『ハピネス』窪塚愛流&蒔田彩珠インタビュー

嶽本野ばらの小説を映画化、余命7日の少女の恋模様

#ハピネス#窪塚愛流#蒔田彩珠

窪塚愛流&蒔田彩珠
雪夫のように模範的にはなれず、内心ズタボロだと思います(窪塚)

ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』の窪塚愛流と、NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』蒔田彩珠。今、最も注目されている若手の2人が共演した純愛ストーリー『ハピネス』が、5月17日より公開される。

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[動画]蒔田彩珠、窪塚愛流とキス…『ハピネス』特報

窪塚愛流&蒔田彩珠

『ハピネス』
2024年5月17日より全国公開 (C)嶽本野ばら/小学館/「ハピネス」製作委員会

「下妻物語」で知られる嶽本野ばらの同名小説を篠原哲雄が監督。心臓に病を抱え余命7日間と告げられた高校2年生の少女・由茉と、同じ年の恋人・雪夫の切なくも微笑ましい日々を、家族との関係も交えながら描き出す。

嶽本文学に必須のロリータファッションは本作でも登場し、少女の純粋さ、可憐さと恋人の優しさを表現する良きアイテムとなっている。悲しいはずなのにクスリと笑みが込み上げるユーモラスなシーンも印象的な本作について、雪夫を演じた窪塚と、由茉を演じた蒔田に話を聞いた。

[動画]「余命1週間だったら?」という問いに…『ハピネス』窪塚愛流&蒔田彩珠インタビュー

──優しさに満ちた作品ですが、“余命1週間”という厳しい現実も横たわります。現在は20歳前後のお二人ですが、由茉のように高校生で余命1週間と告げられたら、何を感じてどう行動しますか?

窪塚:そうですね……高校生の時だと特別なことをしようと思わなくて、当たり前の、その時の自分の日常を生きます。ただその中で、会える限りの人と会いたい、一緒にいたいなって思います。

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窪塚愛流

──若い頃は「きれいに散りたい」と思う人も多いように感じますが、そういう思いはありますか?

窪塚:高校生の時は、綺麗だったり美しく消えたいみたいなことより、もうグッチャグチャでいいから友だちとものすごく騒いで、会える人とできるだけ会って、もうはっちゃけて自分をさらけ出した状況で死にたいと思うのかもしれません。逆に今だと、美しく死にたいと思ったりするかもしれません。

蒔田:高校生の時だったら……多分、その時にやっている仕事を、最後まで変わらずにやり続けるのかなと思いますね。

蒔田彩珠

──感情的にはどんな風に思うのでしょうか?

蒔田:やっぱり悲しいと思います。高校生、まだまだこれからですし、大人になって楽しみなことがきっといっぱいあるだろうし、悲しい気持ちになると思います。

──では逆に、大切な人が余命1週間だと知ったらどうでしょう?
窪塚愛流&蒔田彩珠

窪塚:それはもう悲しさに満ち溢れて、僕は雪夫のように(死という現実を穏やかに)受け止めてあげられないかもしれない。雪夫は大切な人のことを思い向き合って、“涙を見せない”という優しさを選びました。けれど、僕自身はそんな模範的な男の子にはなれないし、そうですね……その子の前では全力で涙を隠すけれど、ふとした瞬間ではもう滝のように涙が溢れたり、多分、内心ズタボロだと思います。それが仮に恋人でも家族でも悲しさは同じだと思います。

蒔田:私もそう思います。本人が明るく振る舞えば振る舞うほど、きっとさらに辛くなるし、何もしてあげられないという気持ちになり、悲しくなりますね。

理想のデートはバイクでツーリング、座るのは運転席(蒔田)
──映画のなかで由茉と雪夫は思い出に残る素敵なデートを繰り返しますが、窪塚さんご自身は“理想のデート”ってありますか?

窪塚:理想のデートは、スポーツカーとかちょっと格好いい車に乗ってドライブしたり夜景を見に行ったりしたいです。なんかそういう男のロマンみたいなのがあります。でも、自分はそういう車は持っていなくて、レンタカーなどではハイレベルな車は23歳からしか借りられないんです。あと2年待たないといけないです。

──蒔田さんの理想のデートはどんな感じですか?

蒔田:私はバイクでツーリングデートですかね。(タンデムシートに乗るのではなく)前ですけど(笑)。

──映画の中の由茉はおしとやかな乙女でしたけれど、正反対のタイプなんですね!

蒔田:そうですね、性格的には違いますね。

──嶽本さん原作の『下妻物語』と同じく、ロリータファッションがとても印象的な作品でした。着てみた感想は?

蒔田:兄が2人いて、普段はズボンだったりメンズの洋服を着ることが多いので、ああいうフワフワ、フリフリしてるお洋服を着ると、やっぱり気分も上がりますし、女の子のおしゃれを楽しめた気がします。

──着心地はどうですか。

蒔田:スカートはボリュームがあって歩きやすく、長すぎず短すぎずで意外と生活しやすかったです。

──窪塚さんもフリルのシャツなどロリータのメンズファッションを着ていましたね。

窪塚:普段ああいった格好はしませんし、自分でも見慣れないので緊張しました。でも、雪夫のキャラクターにはすごく馴染んでいたと思います。自分は(胸元の)リボンだけのロリータファッションでしたが、蒔田さんの衣装を見て、女性の魅力を引き出してくれるファッションだな、と思いました。それ以来、ロリータファッションの人を見ると魅力的に感じるようになりました。

──映画の中のご自分の役柄についての感想を教えてください。台詞回しも少し古風で丁寧で、今どきの若者像とは少し違う印象ですが。

窪塚:普段話す言葉とはまた違う古風な言葉なので、今まで演じてきた役とはちょっと違っていました。でもそれがとても雪夫らしくて、色々なことを受け入れることのできる器の広い男の子というキャラクターが出ていたと思います。

──雪夫と由茉、ご自分と比べてみて、いかがですか?

窪塚:雪夫はとても大人で「本当に高校2年生?」と思うようなところが多々ありました。自分を見つめ直させるような部分があるキャラクターですし、背中を押してくれるような温かさもあり、今の自分にとってはかけがえのない役だなって思いました。

蒔田:由茉は本当に強くて、自分よりも周りの人たち……雪夫や家族のことを優先して、ネガティブな感情はなるべく外に出さないように、ポジティブな気持ちだけを出して皆を元気づけようとする女の子。演じていて辛いシーンももちろんあったのですが、由茉を見て元気づけられる人はいっぱいいるんじゃないかな、と思いながら演じていました。

窪塚愛流&蒔田彩珠

──それでは、今後演じてみたい役はありますか?

窪塚:小学生の頃に1年間ぐらい剣道を習っていました。地区大会で銅メダルを取ったこともあるので、殺陣に興味があります。時代劇など刀を使うような役に挑戦してみたいです。

蒔田:最近『忍びの家 House of Ninjas』が配信されてアクションを褒めていただいたので、またなにかアクション作品があれば出てみたいですね。前回よりももっと身体を鍛えて挑みたいです。

窪塚愛流&蒔田彩珠

──最後に、本作の見どころなどを教えてください。

窪塚:お先にどうぞ(笑)。

蒔田:(笑)。撮影しているときから監督や愛流くんと3人で、見た人が元気になれるような明るい作品になるようにしようねと話していました。できあがった作品も、悲しい気持ちではなく温かい気持ちになれる作品だと思うので、たくさんの方に見ていただきたいです。

窪塚:この作品は一見、由茉と雪夫の2人の恋物語なのですが、実は親や兄妹も含めた家族物語として見ることができる素敵な作品です。
自分は、親になるにはまだまだほど遠いですし、親になれるかどうかも分かりませんが(笑)、自分に子どもがいたら由茉の親のようにするのかな、と考えさせられました。

──山崎まさよしさんと吉田羊さんが演じた由茉のご両親はとても素敵ですよね。窪塚さんのご両親も同じ状況なら、あんな風に別れの時を過ごしてくれると思いますか?

窪塚:思いました…いや、ああいう風になるかは分かりませんが、親の偉大さというのはすごく感じました。
この映画はそれぞれの愛の形が描かれていて、どれが正解というのはないと思うので、いろいろな方に見ていただき、それぞれの気持ちで受け取っていただけたら嬉しいです。

──若者だけではなく親の世代にもぜひ見てもらいたいっていうことですよね。

窪塚:そうです。

(text:編集部/photo:小川拓洋)
(窪塚愛流 ヘアメイク:中山八恵/スタイリスト:上野健太郎)
(蒔田彩珠 ヘアメイク:山口恵理子/スタイリスト:小蔵昌子)

窪塚愛流
窪塚愛流
くぼづか・あいる

2003年10月3日生まれ。神奈川県横須賀市出身。2018年に豊田利晃監督の映画『泣き虫しょったんの奇跡』でスクリーンデビュー。2021年から本格的に俳優活動を開始。最近の出演作はドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』、『あたりのキッチン!』(共に23年)、映画『麻希のいる世界』(22年)、『少女は卒業しない』(23年)、『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』、『愛のゆくえ』(共に24年)など。

蒔田彩珠
蒔田彩珠
まきた・あじゅ

2002年8月7日生まれ、神奈川県出身。是枝裕和が監督したテレビドラマ『ゴーイング マイ ホーム』(12年)の演技が高く評価され注目を集める。『海よりもまだ深く』(16年)、『三度目の殺人』(17年)、『万引き家族』(18年)と是枝監督の映画に多く出演。その後、連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(16年)、『おかえりモネ』(21年)、映画『99.9 -刑事専門弁護士- THE MOVIE』(21年)、ドラマ『舞妓さんちのまかないさん』(23年)、Netflixシリーズ『忍びの家 House of Ninjas』(24年)などに出演。『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(18年)では第33回高崎映画祭最優秀新人女優賞、第43回報知映画賞新人賞を受賞。『朝が来る』(20年)では第44回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。