『カジノ・ロワイヤル』から続く物語

通常、007シリーズは単独の物語だが、ダニエル・クレイグ版ボンドは物語がつながっている。

『カジノ・ロワイヤル』(06年)のボンドは殺しのライセンス「00」を得たばかりの駆け出し。悪役ル・シッフルがテロ資金を稼ぐため参加したポーカーゲームにボンドも参加。ボンドの監視役として英国政府から送られてきた金融活動部のヴェスパーと恋仲になるが、ラストで彼女はボンドを救い自らが犠牲となる。

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『慰めの報酬』(08年)はシリーズで初めて、前作のラスト直後から物語がスタート。ヴェスパーを裏で操っていたミスター・ホワイトを手掛かりに、彼の背後にある組織を探る。

スカイフォール』(12年)は前作と直接物語はつながっていないものの、シリーズでおなじみのQとマネーペニーが初登場する(マネーペニーは映画のラストでMの秘書になる)。Mを演じるジュディ・デンチがラストで亡くなり、レイフ・ファインズが新たなMとなる。またボンドが幼少期の頃に住んでいたスコットランドの邸宅スカイフォールがラストの舞台となる。

『スペクター』(15年)は前作とつながっている。冒頭、ボンドはメキシコシティである任務に就くが、それは亡くなった前任のMからの遺言だった。前作で焼けた邸宅の残骸をマネーペニーから渡されそこにあった写真には少年時代のボンド、養父、そしてもう1人の少年が写っていた。ショーン・コネリーが初代のボンドを演じていた頃に度々登場していた悪の組織スペクターが復活。クリストフ・ヴァルツが組織のボスを演じる。ラストでボンドは所属していた英国諜報組織MI6を引退する。

『ノー・タイム・トゥ・ダイ』も物語はつながっている。ボンドは引退から5年後、ジャマイカで穏やかな生活を満喫していた。彼の元にCIA出身の旧友フィリックス・ライター(『カジノ・ロワイヤル』『慰めの報酬』に登場)が助けを求めてやってくる。任務は誘拐された科学者を救出すること。やがて彼は人類に脅威をもたらす最新技術を保有する黒幕を追うことになる。ちなみに、ジャマイカは1作目『ドクター・ノオ』のロケ地であり、原作者イアン・フレミングが住んでいたこともある、シリーズにとってゆかりの深い場所だ。

今作の悪役を演じるのは『ボヘミアン・ラプソディー』のラミ・マレック。前々作『スカイフォール』ではハビエル・バルデム、前作『スペクター』ではクリストフ・ヴァルツとアカデミー賞受賞俳優が悪役を演じてきたが、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』でも同じ流れとなった。

『007』シリーズは現実の世界を踏まえて、悪役の背景や狙いに反映してきた。悪役を説得力あるものにするため、アカデミー賞を受賞するような演技力のある俳優に任せているようだ。

ボンドガールは3人。レア・セドゥーが前作に引き続きマドレーヌを演じるほか、ラシャーナ・リンチが殺しのライセンス「00」のコード名を持つエージェント、ノーミ役、謎の女性にアナ・デ・アルマスが扮する。「00」のコード名を持つエージェントとして女性が登場するのはシリーズ初。ハリウッドで近年重視される多様性を意識したキャラクター設定といえるだろう。

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