『おしん』上戸彩&濱田ここねインタビュー

不朽の名作に込めたメッセージを熱く語る!

#上戸彩#濱田ここね

上戸さんは本当に優しい方で本当のお母さんみたいに感じました(濱田)

1983年にNHK朝の連続テレビ小説で放送されるやいなや、平均視聴率52.6%、最高視聴率62.9%という驚異的な視聴率で社会現象となった『おしん』。放送開始から30年となる節目の年に、その不朽の名作がスクリーンに蘇った。

劇中で、逆境をひたむきに生き抜き、見ているものに人々の絆や勇気を与えてくれる主人公おしんを演じたのは、本作が本格的なデビュー作となる濱田ここね。そしておしんの母親役は、女優として着実にキャリアを積み重ねている上戸彩がつとめた。約2500人の応募者のなかから、おしんの持つ純粋さ、芯の強さ、そして演技の可能性を買われて大抜擢された濱田と、誰もが知る名作に挑んだ上戸に作品への思いなどを聞いた。

──初めて本格的なお芝居をしたと思いますが、緊張はしませんでしたか?

濱田:最初は、緊張というか変な感じはありました。スタッフさんとか全く知らない人だったので「朝、移動するよ」って言われると、これから撮影なんだって思い、気分が悪くなったり、頭が痛くなったりすることがありました。でも、そういうときは上戸さんがいつも励ましてくれたり、私のこと褒めてくれたり、ずっと守ってくれたんです。だから(最後まで)撮影が出来たんだと思います。

上戸:そうだったんだね。でも現場では、そんな辛そうな姿は全然見せずに、いつも笑っていたんですよ。偉いね。

──現場は厳しかったのですか?

上戸:厳しかったですね。笑っていると「仕事だぞ!」って怒られたよね?

濱田:はい。辛いこともありました。でも上戸さんが優しくしてくれたから本当に嬉しかったです。

──微笑ましいお2人ですが、初めて会ったときはお互いどんな印象でしたか?
濱田ここね

上戸:私の衣装合わせのために、事務所まで顔を出してくれたのが最初の顔合わせでした。そのときも、ずっと笑っていて、すごい可愛い子だなって思ったのですが、(劇中では辛いシーンが多いので)この笑顔がなかなか見ることが出来ないんだなって思ったら、もったいないな、寂しいなって思いました。

濱田:ソフトバンクのCMとか見ていて、とても憧れの女優さんだったので、お会いできて嬉しかったです。

──実際、撮影をしてみて印象は変わりましたか?

上戸:ただただ尊敬しましたね。厳しい撮影で、もっと駄々こねていいはずなのに、そういうときこそ笑顔で乗り切ろうとするんですよ。そんな、ここねの姿を見ていると、すごいなって思いました。辛抱強いし、こんなに小さいのに母性もあって、自分が1番辛いはずなのに「上戸さん、悩みがあったら言ってくださいね。ここねが守りますから」なんて言ってくれるんです。

濱田:上戸さんは本当に優しい方で、出会えて良かったなって思いました。お母さん役でよかったなって。本当のお母さんみたいに感じました。

ピン子さんが大事にしていた役を直接いただけるというのは、とても光栄なこと(上戸)
上戸彩

──上戸さん演じるふじは、以前、泉ピン子さんが演じていましたが、役を演じる上での心構えや、ピン子さんからのアドバイスなどはあったのですか?

上戸:「彩なら大丈夫だから、彩なら出来るから」って暗示を掛けるようにピン子さんが何度も言ってくださって……。それでも最初はピン子さんが演じたふじが偉大すぎるので、無理だって言っていたんです。そうしたら「命懸れば大丈夫だから! 命懸ろ!」って背中を押してくれたんです。それで覚悟を決めました。

──演じてみて手応えはいかがでしたか?

上戸:やって良かったって思えるのは、映画を見てくださった皆さんのリアクションがあってからだと思います。まだ実感はないですね。でも、ピン子さんが大事にしていた役を、ご本人から直接いただけるというのは、とても光栄なことなので、魂を込めて演じました。

──おしんのお父さん役として稲垣吾郎さんと共演されました。劇中では厳しく無骨な父親でしたが、どんな印象でしたか?

濱田:本当の稲垣さんは、とても優しい人でした。私がメイクを落としているときに歌を歌っていたら「上手いね」ってずっと褒めてくれたりしてくれました(笑)。

上戸:吾郎さんは以前、ドラマなどでも共演させていただいていて、そのドラマチームで、プライベートでもお食事をご一緒させていただいたことがあったので、緊張せずに過ごせました。共演者をとても自然にさせてくださる方なので、今回も安心してお芝居が出来ました。

──劇中、母親であるふじが、娘のおしんに助けられる部分がたくさんあったと思いますが、実際、上戸さんが濱田さんから助けられたなって思うことはありましたか?
濱田ここね(左)と上戸彩(右)

上戸:たくさんありましたよ。辛い局面の多い現場だったのですが、そんなときでもここねはいつも笑顔なんですよ。そんな姿を見ていると、私も頑張らなくちゃって思いましたし、弱音を吐かず、必死になって頑張っているここねと、夢中になっている監督を見ていると、この2人の空気感を絶対に壊してはいけないって、自然とここねに引っ張られていきました。本当に学ぶことが多かったです。

──上戸さんからこんな風に言われてどうですか?

濱田:とても嬉しいです。私も上戸さんが現場に入ると心が落ち着くんです。

上戸:お母ちゃんがいないと虐められるシーンばっかりだったからね。

濱田:監督とかに怒られたりすると、とても辛くなって、私がおしんの役やってもいいのかな? こんな私でいいのかな? って。だから上戸さんの姿を見るだけでホッとしました。

上戸:いつ逃げ出してもおかしくない現場でしたからね。でもそれでも泣かなかったもんね。

家に帰ったら親がいるという安心感を子どもに与えられる母親になりたい(上戸)
濱田ここね(左)と上戸彩(右)

──お話にあったように、おしんは辛いシーンが多かったですが、おしんの気持ちになるために気をつけたことはありますか?

濱田:監督さんも言っていたのですが、絶対演技をしないということです。自分がそのときに起きたことを心で感じていなかったら(表現)出来ないんだということを考えていました。あと(旧おしん役の)小林綾子さんから「その時に思ったことをアドリブにして入れればいいんだよ」ってアドバイスをいただきました。

──本作で母親役を演じましたが、上戸さんにとって理想の母親像とは?

上戸:ふじですね。色々なスタイルの家庭があると思いますが、やっぱり私はお母さんには家にいて欲しいと思いますね。家に帰ったら親がいるという安心感を子どもに与えられる母親になりたいですね。

──1983年に放送されたときと今では、女性像というものも大きく変化していると思いますが、お2人にとって理想の女性像とは?

濱田:上戸さんみたいな優しい人になりたいです。あとはふじみたいに、子どもを大切にしたり、絶対子どもを傷つけない大人の女性になりたいです。

上戸:家庭を支えられる人になりたいですね。仕事も楽しいですし、もちろん両立できるならそれが1番理想だとは思いますけどね。

──この作品に出会った意義は?

濱田:おしんを演じて、ご飯を普通に食べられること、親と一緒にいられること、普通に学校に通えることのありがたみを感じました。昔ってこんなに大変で、みんな苦しい思いをしたんだって分かりました。

濱田ここね(左)と上戸彩(右)

上戸:この映画を通じて、自分で自分の限界を決めないで欲しいということが伝わればなって思いました。私自身も「もう無理、もう限界」ってすぐに思っちゃうタイプなんですが、この作品に出会って、もっと頑張らなくちゃとか、普通でいることの幸せを実感しました。

──次にお2人が共演するならどんな役がいいですか?

濱田上戸:姉妹の役をやってみたいね!

──最後に見どころをお願いします。

濱田:私と同じぐらいの子たちに、今の時代がどんなに恵まれているんだということを知ってもらいたいです。

上戸:ここねの魅力にどっぷりはまってください!

(text&photo=磯部正和)

上戸彩
上戸彩
うえと・あや

1985年9月14日生まれ。東京都出身。97年「第7回全日本国民的美少女コンテスト」にて審査員特別賞を受賞し、芸能界デビュー。00年放送のテレビドラマ『涙をふいて』で女優活動を本格的に開始し、01年には『3年B組金八先生 第6シリーズ』で性同一性障害に悩む鶴本直役を好演。その後も、03年『高校教師』や『ひと夏のパパへ』でヒロインを演じるなどドラマで活躍する一方、03年公開の『あずみ』や04年公開の『インストール』で主演を務めるなど、数多くの映画にも出演。今後の待機作品に、2013年12月公開の『武士の献立』、2014年公開予定の『テルマエ・ロマII』などがある。

濱田ここね
濱田ここね
はまだ・ここね

2004年3月31日生まれ。宮崎県出身。3歳のころからモデルの仕事を行い、数々のCMに出演。役者としては、2010年に舞台「星の庭」、12年に舞台「赤毛のアン」に出演し、本作ではオーディションで約2500人のなかから、おしん役に抜擢。スクリーンデビューを果たす。今後の待機作品に、2013年11月公開の映画『タイガーマスク』がある。

濱田ここね
おしん
2013年10月12日より全国公開
[監督]冨樫森
[脚本]山田耕大
[原作]橋田壽賀子
[出演]濱田ここね、上戸彩、岸本加世子、井頭愛海、小林綾子、満島真之介、乃木涼介、吉村実子、ガッツ石松、稲垣吾郎、泉ピン子
[DATA]2013年/日本/東映

(C) 2013「おしん」製作委員会