【映画興収レポート/7月】夏を制する『マレフィセント』ヒットに『アナ雪』も一役!

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『マレフィセント』
(C) 2014 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
『マレフィセント』
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7月公開作の1位は『マレフィセント』の47億円。公開3週目にスタジオジブリ『思い出のマーニー』とぶつかったが、週末興行収入で上回り3週連続1位。4週目に『GODZILLA ゴジラ』に抜かれたものの、配給元のディズニーでは「最終的に60億円を超える見込み」と発表。夏映画を制する勢いだ。

【興行トレンド】ハリウッド全体に影響を与えるディズニーの長期戦略

同作は『眠れる森の美女』でオーロラ姫に呪いをかけた邪悪な妖精マレフィセントにアンジェリーナ・ジョリーが扮し、呪いをかける裏側にあった物語を描く。なぜこれほどのヒットになったのか。まず大きいのが予告編効果だ。ディズニー作品なので、『アナと雪の女王』の上映館で予告編が流れていた。

宣伝では幅広い年齢層の女性に向けて、“究極の愛”の物語であることをアピールした。マレフィセントは暗いトラウマを背負っていたが、オーロラ姫の存在によって母性に目覚めて行く。暗い青春時代を送っていたが、母親になったことで輝きを取り戻したジョリーの生き様を重ね合わせたようなキャラクターだ。宣伝では彼女の生き様を徹底的に紹介し、それが映画の主人公と重なることをアピールした結果、大勢の女性客を集客できたようだ。ジョリーはオーロラ役のエル・ファニングと、自らの子どもたちと来日。ジャパンプレミアには2500人ものファンが詰めかけ、日本での人気の高さが表れた。主題歌『ONCE UPON A DREAM〜いつか夢で〜』に世界中で日本のみオリジナル歌詞をつけ、「究極の愛」をさらに印象づけたのも奏功した。歌うのは大竹しのぶだ。

2位はスタジオジブリ『思い出のマーニー』と『ゴジラ』の16億円。『ゴジラ』の方が1週後に公開されているので、最終的には『ゴジラ』の興収が上回りそう。少女2人が友情を育むというこれまでのジブリにはない作風で、『アナと雪の女王』と同じくWヒロイン。監督の米林宏昌は10年『借りぐらしのアリエッティ』で監督デビューし、興収92.5億円と大ヒットさせた実績がある。「夏興行の本命」と映画関係者の期待は高かったが、期待を下回る出足となった。ただし、産経新聞では「スタジオジブリ、製作部門解体。『マーニー』以降は新作お預け?」と報じられており、“最後のジブリ作品”として脚光を浴び、今後『マーニー』の動員が伸びるかもしれない。

一方、『ゴジラ』の方は来日したギャレス・エドワーズ監督や渡辺謙が数多くのメディアに出演してPRにつとめた効果が表れた。またNHK-BSで『ゴジラ』の誕生にまつわる特別番組を作ったり、過去のシリーズ9作を放送した話題性も注目度アップに貢献したと思われる。

4位は『ポケモン・ザ・ムービーXY/破壊の繭とディアンシー』と『オール・ユー・ニード・イズ・キル』の15億円。毎年恒例の『劇場版ポケットモンスター』は、11〜13年と続いた『ベストウイッシュ』に代わり、新シリーズがスタート。前シリーズは43.3億円→36.1億円→31.7億円と回を重ねるごとに勢いが鈍ってきた。新シリーズ一発目で再浮上を図ったが、公開後16日間で15億円は前作とほぼ同じ。やや物足りない出足となっている。『ポケモン』の中心客層である小学生の間では『妖怪ウォッチ』が大人気となっており、影響を受けているのかもしれない。

一方、トム・クルーズ主演作は日本で安定した興行成績をあげており、昨年は『オブリビオン』が興収13.1億円、『アウトロー』が11.3億円を記録。『オール〜』はこの2作を上回るヒットとなった。クルーズの来日はもはや珍しいことではないが、日本のライトノベルを映画化した話題性がヒットを後押ししたようだ。

なお『るろうに剣心/京都大火編』は8月1日に公開され、3日間で8億2000万円をあげた。前作の出足は、先行上映分も含めて5億6000万円。前作比146%という大ヒットスタートとなった。(文:相良智弘/フリーライター)

[7月公開作ランキング]
1位『マレフィセント』47億
2位『思い出のマーニー 』16億
2位『GODZILLA ゴジラ』16億
4位『ポケモン・ザ・ムービーXY「破壊の繭とディアンシー」』15億
4位『オール・ユー・ニード・イズ・キル 』15億
8月3日時点。ムビコレ調べ

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