“軽薄な色男”を演じる天才! 名門大学出身、スキャンダルも乗り越えて、映画ファンを魅了しつづける英国俳優
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(C)2025Universal Pictures
【この俳優に注目】ヒュー・グラント(後編)
『ブリジット・ジョーンズ』最新作に復帰!
現在公開中の『異端者の家』では冷酷なミスター・リードを演じ、同時に『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』では軽妙なプレイボーイ、ダニエル・クリーヴァーとしてスクリーンに帰ってきたヒュー・グラント。まったく異なる顔を自在に使い分けるこの英国俳優の歩みを、ここでは主にキャリア前半に焦点を当てて振り返ってみたい。
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1960年、ロンドンに生まれたヒュー・グラントは、名門オックスフォード大学ニュー・カレッジで英文学を専攻した。この学歴は、彼の「知的でウィットに富んだ」イメージの礎となっている。
在学中に演劇サークルで舞台に立ち、1982年に学内製作の映画『オックスフォード・ラヴ』でデビュー。1987年の『モーリス』では、同性愛者の学生を繊細に演じ、ヴェネチア国際映画祭で助演男優賞を受賞。同作は日本で大ヒットし、当時グラントのロンドンのアパートには、毎日のように日本から大量のファンレターが届いたという。
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上品でハンサムすぎると起用に反対されるも……
イギリスで着実にキャリアを重ねていたグラントが、一気にブレイクしたのが1994年の『フォー・ウェディング』だ。低予算ながら世界中で予想外の大ヒットとなり、独身貴族の主人公はまさに彼の当たり役となった。
だが脚本家のリチャード・カーティスは当初、「上品すぎるし、ハンサムすぎる」として彼の起用に反対していたという。しかし、結果は大成功。以後ふたりは『ノッティングヒルの恋人』(1999年)、『ラブ・アクチュアリー』(2002年)、『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズ初期2作(共同脚本)でもタッグを組んでいる。
『ブリジット・ジョーンズの日記 4Kレストア』2025 年6月20日より2週間限定ロードショー
(C) 2001 Universal Studios – STUDIOCANAL – Miramax Film Corp.
売春スキャンダルで逮捕も。当時を支えた恋人とは良き友人に
『フォー・ウェディング』の成功を受けて、グラントは『9か月』(1995年)でハリウッドに進出する。しかし同作の公開直前、ロサンゼルスで売春スキャンダルにより逮捕されるという事件が起きた。容赦ない報道が続くなか、彼はTV番組で「善悪の区別はついています。私は悪いことをした。それが全てです」と潔く語った。交際中だったエリザベス・ハーレイも彼を支え、共同で製作会社を設立。『ボディ・バンク』(1996年)、『恋するための3つのルール』(1999年)などグラント主演作をプロデュースしている。
この頃のゴシップメディアはスクープのためには手段を選ばず、イギリスのタブロイド紙「News of the World」や「The Sun」はグラントや著名人の電話を盗聴していた。2011年にその事実が明るみに出ると、グラントは報道倫理改革を求める「Hacked Off」キャンペーンの中心メンバーとなり、2012年には「News?」紙を訴え、後に和解。和解金の大半を「Hacked Off」に寄付し、今もなお、メディアの暴走を公の場で批判し続けている。
ハーレイとの関係は1987年から2000年まで続いたが、破局後も良き友人として支え合っている。ハーレイの息子が生まれた際には名付け親となり、2024年にその息子ダミアンが監督デビューした際には、プレミア上映に駆けつけた。
『ノッティングヒルの恋人』『アバウト・ア・ボーイ』などで多彩な魅力を発揮
1995年のスキャンダル後、数年の空白期間を経てグラントは『ノッティングヒルの恋人』でスクリーンに復帰した。ジュリア・ロバーツ演じる映画スターと、小さな書店を営む男性との恋を描いた本作では不器用な主人公を好演。その後、カーティスの初監督作『ラブ・アクチュアリー』でも、実直ながら恋に不器用な英国首相役を演じ、好感度をさらに高めた。
かと思えば、『アバウト・ア・ボーイ』(2002年)で演じたのは身勝手な恋多き独身男性。11歳だったニコラス・ホルトとの息の合った共演は忘れ難い。2人は2024年の「Vanity Fair」の対談で再会している。「私の方が子どもだった」とグラントが当時を語り、ホルトは彼の話し方に影響を受けたことを明かした。しまいには「うちの子は6歳なんだけど」「うちも!」とパパ同士としての会話が弾み、かつての皮肉屋の顔は、すっかり優しい父の表情になっていた。この作品で見せた父性の芽生えは、その後の人生を予兆していたのかもしれない。
中年になった元アイドルを演じた『ラブソングができるまで』(2007年)では80年代のUKポップスターを高い解像度で再現。だが撮影中にパニック障害が悪化し、続く『噂のモーガン夫妻』(2009年)は評価が振るわなかった。
前編で紹介したキャリアの変化を経て、2016年の『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』で、音痴な歌姫の妻を支えるシンクレアを演じ、ゴールデングローブ賞にノミネートされた。心優しく理解ある夫像はロマコメ路線の進化形だが、一面的ではない複雑で興味深い夫婦像を描き出している。
『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』
(C)2016 Pathe Productions Limited. All Rights Reserved.
誤解されやすい彼がウマが合った女優とケンカしなかった女優
ハリウッドを代表する女性スターと共演を重ねてきたグラントだが、彼女たちとの相性は必ずしも順風満帆ではなかった。
ジュリア・ロバーツの大きな口をいじりすぎて気まずくなったり、『ラブソングができるまで』のドリュー・バリモアとはユーモアのセンスの違いから対立したことも。だが、後にバリモアは彼の毒舌を「愛情表現」と理解を示し、トークショーでは旧交を温める場面も見られた。
グラントが「最高にウマが合った」と語るのは『トゥー・ウィークス・ノーティス』(2002年)のサンドラ・ブロック。2人揃ってのインタビューでは彼のジョークに軽快に突っ込む姿が印象的だったが、出会った当初は下ネタで引かれ、撮影開始まで交流ゼロだったという。彼の英国的ユーモアは、誤解されやすいが、わかり合えば深い絆になるようだ。
そして、「唯一ケンカしなかった」と語るのがレネー・ゼルウィガー。『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズで演じたプレイボーイのダニエル・クリーヴァーは、嫌味で軽薄だがどこか憎めない男。最新作ではシングルマザーとなったブリジットの子どものシッターを務める姿も描かれ、変わらない色男ぶりと、さりげない優しさに人間としての深みがにじむ。
パパになり、子育てに奔走する日常を語ることも
グラントにとって、『クラウド アトラス』(2012年)への出演が俳優としての転機となったが、50代で父になったことも大きく影響しているだろう。
2011年、俳優のティンラン・ホンとの間にタビサ、2013年にフェリックスが誕生し、2018年に結婚した起業家のアナ・エバースタインとの間には2012年にジョン、2015年にルル、2018年にブルーを授かった。2人との交際時期が重なっていたのは気になるが、ホンとは破局後も良好な関係を維持し、両親として子どもたちに関わっている。プライバシーを重んじるグラントだが、インタビューでは子育てに奔走する日常を自虐的ユーモア混じりに語る表情は幸せそうだ。
キャリアに通底する「自惚れ」という概念への批評
50代以降はTVのミニシリーズ『英国スキャンダル ~セックスと陰謀のソープ事件』(2018年)、『フレイザー家の秘密』(2020年)でも演技力の幅を証明している。
彼のキャリアに通底するのは、「自惚れ」という概念への批評のようにも見える。『パディントン2』のフェニックス・ブキャナン、『ブリジット・ジョーンズの日記』のダニエル、『異端者の家』のミスター・リード。あらゆる角度から“自惚れ”を体現してみせる。
『パディントン』シリーズ最新作『パディントン 消えた黄金郷の秘密』が2025年5 月9 日より全国公開。前作でパディントンに敗れ刑務所に収監中のはずのブキャナン(ヒュー・グラント)は、新作ではどのようなシーンで登場するのか。
写真は、『パディントン2』(C)2017 STUDIOCANAL S.A.S All Rights Reserved.
グラントは役作りの際、毎回キャラクターの背景を丁寧に練り上げるという。それは文芸作品でも、ロマコメでも、子ども向けの作品であっても同じ。2019年、英国総選挙で反保守党キャンペーンに参加し、戸別訪問を行った際、『パディントン2』の悪役と勘違いされて泣かれた子どもに出くわしたという逸話が、その徹底ぶりを物語っている。
『パディントン2』
(C)2017 STUDIOCANAL S.A.S All Rights Reserved.
思えば、彼がロマンティック・コメディで演じてきたキャラクターたちは、どれも多彩で個性的だ。似ているようで、しっかりと違う。それは、最初から彼が立派な“性格俳優”だった証拠にほかならない。だからこそ、ヒュー・グラントという俳優は常に“その次”を期待させる存在なのだ。(文:冨永由紀/映画ライター)
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