監督降板の汚名返上も!『スパイダーマン:スパイダーバース』がオスカーに輝いた意義

#スパイダーマン:スパイダーバース#興行トレンド

『スパイダーマン:スパイダーバース』
『スパイダーマン:スパイダーバース』

アカデミー賞で長編アニメーション映画賞を受賞した『スパイダーマン:スパイダーバース』。手描きアニメの2DとCGアニメの3Dを融合させた、コミックブックの雰囲気を生かしたビジュアルスタイルが高く評価されているが、時代に合った主人公もアカデミーで評価された要因だろう。

『スパイダーマン:スパイダーバース』オスカー受賞が先行上映に弾み、受賞結果が興行に及ぼす効果とは?

主人公の中学生マイルスはアフリカ系とヒスパニック系のルーツを持つ。これまで実写映画化された白人高校生ピーター・パーカーが主人公ではない。『ブラックパンサー』がハリウッドの多様性重視を象徴する大ヒットになったが、マイルスが主人公の原作コミックをアニメ化しようと考えた製作陣は今の時代をしっかりと読んでいる。

02年から始まった長編アニメーション映画賞だが、受賞作品と製作会社は次のようになる。

02年『シュレック』(ドリームワークス)
03年『千と千尋の神隠し』(スタジオジブリ)
04年『ファインディング・ニモ』(ピクサー)
05年『Mr.インクレディブル』(ピクサー)
06年『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!(アードマン)
07年『ハッピー フィート』(ワーナー・ブラザース)
08年『レミーのおいしいレストラン』(ピクサー)
09年『ウォーリー』(ピクサー)
10年『カールじいさんの空飛ぶ家』(ピクサー)
11年『トイ・ストーリー3』(ピクサー)
12年『ランゴ』(パラマウント)
13年『メリダとおそろしの森』(ピクサー)
14年『アナと雪の女王』(ウォルト・ディズニー)
15年『ベイマックス』(ウォルト・ディズニー)
16年『インサイド・ヘッド』(ピクサー)
17年『ズートピア』(ウォルト・ディズニー)
18年『リメンバー・ミー』(ピクサー)

ピクサーが9回と抜きんでおり、ウォルト・ディズニーが3回で続く。1回で並ぶのがドリームワークス、スタジオジブリ、アードマン、ワーナー・ブラザース、パラマウントだ。『スパイダーバース』を製作したソニー・ピクチャーズ・アニメーションが、アカデミー賞を受賞するのは初めて。ハリウッドで認められた証といえる。しかも『スパイダーバース』は全米で1億8500万ドルを超え、ソニーアニメ史上最大のヒットとなっている。この成功を受け、同社では続編と、『スパイダーバース』に登場した女性キャラクターを主役にしたスピンオフ映画を企画している。

『スパイダーバース』のオスカー受賞は製作の中心を担ったクリエイターにもスポットをあてた。フィル・ロード(脚本、原案、製作)とクリストファー・ミラー(製作)だ。両者はソニーで『くもりときどきミートボール』や実写映画『21ジャンプ・ストリート』、ワーナーで『レゴ・ムービー』をヒットさせた実績の持ち主だ。『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の監督を途中で降板させられ、ミソをつけた2人だが、『スパイダーバース』で汚名返上を果たした。(文:相良智弘/フリーライター)

『スパイダーマン:スパイダーバース』は3月8日より全国公開される。

相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。

INTERVIEW