The Liberace Show)』のおかげで世界中で有名になった。恐らく彼はカメラに向かって直接語りかけた最初の人物だろう。自分と同じ空間に、見ている者を引き込むことができるのは、彼のすばらしい才能の1つだよ。そして、そのいかにも同性愛者らしいスタイルには、彼の存在やパフォーマンスで人々をどれだけ幸せにしたいかという純粋な本質があり、その純粋さが人々を魅了したんだ。

ピアノは弾けないから、どう演奏するのかが問題だった
『恋するリベラーチェ』
(C) 2013 Home Box Office, Inc. All Rights Reserved

──彼は1987年、67歳のときにエイズで亡くなっていますね。

ダグラス:彼は自分がゲイでないと強く主張し、それを事実として守り通していた。彼のステージは入念なリハーサルと、訓練の上に成り立っていた。彼はそういった仕事の面と私生活は切り離していた。彼は大変なもてなし上手で、偉大なエンターテイナーであり、多くの人に愛され、ものすごく心の広い人だった。楽しい時間を過ごしたり、忙しくしてるのが好きで、前向きな人たちが好きだった。衝突は嫌いで、気に入った人がいればちやほやし、恋人のスコット・ソーソンにしたように、プレゼントをたくさん贈ったんだ。

──演奏シーンもありますが、ピアノはお得意なんですか?

ダグラス:ピアノは弾けないんだ。だから、どう演奏するのかが問題だった。ただ、幸いなことに、リベラーチェの演奏する姿が収められた昔の映像は大量にあった。だから、ピアノの上で演奏映像を流して、鍵盤の上でどこに手を置けばいいか見ながら動きをまねした。それを何度も繰り返すうちに、曲に合わせて鍵盤が叩けるようになった。つまり実際には演奏はできていなくても、手を正しい位置に動かせるようになったんだ。自分の手の動きがあまりに速すぎて何が起こってるのか自分でもわからなくなるような曲もたくさんあったよ。

『恋するリベラーチェ』
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──作品の見どころを教えてください。

ダグラス:すばらしいラブストーリーであることが魅力のひとつだ。よく書けた恋愛ものというのは常に人気がある。その設定が男性同士の恋愛であるというだけで、2人の間に起こる問題も出来事もまったく普遍的なものなんだ。この映画を作っているときに私たちはそのことに気づいた。事実、私とマットの間でも……。私がマットのことで1番感心しているのは、彼となら違和感なくすぐに役に入っていけるということなんだ。
 観客も男性同士のラブストーリーに違和感なくすぐに入り込める。描かれているのはお互い深く愛し合っている2人の人間の関係についてだ。それが男と男であろうが、男と女であろうが、同じ葛藤を抱え、同じケンカをするんだ。

マイケル・ダグラス
マイケル・ダグラス
Michael Douglas

1944年9月25日に名優カーク・ダグラスの息子として生まれる。1969年にテレビシリーズ『CBSプレイハウス』に出演後、『マイケル・ダグラス ヒーロー』(未/69年)で映画デビュー。主な出演作は『危険な情事』『ウォール街』(共に87年)、『ブラック・レイン』(89年)、『トラフィック』(00年)、『恋するリベラーチェ』(13年)など。プロデューサーとしても活躍し、『カッコーの素の上で』(75年)でアカデミー賞作品賞を受賞。反原発活動にも力を入れており、原子力事故を描いた『チャイナ・シンドローム』(79年)では製作と出演を兼務している。

マイケル・ダグラス
恋するリベラーチェ
2013年11月1日より新宿ピカデリーほかにて全国公開
[製作]ジェリー・ワイントローブ
[監督]スティーヴン・ソダーバーグ
[脚本]リチャード・ラグラヴェネーズ
[出演]マイケル・ダグラス、マット・デイモン、ダン・エイクロイド、スコット・バクラ、ロブ・ロウ、トム・パパ、ポール・ライザー、デビー・レイノルズ
[原題]BEHIND THE CANDELABRA
[DATA]2013年/アメリカ/東北新社/118分

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