自信を持って「見てください」と言えます。
- 「ビッグコミックスピリッツ」に連載され大人気を博したベストセラーコミック「昴─スバル─」。待ち望まれていたその映画化が、ついに実現した! テンポよく描き出されていく、孤高の天才バレエダンサー宮本すばるの葛藤と成長──圧倒的なスケール感で宮本すばるを演じきった黒木メイサに話を聞いた。
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- ──ヒロインのどんな部分に魅力を感じましたか?
- 黒木メイサ(以下、黒木):原作を読んだ時、すばるの“影”みたいなものを感じたんです。孤独を抱え、友だちと居ても違う空気感に包まれている。映像にした時にもそれを残せたら……。そう思いました。
- ──どんな風に役作りをしていったのでしょうか?
- 黒木:撮影に入る前に、3カ月間、バレエのレッスンを受けました。私はバレエの経験がなかったので、とにかく毎日、必死で踊っていました。それはまるで、すばるのような生活で、それが自然と役作りにつながったのだと思います。
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- ──黒木さんのダンスは高い評価を受けていますが、そんな黒木さんにとってもバレエのレッスンは大変だったのでしょうか?
- 黒木:ダンスとバレエは別物です(笑)。他のダンスは、振付を習って音に合わせて踊るところから始まるのですが、バレエは身体作りから始まります。左に重心が傾いているとか、左肩が上がり気味などといった、身体についてしまったクセを取り除いていくんです。大切なのはとにかく基礎。爪がはがれたりするようなことはなかったのですが、足がすりむけたりするのは毎日でした。コンテンポラリーダンスやボレロを、ほとんど裸足で踊っていたので、足の裏がすごく強くなりました(笑)。
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- ──そんな大変なバレエですが、今回は天才の役ということで、一層大変だったのでは? レッスンを始めてどれくらいで自信がついてきたのでしょうか。
- 黒木:正直なところ、撮影が終わるまで自信がなくて、編集の間も不安でした。バレエは10年、20年踊っている人がほとんど。たかが3カ月、撮影期間も入れると半年踊ったくらいでは全然足りなくて。その時間内でできることは100%やり尽くしましたが、もっと時間があれば、もっと時間がほしいとずっと思っていました。できあがった作品を見るまでは緊張しっぱなしでしたが、作品を見てやっと肩の力が抜け、安心できました。そして、やっと今、自信を持って「見てください」と言うことができます。
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- ──すばるにとってバレエの師であり、母親のような存在でもある五十鈴を、桃井かおりさんが演じています。若い頃にバレエ留学するほどバレエに打ち込んでいた桃井さんと、バレエ映画で共演した感想は?
- 黒木:私もダンスをしていたので、バレエを3カ月練習したからといって、完全に習得できないことはよくわかっていました。でも、何もできない時を知っている方々は、「きれいに踊れるようになった」と誉めてくれます。そんな中で桃井さんは、「まだまだ」と言ってくれて、踊っているかいないかは立ち姿で分かるともおっしゃっていました。バレエをやっていた方のそういった意見を聞けたのはとてもありがたかったですね。桃井さんの足の使い方や指の動きは「さすが!」という感じでした。映画には桃井さんと一緒にバレエを踊るシーンもあるのですが、桃井さんが踊っている姿を間近で見られたり、一緒に踊れたことは私の誇りです。桃井さんはカメラが回っていないところでもいろいろ指導してくださったので、勝手に桃井さんに愛情を抱いていました(笑)。五十鈴と桃井さんが重なって見えて、桃井さんにはずっと五十鈴として接し、桃井さんもそうしてくれたので、演技の上でもやりやすかったですね。
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- ──上海でのロケもありましたが、大変でしたか? また、オフの日は何をしていたのですか?
- 黒木:大変でした(笑)。でも、桃井さんがおにぎりを作って現場に持ってきてくださったりしたので、そういった部分で癒されながら演じていました。ダンスシーンを基本的に撮影したのですが、撮影が終わった後も翌日のダンスシーンの練習をしたりという毎日だったので、体力的に辛かったですね。それから、オフはなかったんですよ(笑)。
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- ──大人っぽい風貌で、強いキャラクターを演じることが多いせいかしっかりして見えますが、実際の黒木さんはどんな方なのですか?
- 黒木:周りから、大人っぽい、しっかりして見えると言われているうちに、段々そうなってしまった感じです(笑)。でも、自分としてはまだまだ全然しっかりしていないと思っています。それから、黙っているだけでも怒っているように見られるみたいです。全然、怒ってないんですけど(笑)。
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- ──お友だちの堀北真希さんと黒木さんを比べると、一見、堀北さんが妹タイプで、黒木さんがお姉さんタイプに見えます。でも、本当は逆だったりするのでしょうか?
- 黒木:はい。彼女の方が断然、しっかりしています(笑)。彼女は3姉妹の長女で、私は4姉妹の末っ子。そこら辺で大きな違いが出ているのかもしれませんね。
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- ──原作には続編があり、映画も続編があるような終わり方に思えましたが……。
- 黒木:そういう話は全然聞いていません。もし続編があるとしたら、早めに教えていただきたいですね。バレエをゼロからやらなければいけないので(笑)。
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- ──4月から舞台『赤い城 黒い砂』が始まりますが、黒木さんにとって演劇とは?
- 黒木:舞台は、この仕事を始めたときから、年に1本はやり続けたいと思っていました。でも、2008年にはできなかったので、今年は舞台を2本くらいやっていく感じですね。
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- ──今後、やってみたいお仕事などはありますか?
- 黒木:舞台では、刀を振り回したりするような役も演じてきたのですが、映像ではそういうお仕事をしたことがないので、映像のほうでも、そういった役を演じてみたいですね。
(09/3/19)
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くろき・めいさ
1988年5月28日生まれ。沖縄県出身。04年につかこうへい演出の舞台に主演し、デビュー。05年『同じ月を見ている』で映画デビュー。ドラマ『風のガーデン』(08)など映画、ドラマ、舞台で幅広く活躍。

『昴─スバル─』
2009年3月19日より渋谷東急ほかにて全国公開
(C) 2009『昴─スバル─』製作委員会

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