アイドルから個性派スターへ! 『ライトハウス』で狂気の怪演、ロバート・パティンソンの魅力に迫る

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ライトハウス
『ライトハウス』
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『トワイライト』で美形俳優としてブレイク! 一躍アイドル俳優に!

【この俳優に注目】ロバート・パティンソン
先日発表されたアメリカの映画芸術科学アカデミーが発表した新規会員の招待リストに名を連ねたロバート・パティンソン。日本ではウィレム・デフォーと共演の『ライトハウス』(2019年)が7月9日より公開される。

・孤島のスリラー『ライトハウス』、ロバート・パティンソンの過酷労働映像集とインタビュー映像

20代前半に『トワイライト』シリーズに出演し、欧米のティーン・アイドルとして大ブレイクしたパティンソンは、その後にユニークな出演作選びを続け、独自のキャリアを築いてきた。昨年、クリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』のニール役で主役を食う人気を攫ったばかり。2022年にはブルース・ウェイン/バットマンを演じる『ザ・バットマン』の公開が予定され、久々にハリウッド・メジャー映画に戻ってきたパティンソンのこれまでの歩みを振り返る。

クリステン・スチュワートとの恋愛も話題に!

10代でデビューし、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(07年)などに出演したパティンソンは2008年に『トワイライト~初恋~』で主人公ベラが恋するヴァンパイアの青年、エドワードを演じて、10代の少女を中心に人気に火がついた。ベラを演じたクリステン・スチュワートとは実生活でも恋人同士になり、ファンはますます熱狂、公私ともに注目を集めた。

『トワイライト』はシリーズ化されて2012年まで続いたが、その間からパティンソンは、エドワードのイメージに縛られることなく、様々な作品に出演していく。『天才画家ダリ 愛と激情の青春』(09年/未公開)ではダリの若き日を演じ、フランスの文豪モーパッサンの小説を映画化した『ベラミ 愛を弄ぶ男』(12年)では女性たちを踏み台に出世していく美貌の青年を演じた。製作総指揮も務めた主演作『リメンバー・ミー』(10年)やサーカス団を舞台にした『恋人たちのパレード』(11年)など、ラブストーリーもある。

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『トワイライト~初恋~』のロバート・パティンソン (C)2008 Summit Entertainment N.V. All Rights Reserved.

鬼才クローネンバーグとの出会いが転機に

トワイライト』シリーズ終了と重なるように訪れた転機は、デヴィッド・クローネンバーグ監督との出会いだろう。独自の美学を貫くクローネンバーグ監督の近作2本『コズモポリス』(12年)『マップ・トゥ・ザ・スターズ』(14年)に出演したパティンソンは、華のある外見に潜むエキセントリシティと呼びたくなるような、彼ならではのスタイルを確立していく。演じるキャラクターの持つ歪さを、これ見よがしではなく醸し出すのだ。

メジャーな大作よりも、インディーズ作品を選び、ヴェルナー・ヘルツォーク<『アラビアの女王 愛と宿命の日々』(15年)>、ジェームズ・グレイ<『ロスト・シティ 失われた黄金都市』(16年)>、クレール・ドゥニ<『ハイ・ライフ』(18年)>といった鬼才監督たちと組み、正統派の二枚目から異端児まで幅広く演じている。『奪還者』(14年)のデヴィッド・ミショー監督がNetflixで撮った『キング』(19年)では、ティモシー・シャラメが演じる15世紀のイングランド王を挑発するフランスの王太子を、フランス語訛りの英語セリフで怪演した。

コズモポリス

『コズモポリス』のロバート・パティンソン (C) 2012 COSMOPOLIS PRODUCTIONS INC. / ALFAMA FILMS PRODUCTION / FRANCE 2 CINEMA

『ライトハウス』ではウィレム・デフォーと狂気の演技合戦!

『ライトハウス』は、『ウィッチ』(15年)のロバート・エガース監督が、19世紀末のアメリカ東部の灯台を舞台に、外界から遮断された日々を送る2人の灯台守が次第に狂気に蝕まれていく様子を追うスリラーだ。

パティンソンは新米の灯台守として、デフォーが演じるベテランから理不尽な扱いを受けて重労働を押し付けられる男を演じている。時が過ぎるうちに主従のバランスが揺るぎ、親しみと主導権争いの攻防を繰り広げる心理戦、灯台の強い発光に魅入られて幻想にとらわれる男2人のドラマは濃密で、想像を絶する世界へと進んでいく。

1930年代に設計されたヴィンテージのレンズを使って白黒フィルムで撮影、画面サイズも初期のトーキー映画を想起させる、ほぼ正方形のスタンダードという、入念に作り込まれた映像の中で、老灯台守は芝居がかったセリフでまくしたてる。新米はその圧を一身に受けながら反発する。舞台からキャリアをスタートさせたデフォーと、リハーサルを好まずに自然と湧き上がるように演じたいパティンソン。俳優2人のスタイルの違いをそのまま生かす演出は、30代を迎えたパティンソンの可能性をさらに広げて見せた。

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『トワイライト』シリーズで得た名声をいい意味で利用し、冒険的な作品に出演し続け、今年35歳になったパティンソン。『TENET テネット』で、一筋縄ではいかない複雑なキャラクターをミステリアスに演じた彼が、これまで多くの俳優が演じてきたブルース・ウェイン/バットマンを、どう表現するのか、興味は尽きない。(文:冨永由紀/映画ライター)

『ライトハウス』は、2021年7月9日より公開