人はなぜ嘘をつくのか——母の語る記憶に潜む“あの夏”の真実とは? 広瀬すず主演『遠い山なみの光』本予告編

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『遠い山なみの光』
(C)2025 A Pale View of Hills Film Partners

カズオ・イシグロのデビュー作を映画化、記憶と嘘が交錯する母娘の心震わす物語

広瀬すずを主演に迎え、「私を離さないで」などで知られるノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロの鮮烈なデビュー作を映画化した『遠い山なみの光』。本作より、長崎の山なみを背にたたずむ悦子(広瀬)と佐知子(二階堂ふみ)、そして30年後英国で暮らす悦子(吉田羊)が幻想的な美しさで迫るメインビジュアルと、“あの夏に隠された切なすぎる真実”を紐解く本予告編を紹介する。

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日本人の母とイギリス人の父を持つニキ。大学を中退して作家を目指す彼女は、長崎で戦争を経験した後イギリスへ渡った母の悦子の半生を綴りたいと考える。娘に乞われ、口を閉ざしてきた過去の記憶を語り始める悦子。それは30年前、戦後間もない長崎で暮らしていた頃に出会った、佐知子という女性とその幼い娘と過ごしたひと夏の思い出だった。だが、ニキは次第に母が語る物語に違和感を抱き始め——。

長崎時代の悦子を演じるのは広瀬すず、佐知子に二階堂ふみ、イギリス時代の悦子に吉田羊、ニキにはオーディションで選ばれたカミラ・アイコ、さらに悦子の夫に松下洸平、その父親に三浦友和と、日英映画界の至宝がそろった。そのほか、日本パートには柴田理恵、渡辺大知、鈴木碧桜(子役)らが出演する。

今回紹介するのは、長崎の山なみを背に、凛とした表情でこちらを見ている悦子(広瀬)とミステリアスなたたずまいの佐知子(二階堂)、そして30年後にイギリスで暮らしている悦子(吉田)が印象的なメインビジュアル。

また本予告編は、本原作者カズオ・イシグロの一節から始まる。

人間ははね、ときに他人を欺(あざむ)くためではなく、
自分を騙(だま)し、
困難な真実から目を背けるために嘘をつくんですよ。 (カズオ・イシグロ)

1980年代、イギリスに暮らす悦子は、娘のニキ(カミラ・アイコ)に「ここへ来る前の話を聞かせて、長崎のこと」と問いかけられる。目の前の娘を見つめながら過去に思いを馳せる悦子の顔が、30年前、戦後復興期の長崎で暮らしていた頃の記憶と重なってゆく。

「あんときは、1人で立ってられんかったんです」と、戦争直後の自分を振り返る悦子。そして、佐知子は「あの辺は原爆でなにもかもふっとんじゃったから、しばらくは本当に大変だった」と凛とした強さで語る。悦子のお腹の子を心配し、「君があの日、被爆せんやったとは、本当に良かった」と愛情を見せる夫・二郎(松下)のセリフが続き、最後に二郎の父・緒方(三浦)から「二郎はあんたには優しかね?」と温かい言葉が投げかけられる。

苦労もありながら、幸せな思い出としてよみがえる長崎の記憶を語る悦子は、遠い目をして「素敵な思い出よ」とつぶやく。しかし、そんな母に対してニキはひとこと、「嘘」と言い放つ。

そこから画面は一転、様相を変える。「私がついた嘘」という印象的な文字とともに、人が変わったかのような鋭い表情の悦子。「私、佐知子さんに言っとらんことのあると」という言葉が重なる。「きみにも、もう少し母親らしく振る舞ってもらいたかよ」と言葉をぶつける二郎に対し、悦子は「母親らしく振る舞うって何?」と静かに問いかける。そして、自由奔放に自らの人生を謳歌する佐知子を、意味ありげな視線で見つめる——。

それぞれの登場人物の感情が交錯し、次第に“あの夏に隠された切なすぎる真実”へと向かっていく。そして最後に、悦子がつぶやく「大丈夫ね、希望があるとやもん」。すべてを包み込むその一言に込められた強い想いとは? ニキが、母の語る物語の思いがけない真実にたどり着いたとき、観客は、そこで明かされる激動の人生に心揺さぶられる。

『遠い山なみの光』は2025年9月5日より全国公開。