13歳・尾上眞秀、眞栄田郷敦との“二人一役”に手応え 『港のひかり』若き光が会場照らす

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『港のひかり』
(C)2025「港のひかり」製作委員会
『港のひかり』
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主演・舘ひろしが語る輪島への想い、共演陣の温かな掛け合いも

藤井道人監督最新作『港のひかり』の東京プレミアイベントが、10月29日にヒカリエホールで開催。主演の舘ひろしをはじめ、共演の眞栄田郷敦、尾上眞秀、MEGUMI、椎名桔平、藤井監督が登壇した。

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先日10月18日には、ロケ地・石川県輪島市でジャパンプレミアが開催された。お世話になった石川・富山の人々への恩返しを込め、舘ひろしらキャスト陣が輪島・朝市通りを再訪。能登・福幸(ふっこう)フェスや舞台挨拶を通じて地元の方々と交流する姿が、大きな話題を呼んだ。

そして今回、満を持して東京でのプレミアイベントが開催。舘ひろし、眞栄田郷敦、尾上眞秀、MEGUMI、椎名桔平、そして藤井道人監督が登壇した。いち早く本作を見届けようと詰めかけた多くの映画ファンで会場は熱気に包まれ、キャスト陣がレッドカーペットに登場すると、割れんばかりの拍手と歓声が響いた。舘をはじめとする出演者たちは笑顔で観客に手を振りながらステージへ上がり、一言ずつ挨拶を述べてイベントが幕を開けた。

まずイベントでは、先日輪島市で行われたジャパンプレミアの話題に。舘、眞栄田、尾上らメインキャストによる輪島・朝市通りへの訪問や、能登・福幸フェスでのファンサービス、そして7名のキャスト・監督が集結した豪華舞台挨拶など、この特別な催しは各所で大きな反響を呼んだ。

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舘は「朝市通りで記者会見を行いました。我々が撮影をしていた当時は、お店がたくさん並んでいて賑やかな通りでしたが、今はまったく何もなくて」と訪問時の街の様子を振り返り、「劇中(朝市通りで)僕らがちょっとした買い物をするシーンがあるんですが、そのお店がどこにあったのかさえもわからないくらいに何もなくて…言葉を失いました」と、複雑な胸の内を明かした。

本作で描かれるのは、任侠の過去を捨てて生きる主人公・三浦と、両親を事故で失った盲目の少年・幸太のかけがえのない友情の物語。“年の差を超えた深い友情”が一つのテーマとなっているが、実際に三浦と幼少期の幸太を演じた舘と尾上(13歳)の年の差は62歳。

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MCから「長い撮影期間を経て、キャスト陣の間で実際に友情が芽生えた瞬間はありましたか?」と質問が投げかけられると、舘は「(僕らは)60歳差なんですよ?(笑)」と笑いつつ、「彼(尾上)は盲目の少年という役どころでしたが、本当に素晴らしい演技をしてくれまして。私も同じような役を演じた時に、あれだけできるかなという思いでした。ご一緒して勉強になりました」と称えた。

一方、尾上もこの質問に「うーん、友情?」と戸惑いながらも、「船に乗るシーンで酔いそうになってしまったんですが、(舘さんが)声かけてくれて。酔わなかったです」と答えると、舘も「そこは友情を感じました(笑)」と返し、2人の微笑ましいやり取りに会場は温かい空気に包まれた。

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また、幸太の青年期を演じた眞栄田も、舘とは50歳差での共演となった。眞栄田は「僕は舘さんにいろんなものをいただいてばかりで。僕も何かを与えられるような存在になれたら、お友だちになりたいです」と謙遜しながら語ると、舘は「一緒にご飯を食べたり、遊びに行ったりできたらいいねと話していましたね。若い女の子を紹介してくれたら嬉しいな、と(笑)」とジョークを飛ばし、会場の笑いを誘った。

さらに、2人で1役を演じ分けた眞栄田と尾上には、MCから「お互いの芝居を見て感じたこと」についての質問も。眞栄田は「舘さんもおっしゃっていましたが、家に1人でいるときと(舘演じる)おじさんといるときの表情や雰囲気の違い。本当におじさんが光のような存在だったんだなという説得力があるお芝居だったので、すごくやりやすくて感謝しています」と感謝を述べ、その言葉に舘も「この映画は眞秀にかかっているくらい」と頷いた。

そんな大先輩の言葉に照れ笑いを浮かべた尾上も、眞栄田の演技について「すごい、少年期から繋がっているなと思いました」と語り、尊敬のまなざしを向けた。

椎名桔平が明かす”舘との意外な縁”とは?

今回、本作のイベントに初登壇となったのが、河村組の組長・石崎を演じた椎名桔平、そして幸太の叔母・大森美和子を演じたMEGUMIの2人。

椎名が演じた石崎は、三浦に強い恨みを抱く河村組の組長。椎名は役作りについて、「今までいろんな役を演じてきましたが、特に(石崎は)クズみたいな役なので…(笑)。ただ、少しは人間味がないと舘さん演じる三浦と対峙する資格がないんじゃないかと思い、いろいろと模索しました」と回想。

劇中では三浦と石崎が対峙する緊迫感あふれるシーンも登場するが、「“これダメになるかな”と思いながらも、監督とお話した上で、憎しみや嫉妬だけじゃないんだという感情を携えて対峙すると決めて演じました」と秘話を披露した。

さらに椎名は「僕は40年くらい前に、犯人役で『あぶない刑事』に出させていただいて」と舘との意外な縁を明かし、「その時は何も絡むようなシーンはなかったのですが、舘さんは当時から雲の上の大先輩で。そんな方と40年を経てご一緒させていただいて、いろんなことを思い返しながら演じました。嬉しかったです」と喜びを語った。

幸太の叔母という役どころを担ったMEGUMIには、幼少期・青年期の幸太を演じた尾上、眞栄田に対する印象についての質問が。尾上に対しては、「眞秀さんは、長いことこの仕事をやっているといつの間にかできなくなってしまう、“そこにいてその人である”みたいな自然なお芝居をピュアに演じられていて。(幸太の)叔母という役どころもあって、仲良くなりたくてつい食い気味で話しかけちゃったんですが、しっかり困ったお顔をされていました(笑)」と笑いを交えながら当時の様子を振り返った。

一方、眞栄田に対しては、「すごい意気込みで参加されていたので、“ほとばしる熱”みたいなものが役にリンクしていましたし、その奥にある傷のようなものもしっかりご自身の中で構築されていて…。まっすぐさもブレンドされながら演じられていて、素晴らしい役者さんだなと感じました」と語り、役への向き合い方に感銘を受けていたという。

そんな本作には、黒島結菜、斎藤工、ピエール瀧、一ノ瀬ワタル、市村正親、宇崎竜童、笹野高史といった個性豊かな実力派キャストが名を連ねている。メガホンを取った藤井監督にキャスティングについて質問が及ぶと、監督は「毎回、“この映画が最後だ”という気持ちで挑んでいるのですが、自分が人一倍その人のお芝居を愛して、ベストアクトを引き出したいんですというプロポーズのような思いでどの作品でもオファーさせていただいています」と熱い思いを吐露。

さらに「しつこくお誘いすることもあったかと思うのですが、皆さん素晴らしいお芝居を見せていただいて幸せな時間でした」と付け加え、本作への手応えをにじませた。

イベント終盤では、会場が“ヒカリエホール”、そして本作のタイトルが『港の“ひかり”』であることにちなみ、登壇者に向けて「“ひかり”のような存在は?」という質問に答えるフリップトークコーナーも実施された。

藤井監督のフリップに書かれていたのは「尾上眞秀」という文字。「今回、“おじさんと少年の友情のものがたり”という企画と決まった時に、ちょうど眞秀くんの歌舞伎を見て涙が出たんです。きっとこの子がこの先の映画業界や映像業界、芸事の世界を背負っていくんだなと感じて、すごく感動したのを覚えています」と振り返り、「光と聞いて、“眞秀だな”と」と、すぐに頭に浮かんだのが尾上だったという。

続くMEGUMIのフリップには「息子」という文字が。「10回メッセージを送って、8回は既読スルーされるんですが(笑)」と塩対応だと語りつつも、「(息子が)今16歳というのもあって、大人になる前の輝きを感じていますし、彼がいるから頑張れるなというのも感じています」と、母としての愛情をにじませた。

そして椎名は舘の名前が書かれたフリップを掲げ、「舘先輩ですね!」と披露すると、会場からは大きな拍手が。「先ほども申し上げましたが、僕が若い頃からずっと長い間、輝き続けている方。僕ら世代の俳優にとっては頼もしくもあり、輝かしい先輩でもあり…その背中を追いかけたいなと」とリスペクトを込めた。

続いて尾上のフリップには、「ひーま(おじいちゃん)」という可愛らしい文字が。MCから人選の理由を問われると、「(祖父である七代目尾上菊五郎は)ずっと光っているというか…面白くて尊敬しています。お客さんを喜ばせるというところが、尊敬できるなと思います」とにっこり。

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さらに「舘さんの名前を書こうかと思ったんですが、絶対被るなと思って…」と前置きする眞栄田のフリップに書かれていたのは、「現場にいる皆さん」の文字。「撮影現場には、各部署にプロ中のプロが集まるんですよね。その方々のこだわりと技術が集結しているので、僕は現場が本当に大好きです。皆さん輝いているなと。その姿を見て僕も頑張らなきゃと思います」と、その理由を語った。

最後に舘のフリップに書かれていたのは、眞栄田の名前。「今回彼とご一緒して、その前に『ゴールデンカムイ』という作品でご一緒させていただいて…。目力のある素晴らしい俳優さんだなと」と称える舘の言葉に、眞栄田は謙遜した様子で「舘さんは本当に素敵な方なんですよね。周りへの気遣い、ここまですごい方なのにユーモアもあって…みんなが接しやすいような空気を作って、立ち振る舞ってくださって、本当に心強かったです」と感謝を述べた。

最後のマスコミ・観客に向けたフォトセッションでは、キャスト陣と監督が作品タイトルにちなみ、“ひかり”をモチーフにしたボール型のLEDライトを手に取り、本作の世界観を象徴するような幻想的な演出が実施された。

締めくくりは、舘からのメッセージ。「私の大好きな藤井監督、日本映画界の巨匠・木村大作さん、そして素晴らしい俳優が参加してくれて、素晴らしい作品になっていると思います。最後まで楽しんでいただけると嬉しいです、ありがとうございました」と観客へ感謝を伝え、再び大きな拍手が湧き起こる中、キャスト陣と監督一同は会場を後にした。

『港のひかり』は2025年11月14日より全国公開。