【あの人は今】不祥事もあったけれど…『シックス・センス』名子役の幸せな俳優人生

目にいっぱい涙をためて「I see dead people…」とすがるような声でブルース・ウィリスに訴えた『シックス・センス』(99年)から14年。死者が見える特殊能力を持った少年を演じ、11歳にしてアカデミー賞助演男優賞候補になったハーレイ・ジョエル・オスメントは、4月に25歳になった。複雑な感情の機微を表現する豊かな感性と演技力、そして愛らしい外見で一躍注目の人となった彼は子ども向け作品ではなく、『ペイ・フォワード 可能の王国』(00年)やスティーヴン・スピルバーグ監督の『A.I.』(01年)といった大作でも主演をつとめる活躍を見せた。

【あの人は今】『スタンド・バイ・ミー』の繊細少年がひげ面のオタク中年に変貌!

教師の母親と舞台俳優で演出も手がける父の間に生まれたハーレイは、4歳で「ピザハット」のCMに出演して子役デビュー。『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94年)ではトム・ハンクス扮する主人公の息子、フォレスト・ジュニアを演じている。03年の『ウォルター少年と、夏の休日』(03年)ではロバート・デュヴァル、マイケル・ケインという大ベテランの名優2人が演じる大伯父たちの家に預けられた少年を演じて堂々たる存在感を発揮したが、その後スクリーンからは姿を消した。

といっても、自身の姿を現さないだけで、ビデオ・ゲーム「キングダム・ハーツ」やアニメ映画『ジャングル・ブック2』(03年)、日米合作のテレビアニメ『IGPX Immortal Grand Prix』の主人公・タケシ役など、声優として活躍を続けていた。その一方でニューヨーク大学の芸術学部にあたるティッシュ・スクールに進学。『シックス・センス』のM・ナイト・シャマラン監督やマーティン・スコセッシ監督の出身校で学びながら、08年11月にはブロードウェイで、デヴィッド・マメットの舞台「アメリカン・バッファロー」でジョン・レグイザモらと共演、ヘロイン中毒の若者を熱演した。

実は大学入学前の06年にはロサンゼルスで飲酒運転とマリファナ所持で逮捕され、3年間の保護観察処分を受けた過去もあるが、アルコールやドラッグに溺れる深刻な状態までには陥らず、更生プログラムを修了後は問題を起こすこともなく現在に至っている。大学も10年に無事卒業し、インディーズ系の作品や短編映画など、実写作品にも復帰した。

近影を見ると、細面だった頬に肉がつき、往時の配列のままの顔の各パーツがセンターに寄ったような雰囲気。素直そうな表情は相変わらずで、それを活かして『Sex Ed(原題)』(14年アメリカ公開予定)では童貞ながら性教育を行う中学教師を演じている。ちょっとクセのあるコメディ作品が好きなようで、次回作はウィル・フェレル主演のテレビミニ・シリーズ『The Spoils Of Babylon IFC(原題)』。フェレル扮する架空のベストセラー作家の小説をドラマ化するという趣向で、ジェシカ・アルバやトビー・マグワイア、ヴァル・キルマーらもキャストに名を連ねる。テキサスの石油王の一家を主人公に家族の愛憎劇からスパイ絡みのサスペンスまで、とやたら壮大な仕掛けで笑わせるコメディになるという。ハーレイが演じるのはティム・ロビンス扮する石油王の不良息子。実力派たちと丁々発止でわたりあう姿が目に浮かぶようで、日本でもぜひ見られる日が来ることを願うばかり。

ハーレイの足跡をたどってみると、彼が本当に役者という仕事を愛していることがわかる。子役たちのなかには、自分の意思よりも周囲の大人の喜ぶ顔見たさに仕事をする子もいる。だが、ハーレイは本当に演じることが好きなのだ。ちやほやされて勘違いしたまま大きく道を踏み外すこともなく、一役者として生きる。若くして好きなことを見つけ、それを仕事にし、なおかつ楽しむ。つらいこともあるだろうが、類稀な幸せをつかんだ人なのではないだろうか。(文:冨永由紀/映画ライター)

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