『ラム・ダイアリー』ジョニー・デップ インタビュー

今は亡き盟友の自伝小説を映画化

#ジョニー・デップ

ハンターは、いつも僕達と一緒に現場にいたんだよ

『ラム・ダイアリー』は、主演でもあるジョニー・デップの盟友にして反骨のジャーナリスト、故ハンター・S・トンプソンの自伝小説を映画化した作品だ。1960年のプエルトリコを舞台に、地元で記者として働き始めた主人公ケンプが、アメリカ人企業家やその婚約者との関係を通じ、危うい世界へと入り込んでいく様子が描かれていく。

過去の主演作『ラスベガスをやっつけろ』もトンプソンの原作を映画化したもので、本作はデップ自身が映画化を企画。製作、主演を兼務した。そんな思い入れの強い作品についてデップが語った。

──あなたとブルース・ロビンソン監督は、映画のセットで毎朝、ある儀式を執り行っていたそうですね。

デップ:亡きハンター・S・トンプソンに敬意を表し、彼の名前が入ったイスを置き、表紙に彼の名前を入れた脚本を置いたんだ。さらに、彼が好きだったダンヒルのタバコ1箱とライター、灰皿、そしてシーバスリーガルのボトルに、氷を満たしたタンブラーを置いた。
 毎朝、セットに行く度に、小道具係がシーバスのボトルを手にとって、タンブラーに満たしてくれた。僕達はそれに少し手をつけて、まるでコロンのように、自分たちの耳の後ろに塗ったんだ。それから仕事を始めた。だからハンターは、いつも僕達と一緒に現場にいたんだよ。

──ハンターとはいつ出会ったんですか?
(C) 2010 GK Films, LLC. All Rights Reserved.

デップ:初めて会ったのは1994年。僕はアスペンにいたんだけど、そこに、ジャック・ニコルソンの友人で、ハンターの友人でもある人がいて引き合わせてくれたんだ。ウッディ・クリーク・タバーンという店の奥で、ハンターが来るのを待ったんだ。するとドアが開いて、ハンターが牛追い棒みたいな棒を振りながら、「邪魔だ! どけ!」と叫んでいた。それに、警官が持つような警棒も持っていて、彼の前にいた多くの人たちがサッと道を開けたんだ。彼は僕の方に近寄ってきて「おい、調子はどうだ? 俺がハンターだ」って言った。それが最初だったよ。僕が、彼の生まれたケンタッキー出身だとわかり、僕たちの間には何の垣根もなくなったんだ。
 その後、僕たちは彼の家に行った。みんなでプロパンボンベとグリセリンで爆弾を作って、それを散弾銃で撃った。それが、彼に出会った最初の夜で、僕たちは友人になり、その後も連絡を取り合った。

最初から僕たちはこの映画の監督にロビンソンを望んでいた
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──では、原作の「The Rum Diary」との出会いは?

デップ:コロラドにあるハンターの家に行ったときに、彼の手書き原稿を発見したんだ。それを読んで、僕が「素晴らしいよ。出版すべきだよ」と言うと、彼は「これを映画にして一緒に製作しないか」って言ったんだ。

──「The Rum Diary」は98年に出版されましたが、映画化までには時間がかかりましたね。

デップ:僕はハンターと2人で映画に資金提供してくれる後援者を見つけ始めた。ロサンゼルスの僕の家に人を呼びミーティングをしたりしたんだ。

──『ラスベガスをやっつけろ』はテリー・ギリアムが監督をつとめていましたが、本作は、俳優でもあり、『キリング・フィールド』の脚本でも知られるブルース・ロビンソンが監督ですね。
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デップ:最初から僕たちはこの映画の監督にロビンソンを望んでいた。彼の監督作『ウィズネイルと僕』を見たとき、すごく気に入ったんだ。でも、彼はその後、ハリウッドのスタジオシステムに苛立ち、二度と監督はしないと誓った。本当は『ラスベガスをやっつけろ』でも彼を監督にしようとしたんだけど、結局、テリー・ギリアムが監督した。『ラム・ダイアリー』は彼が最適だと思っていたから、僕は彼をスペインのセビリアまでしつこく追いかけて、ようやく「イエス」と言ってくれたんだ。この映画は彼の傑作となる作品だよ。
 彼が最初に脚本を仕上げたのは『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズの1本を撮影していたときだった。読んでみて「さすがだ、これだ!」と思ったね。早速電話して、「確実にものにしたね。信じられない。完璧だ」と伝えたんだ。

──あなたはハンターと一緒にこの映画の資金集めを始めましたが、05年2月に彼が自殺してしまい、1人で続けざるを得なくなりましたね。

デップ:僕はハンターのことを知っている。そして、この映画を気に入ってくれることも分かっているよ。間違いない。彼は大いに気に入ってくれただろう。

ジョニー・デップ
ジョニー・デップ
Johnny Depp

1963年6月9日、アメリカのケンタッキー州で生まれる。ロックグループ「The Kids」のミュージシャンとしてキャリアをスタートさせ、ロサンゼルスを拠点に活動。バンド解散ののち、オリヴァー・ストーン監督の『プラトーン』(86年)などに出演し、人気テレビ番組『21ジャンプ・ストリート』(87〜91年)で脚光をあびる。90年の『シザーハンズ』で初めてゴールデングローブ賞最優秀男優賞にノミネートされ、『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』(03年)ではキャプテン・ジャック・スパロウ役で米アカデミー賞主演男優賞にもノミネート。『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』(07年)でゴールデングローブ賞最優秀男優賞を受賞した。
主な出演作に『チャーリーとチョコレート工場』(05年)、『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』(06年)、『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』(07年)、『アリス・イン・ワンダーランド』(10年)、『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉』(11年)、『ダーク・シャドウ』(12年)などがある。

ジョニー・デップ
ラム・ダイアリー
2012年6月30日より新宿ピカデリーほかにて全国公開
[製作]ジョニー・デップ、クリスティ・デンプロウスキー、アンソニー・ルーレン、ロバート・クラヴィス、ティム・ヘディントン、グレアム・キング
[監督・脚本]ブルース・ロビンソン
[原作] ハンター・S・トンプソン
[撮影] ダリウス・ウォルスキー
[美術]クリス・シーガーズ
[衣裳]コリーン・アトウッド
[音楽]クリストファー・ヤング
[出演]ジョニー・デップ、アンバー・ハード、アーロン・エッカート、マイケル・リスポリ、リチャード・ジェンキンス、ジョヴァンニ・リビシ
[原題]THE RUM DIARY
[DATA]2011年/アメリカ/ショウゲート/120分/R15+
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