【元ネタ比較】中編/原作の爽やかさが損なわれ残念。早見あかりの美しさも裏目に

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『百瀬、こっちを向いて。』
(C) 2014 映画「百瀬、こっちを向いて。」製作委員会
『百瀬、こっちを向いて。』
(C) 2014 映画「百瀬、こっちを向いて。」製作委員会

『百瀬、こっちを向いて。』
早見あかりの“美形すぎる”悲劇

ライトノベルを手がける作家・乙一が中田永一名義で発表した「百瀬、こっちを向いて。」。切なさとみずみずしさが詰まった恋愛小説として女性からの支持を得てベストセラーとなり、映画化が公開される。冴えない高校生・ノボルが主人公だが、往年の角川映画のイメージで“旬の美少女を主演にした映画化”を意図して製作され、ヒロインの百瀬役に抜擢されたのは早見あかりだ。

【元ネタ比較】『百瀬、こっちを向いて。』前編/切なく残酷な珠玉の恋愛小説を映画化

そう、“Z”が付く前のブレイク寸前のももいろクローバーを脱退した青色のあかりんだ。もともと歌は苦手で女優志望だったあかりんとしては願ってもないオファーだったろう。彼女は最近ロングヘアになっていたが、今回バッサリと45cmも切って、ちょうどももいろクローバーを脱退した頃のショートボブになって役に臨んでいる。三角関係で秘密裏につき合っている瞬先輩の本命彼女・徹子先輩はロングヘアで、対照的に百瀬は原作でもショートヘアの設定だから、当然の役作りだ。

しかも、原作で百瀬は“野良猫のような目つきの少女”とあり、あかりんはクリッとした大きなツリ目でまさに猫目。三角関係のカモフラージュとしてつき合っているフリをするノボルを振り回す、勝ち気で自由奔放な百瀬にピッタリ!と思えた。本編を見る前までは。

スクリーンのなかのあかりん演じる百瀬はナイーブで陰があり、まさに三角関係の日陰者といった印象だ。もちろん百瀬にはそれなりの陰が必要だが、“実は陰が垣間見られる”というぐらいの数滴のエッセンスでなきゃいけない。それに、ノボルに対してつっけんどんな口をきくが、あかりんがやると自由奔放というよりは乱暴でおっかなく響く。美形すぎるために迫力が出て、タッパもあるうえ、悲しいかな肩幅も広いためになおさら相乗効果となるのだ。群衆のなかにいると、学校で一番の美人であるはずの徹子先輩よりもひときわ目立つ美少女にうつってしまう。

あかりんの美し過ぎる点がアダとなるのは今に始まったことではない。“ももクロのクールビューティ”であったときも小柄なメンバーのなかで長身でスタイル良く美形のあかりんは違和感があり、他のメンバーが大股開きのヘンなダンスを一生懸命踊る姿がかわいいのに対し、あかりんは美しいがゆえに妙に迫力が出て痛々しい感じがした。

美しいからといって得するばかりではなさそうだ。百瀬役もクールな美少女よりはいきいきした普通にかわいい女の子のほうがしっくりくるだろう。わかりやすい例をももクロで挙げるなら、ももクロちゃんのアイドルを自称し、“勘違い国民的アイドル”を演じるピンク色の佐々木彩夏といったところ。もっと掘り下げて選ぶなら、テレビドラマ『悪夢ちゃんスペシャル』でも活躍を見せた、黄色の“みんなの妹”こと玉井詩織だ。あかりんに比べればピカイチの美少女ではないが、女子らしい隙があり、そこを自覚もしている小悪魔的な魅力も兼ね備えている。百瀬には小悪魔的なかわいいズルさが欲しい。そうでないと単にかわいそうなキャラに陥ってしまう。

あかりんには美形なだけに隙がないのだ。しかし、あかりんもクールにキメているだけでなく、ももクロの色物担当である紫色の高城れによりもヘン顔が得意で、トークもズバズバとできるクチだ。そのあたりを逆手にとり、美し過ぎる容姿を和らげてお転婆風にしたほうが百瀬として光ったと思うのだが。…後編へ続く(文:入江奈々/ライター)

『百瀬、こっちを向いて。』は5月10日より全国公開される。

【元ネタ比較】『百瀬、こっちを向いて。』後編/どんより暗い向井理

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