『フルートベール駅で』ライアン・クーグラー監督が来日、人種問題の難しさに言及

『フルートベール駅で』ライアン・クーグラー監督
『フルートベール駅で』ライアン・クーグラー監督

サンダンス映画祭で作品賞と観客賞をW受賞するなど高い評価を得た『フルートベール駅で』。全米を泣かせたこの作品を生み出した27歳の新鋭ライアン・クーグラー監督が来日し、2月10日にシネ・リーブル池袋で行われたティーチイン試写会に出席した。

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22歳の青年が無抵抗の状態で警官に射殺された事件をもとにした本作。3歳の娘を残し亡くなった青年の“人生最後の1日”を描き、全米ではわずか7館での公開スタートから異例のヒットで1063館へと拡大公開された話題作だ。

クーグラー監督は映画製作のきっかけについて「22歳の黒人青年が無抵抗のまま白人警官に射殺されたという事件を知り、YouTubeなどにアップされている当時の現場を映し出したビデオを見たときに感じた悲しみや怒り、無力さがもとになっています。アートである映画を通し、この事件について新しい見方を提示するためにこの映画を作ろうと思いました」と振り返った。

映画に描かれた事件は、まさにバラク・オバマが大統領選挙に当選した時期に起きたが、このことについてクーグラー監督は「オバマが当選したのが2008年の11月。就任が09年の1月なので、まさにこの映画で描いた事件のタイミングと重なり、本当に辛かった。(舞台となる)カリフォルニア州オークランドのベイエリアにはリベラル派が多く、オバマ支持者も多かったのです。そんななかでこの事件が起きてしまい、現実を見直さなければいけないと皆が感じました。オバマが黒人初の大統領に就任したにも関わらず状況は良くなって折らず、その後もフロリダ州でアフリカ系アメリカ人の男性が同じように亡くなりました。政治的なレベルで快挙を成し遂げられても、民衆の変化はまだまだこれからだと思います」と語った。

さらに人種問題について「リラックスした状態では出てこないのですが、何かがうまく行かなくなったときに出てきてしまうことがあるのでは」とその難しさに言及。「(舞台となったオークランドの)ベイエリアはお金持ちと貧しい人々が隣り合って住むなど多様性があり民族的にも先進的なエリアなのですが、警察官は何故か白人が多いんです。緊張した場面になったときに人種差別的な部分が顕著になることもあるのでは」とも話していた。

イベント前にはクーグラー監督のファンが外で待ち受けサインを求める場面も。監督は「自分の作ったものが響いていると思うととても嬉しい」と喜んでいた。

『フルートベール駅で』は3月21日より新宿武蔵野館ほかにて全国公開される。

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