英国アカデミー賞で人種差別用語が放送 トゥレット症候群による発声、BBCが内部調査へ

#BAFTA#トゥレット症候群#障がい

BBCより
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観客席マイクが拾った発声 BBCが編集せず放送、批判が拡大

22日(現地時間)、ロンドンで行われた第79回英国アカデミー(BAFTA)賞授賞式で観客席から人種差別用語が叫ばれ、そのままBBCの中継で放送される事態が発生し、波紋を広げている。

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問題の発声は、俳優のマイケル・B・ジョーダンとデルロイ・リンドが視覚効果賞のプレゼンターとして登壇した直後に起きた。アフリカ系である彼らが賞の紹介を始めるとすぐ、観客席から人種差別的な言葉が叫ばれた。声の主はトゥレット症候群の啓発活動を行い、自身の半生を描いた映画『I Swear (原題)』で複数部門にノミネートされていたジョン・デヴィッドソンだった。

トゥレット症候群は神経発達症の一つで、運動チックや音声チックが反復的に生じる。患者の中には社会的に不適切な語句を発する症状(汚言症)を伴う場合があるが、これは本人の思想や意図を反映するものではないと医学的に説明されている。

授賞式の司会を務めたアラン・カミングは事前に、「強い攻撃的な言葉が聞こえる可能性がありますが、トゥレット症候群による不随意のチックであり、本人の意思ではありません」と観客に説明していた。

不意に人種差別的スラング(いわゆるNワード)を投げつけられたジョーダンとリンドは心得ていたとはいえ、一瞬凍りついたが、表情を変えずに淡々とプレゼンターの役目を果たした。

会場のロイヤル・フェスティバル・ホールでは観客席に複数のマイクが設置されており、デヴィッドソンの席のすぐ近くにもマイクがあったとされる。そのため発声が会場内に響き渡った。BBCは約2時間の時間差で放送および配信した際、該当部分を編集でカットせず、直後から批判が広がった。

デヴィッドソンはアメリカの業界誌Varietyの取材に対し、「自分の前にマイクがありました。チックの可能性を承知の上で、あの位置に私を座らせるのが適切だったのか疑問です」と述べ、主催者側の配慮に問題があったとの認識を示した。デヴィッドソンは式の途中で、自身の症状が周囲に迷惑をかけていると判断し、退場したという。

これを受けて、英国アカデミー(BAFTA)とBBCはそれぞれ声明を発表。BAFTAは「ゲストを困難な状況に置いたこと、傷ついたすべての人々に対して謝罪します」と表明し、BBCも放送対応に不備があったとして内部調査を開始した。両者はジョーダンとリンドの「尊厳ある対応」に謝意を示した。

リンドは授賞式後、Vanity Fair誌の取材に「私たちはやるべきことをやった」と述べた一方、「BAFTAの関係者からその後、直接の声かけがあればよかった」と語り、関係者の対応についての不満もにじませた。ジョーダンは公のコメントを出していない。

デヴィッドソンはVarietyのインタビューで、「チックは神経系の無意識の反応であり、信念とは無関係だ」と説明し、「私が口にした最も不快な言葉は、トゥレット症候群でなければ決して使わないし、完全に非難する言葉です」と述べた。また、ワーナー・ブラザースを通じてジョーダン、リンド、同様に不随意発言を浴びせられたと語った『罪人たち』の美術監督のハンナ・ビークラーに個別に謝意を伝えたとしている。

I Swea(原題)』は、主人公であるデヴィッドソンを演じたロバート・アラマヨが、ティモシー・シャラメやレオナルド・ディカプリオを制して主演男優賞を受賞し、同時にライジングスター賞も受賞、さらにキャスティング賞と3部門を受賞した。障害への理解促進を掲げる作品が評価された場で起きた今回の事態は、障害への理解、人種差別、放送倫理が同時に問われるものとなり、BBCの内部調査の結果が待たれる。

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