阿部寛、一番苦手なドラムに挑戦した結果、気持ちが逆転「機会があったら買いたい」

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映画『異動辞令は音楽隊!』が8月26日に公開を迎え、東京・六本木のTOHOシネマズ 六本木ヒルズにて初日舞台挨拶が開催。主演の阿部寛をはじめ、清野菜名、磯村勇斗、高杉真宙、モトーラ世理奈、内田英治監督が登壇し、本作にまつわるトークでイベントを盛り上げた。

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阿部寛、猛特訓したドラムを「買おうかと思った

映画の中で一番好きなシーン」や「撮影で一番苦労したシーン」について阿部は、好きなシーンとして自身が演じた成瀬が「段階を踏まえて、だんだん音楽を好きになっていくところ」が好きだと語り「教会に練習をしに行って、清野が演じる来島が泣いている姿を見て、このあたりから徐々に展開が変わっていきますが、そこは透明感があってすごく好きです」と明かした。

その清野は阿部との共演をふり返って「どのシーンの合間でも、ずっとドラムのスティックを持って練習をされていて、その姿に勇気をもらえたし、すごくカッコいいなと思えました」と語る。

阿部はゼロからドラムを練習したことで、これからもドラムを続けたいという気持ちが芽生えたようで「(撮影が)終わった時、一瞬、(ドラムセットを)買おうかと思ったけど、家に置けないし…。いまだに悩んでます。機会があったら買いたいなと思ってます。せっかくやったんで」と強い思いを語った。

ちなみに清野の一番のお気に入りのシーンは、クライマックスでの全員での演奏のシーン。「撮影の前にも、みんなで集まって練習してました。撮影前は緊張して『演奏する人たちはこういう気持ちになるんだ…』と緊張感とワクワク感があり、会場を包む、(人々の心を)ひとつにする音楽の素晴らしさ感じたシーンで、大好きです」と充実した表情を見せた。

モトーラもこのシーンについて「みんなで演奏して表現して、音楽の力をブワーッと感じました」と大好きなシーンだと明かしたが、一方でフラッグを回すパフォーマンスに関しては、落としてはいけないという不安もあったそうで「あの日の撮影が終わるまで、ずっと手に汗を握っている感じでした…」と苦笑交じりに語っていた。

また、磯村は好きなシーンとして「冒頭のシーンで、TVでバイきんぐさんのコントが流れてるんですけど、あれが気になって…。なぜバイきんぐさん…(笑)? 監督なりの狙いがあるのかなって気になりました」とこの場で監督に質問! 内田監督は「なかなか難しい質問ですね(笑)。普通の日常に流れているお笑いとかバラエティがいいなと思ったんですが、単純に(バイきんぐが)好きってだけです(笑)。悩んだ時は、なるべく自分の好きなものを使うようにしています」と明かした。

高杉は「阿部さん演じる成瀬さんが、初めて音楽隊が練習する教会に来るシーンが好きです。雑多な感じがあって、これから音楽に出会っていくという感じが好きだし、卵のパックが並んでいるのにも感動しました」と語った。高杉に阿部の印象を尋ねると「背が高い(笑)!」とひと言。「僕は斜に構えた役で、阿部さんに突っかかることが多かったので、(阿部に)近づいた時は『来た!』って緊張感が走る感じがありました」と述懐する。

阿部も高杉が触れたシーンについて「僕も好きです。(成瀬のような)こういうキャラの人に対して、(高杉らが)反抗してくるのが好きですね。『よく来てくれた、若いのに』って思ってました(笑)」と嬉しそうに振り返った。

磯村勇斗、“毛穴から感情を出してくれ”の指示に混乱

一方、苦労したシーンについて、阿部はラスト近くでの磯村とのやりとりについて「監督が(磯村がセリフを言うところを)何回も粘って、10テイクを超える数をやったんです。僕のほうがだんだん緊張してきて、(磯村に対して)『頑張れ』という顔になってきて(笑)、『抑えなきゃ! 自分の芝居に入んなきゃ!』って思っていました」と意外な苦労を明かす。

このシーンについて磯村は「1回目の芝居の後で、監督から『毛穴から感情を出してくれ』という演出をいただいて(笑)、『“毛穴から”って初めて言われたな…。どうやって…?』と混乱しました。でもずっと阿部さんが目の前で芝居を受けてくださって、それを感じて、最終的にああいう芝居になりました。なかなか何回もやらせてもらえる現場ってないので、内田組は素敵だなと思いました」と感謝を口にする。大先輩の阿部を前に10回を超えるテイクでさぞや精神的にも大変だったかと思いきや「最初は『阿部さん、申し訳ないです』という気持ちだったんですけど、後半はそれどころじゃなくなって、まわりが見えなくなって『ヤバイ!ヤバイ!』と焦っていました(苦笑)」とふり返っていた。

高杉は、苦労したシーンについて「成瀬さんのお母さんを演じた倍賞(美津子)さんをパトカーに乗せて、運転するシーンは緊張しました!」と明かす。「普段、運転はあまりしないので『倍賞さんを乗せて運転するのか!』って。倍賞さんは『事故ったときは事故った時よ!』って(笑)。カッコいいなと思いました」と語ったが、内田監督からは「(運転したのは)5メートルくらいですけど(笑)!」とツッコミが飛び、会場は笑いに包まれた。

内田監督は、この実力派・個性派の面々を見事に束ね上げたが「ちょっと後ろめたかったんです…」と告白。「僕が想定した演奏にまで持っていくのって、メチャクチャ大変なんです。阿部さんも清野さんも、すごく大変そうに毎日練習されていて。何もやっていない自分が後ろめたかったです(苦笑)。自分で脚本を書いといて、最後の演奏シーンを撮った時は普通に感動していました。“ミッション・インポッシブル”というか、楽器をやったことのない人たちで合わせるのは『不可能なんじゃないか?』と言われてたので、それが出来て感動しました」とキャスト陣をねぎらう。“ミッション・インポッシブル”に掛けて、司会者から「阿部さんがトム・クルーズということですね?」と振られると内田監督は「そうですね」と笑みを浮かべ、会場からは拍手がわき上がった。

阿部寛、一番苦手意識強いドラマを叩く役を受けた理由は?

また映画にちなんで「なんで私(俺)が?」と思った経験について語ってもらうトークでは、阿部と清野はやはり、本作での楽器に挑戦を挙げた。阿部は「なんで俺にドラム」と書いたフリップを掲げ「楽器が苦手で、ドラムが一番苦手意識が強かったんです(苦笑)。自分に絶対に来てほしくない役だったので『なんで俺が?』と思いましたが、内田さんも音楽映画は初めてだったので、一緒に挑んでいけたら楽しいなと思ってお受けしました」と明かした。

内田監督は阿部にドラムを叩く役をオファーしたことについてもともと主人公はサックスかドラムかトランペットと思ってたんですが、阿部さんにお願いするとなったとき、ドラムだろうと思いました。ガタイが迫力あるし、阿部さんは叩いている感情が芝居に出てきて、顔が好きでした」と称賛する。

同じく「なんで私がトランペット?!」と書いた清野は「高校生の頃からギターを独学でやっていて、ドラムも習ったりしてたけど、吹く楽器を経験したことがなくて『何でトランペット?』と思いました。でも、いろんな音が出るようになって、すごく楽しくなってきて、もっとやりたいなってって気持ちになりました」と苦労しつつもトランペットを楽しんだよう。清野の演奏についても内田監督は「清野さんは完璧主義で、ちゃんとやりたいというひと。(演奏シーンは楽器を持つ)手元がバレるので、ほぼ完璧にやらなくてはいけなくて、最後のソロは音楽をやってる人が不可能だと言うくらい、難しいシーンでしたが、ちゃんとやっていて脱帽です」と称えた。

磯村は学生時代のバスケ部での「なんで俺が?」の体験を告白。強豪校を相手に、自分よりも背の高い味方のプレイヤーがいるにもかかわらず、なぜか磯村が相手の背の高いプレイヤーをマークするように指示されたそうで「阿部さんくらい背の高い相手で、ジャンプしても全くボールに届かなかったのは忘れられない思い出です…」と苦笑交じりに明かした。

モトーラも学生時代の思い出で「学級委員に選ばれた」と「なんで私が?」エピソードを披露。「小学校の時に、投票で選ばれてしまって、全然、みんなをまとめるキャラじゃないのに、なんで私が学級委員に?って思いました。でも、意外とやってみたら、学級委員しか集まれない集まりとかがあったりして楽しかったです」とニッコリ。ちなみにこの日の登壇陣では、高杉、清野、内田監督も学級委員の経験があるそうだが、自ら立候補したという高杉、清野に対し、内田監督は「選ぶ日にズル休みしたら、次の日に学級委員に…(苦笑)」と明かし、笑いを誘っていた。

高杉真宙は坊主役を熱望!

高杉は「坊主になれない」という苦悩(?)を吐露。10代の頃から坊主頭にしたくて「取材でも言い続けてるんですけど、なんでか坊主の役が来ないんです。なんで俺が坊主になれない!? なりたいんですよ!」と熱く訴える。阿部はそんな高杉に「(坊主頭が)似合いそう」と語り、内田監督は「じゃあ次の映画で!」と即オファー! 内田監督が「でもオファーしたら、『坊主は無理ですね」って言われそう。よくあるパターンですね(笑)」と疑いを挟むも、高杉は「喜んでやりますよ!」と食いついていた。

最後の締めの挨拶で、内田監督は「日本は音楽映画が少ないので、もっと増えたらいいなと思います。音楽って、コロナ禍のつらい時とかに勇気をもらえたり、気持ちが楽しくなるので、ぜひ多くの人にこの映画を観てもらいたいです。一緒に応援してください」と呼びかける。

阿部は「この映画をやって、いろんな挑戦がありました。最初は何で内田さんがこういう音楽映画を撮るんだろう? と思いましたが、内田さんの挑戦もあり、エンタテインメントとして笑って泣けたりする映画なんですけど、内田さんらしい人間ドラマ、繊細な部分も含まれていて、非常に好きな塩梅になっています。僕は、試写会で自分が知らないうちに涙が出たというのは初めてのことでした。『なんで俺はこんなに感動しているんだろう?』と。彼(成瀬)が変わっていく瞬間に感動しました。人生、何度でも挑戦できるし、ステージを変えても生きていける――それは僕のような年齢の人間だけでなく、若い人もそうだと思います。いま、生きづらさを感じている人もこの映画にヒントがあると思うので、ぜひ観ていただきたいです。応援してください」と語り、会場は温かい拍手に包まれ、舞台挨拶は幕を閉じた。