亀梨和也は「恐怖」の映画と相性抜群!? 『でっちあげ』と『事故物件』で示したスター性と貪欲さ

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『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』
『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』
(C)2007 福田ますみ/新潮社(C)2025「でっちあげ」製作委員会
『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』
『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』
でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男
『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』
『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』
『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』
『事故物件 恐い間取り』

役者・亀梨和也の新境地を見た『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』

このコラム【怖い映画】は、イケメン俳優の魅力が堪能できる怖い映画を紹介していこうというものである。さて次はどんなことを書こうかと、ぼんやり映画館へ行って『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』(公開中)を見ていたら、身の毛がよだってしまった。それもそのはず──実話をもとにしている点を踏まえつつ、語弊を恐れずに言えば、これは実に巧みに構成された“恐怖のエンターテインメント”だからだ。

成宮寛貴が12年前に主演したJホラーに見る“熱い感情と破滅の危うさ”という魅力

冒頭では、小学校教諭・薮下誠一(綾野剛)が、氷室拓翔(三浦綺羅)という生徒に対して、言葉にできないほど壮絶ないじめを行っている場面が描かれる。拓翔の母・氷室律子(柴咲コウ)は、薮下の行為を告発。これを受けて週刊誌は薮下を「史上最悪の殺人教師」と報じ、彼は社会の非難の的となる。

律子は大弁護団を従え、民事訴訟を起こす。一方、薮下は孤立無援のまま法廷に立ち、「すべては事実無根のでっちあげだ」と訴える。

もし、彼らの「事実」の認識に齟齬があるとすれば、その前提自体が崩れることになる。観客はこの齟齬のなかで翻弄されていく。三池崇史監督の巧みな演出が光る展開だ。

本作が“恐ろしい”のは、薮下を追い詰めるのが「社会の善意」だという点にある。誰もが正義感から彼を糾弾し、その声が集団ヒステリーの様相を呈していく。

きっかけは、「殺人教師」というキャッチーなフレーズを作り出したマスコミだ。記者たちは氷室親子の訴えに耳を傾け、善意のもとに薮下を追い詰めていく。

その急先鋒となるのが、亀梨和也演じる鳴海記者だ。鳴海は執拗に薮下を追いつめる。雨のなか、薮下の自宅を訪れ、うっすら笑みを浮かべながら証言を引き出そうとするその姿は、まさに“正義の鬼”である。

『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』

(C)2007 福田ますみ/新潮社(C)2025「でっちあげ」製作委員会

“逆オファー”で出演、強烈な印象を残す

出番は決して多くないが、亀梨は登場のたびに強烈な印象を残す演技を見せる。実は彼は本作に“逆オファー”をして出演したという。

でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男

(C)2007 福田ますみ/新潮社(C)2025「でっちあげ」製作委員会

振り返れば、ドラマ『野ブタ。をプロデュース』(05年/日本テレビ系)で全国的な人気を獲得して以降、亀梨は多くの主演や準主演を務めてきたが、このような“ポイントリリーフ”的な役柄は少ない。

2023年の主演作『怪物の木こり』でタッグを組んだこともあってか、三池監督は亀梨の存在感を熟知したうえで、このキャスティングに至ったと推測できる。

本作は、亀梨和也にとってターニングポイントとなる一本であり、役者としての貪欲さが垣間見える演技だったことは間違いない。

『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』

『事故物件 恐い間取り』に見る「貪欲」な精神

亀梨和也には、自然と視線を集める不思議な魅力がある。演技に限らず、歌っていても、野球をしていても、つい彼に目がいく。これが“スターの輝き”なのだろう。しかし、彼はそのスター性だけに頼ることなく、演技に対して常に貪欲なチャレンジを重ねてきた。そのひとつが、ホラー映画『事故物件 恐い間取り』(20年)である。

この作品は、松竹芸能の芸人・松原タニシが実際に住んだ事故物件を紹介した同名のベストセラーをもとに、中田秀夫監督が映画化したもの。

亀梨が演じたのは、松原の分身となる売れない芸人・ヤマメ。関西弁に丸眼鏡、無造作な髪型で自信なげな雰囲気をまとう青年だ。そこに漂う“頼りなさ”に惹かれる観客も多かっただろう。

『事故物件 恐い間取り』

主演の亀梨和也(左)と原作「事故物件怪談 恐い間取り」(右)

元相方の中井(瀬戸康史)が立てたテレビ企画で、ヤマメは殺人事件があった事故物件に住むことに。すると、据えられたカメラに人魂のようなものが映り、大きな話題を呼ぶ。霊感を持つファンの梓(奈緒)に来てもらうと、彼女は赤い服の女を見たという。そこから信憑性が一気に高まり、翌日、ヤマメと中井は交通事故に遭う。その一件により番組は注目を集め、ヤマメは念願のレギュラーを手に入れる。

ヤマメは「売れたい」と願っていた。そして、怪奇現象によって実際に売れた。だが、さらに強烈な映像を求め、事故物件専門の不動産屋・横水(江口のりこ)の勧めで、次々と物件を移り住んでいく。

中井や梓は「もうやめたほうがいい」と忠告するが、ヤマメはやめない。いつしか彼のなかで「売れたい」という欲を超え、「なぜこんなことが起きるのか」を突き詰めたいという探究心が勝っていく。

未知の体験におびえ、絶叫しながらも、それでも前に進む。これは、ホラー映画でありながら、ひとりの青年の成長を描いた物語でもある。

その“貪欲さ”は、スターでありながら多彩な役に挑み続ける亀梨和也という役者の姿勢とも重なるように見える——と言ったら、うがちすぎだろうか。

『でっちあげ』で亀梨が演じた鳴海記者も(恐怖を与える側と与えられる側の違いこそあれ)、職務に対して貪欲なキャラクターだった。話題の新作を見て、『事故物件 恐い間取り』を思い出したのは、そんな共通点があったからかもしれない。(文:一角二朗/ライター)

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[動画]亀梨和也が歩くとお花畑になる!? by 木村文乃/映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』プレミアイベント