「すれてないプロの役者」三池崇史監督が加藤清史郎の魅力と才能を語る

三池崇史監督
三池崇史監督
三池崇史監督
『忍たま乱太郎』
(C) 2011実写版「忍たま乱太郎」製作委員会
三池崇監督

Vシネマから『十三人の刺客』『ヤッターマン』そして新作『一命』など、縦横無尽にジャンルの垣根を超えて作品を生み出し続ける三池監督。今回、彼が選んだ題材はコミック&TVアニメとして広く親しまれている、忍者のたまごたち(忍たま)の日々を綴る『忍たま乱太郎』。その選択は、驚きとともに、「彼なら何かやってくれるはずだ」との期待も持たせる。

主役の乱太郎には今や知らぬ人のいない人気子役、加藤清史郎。「『忍たま乱太郎』を撮るには『忍たま乱太郎』のような欠点がなければならない」と語る三池監督が、加藤の魅力、『忍たま乱太郎』の世界観、そして“子ども”が持つ強さと儚さを語った。

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──『忍たま乱太郎』の実写化は、やはり加藤清史郎くんがいてこその企画成立だったと思うのですが、実際に加藤くんを演出されてみて、彼の魅力はなんだと感じましたか?
三池:普通の少年ということですね。小さな役者じゃなくて。ご両親の育て方なのかな。普通のいい奴。マニュアルで動かされているんじゃなくて、普通に自分の感覚で生きている。彼の演技が好きというよりは、加藤清史郎が幸せになるといいな、みたいな。愛情を持っちゃうんですね。

──それは結構、大切なことですね。
三池:そうなんです。ただ、みんなに好かれて可愛がられるというのともまた違うんですよ。感覚的には天才的なところもありますし。

──例えばどんな?
三池:そのシーンがなんのためにあるのか、映画の1行1行にはきちんと意味があるというのを分かっている。例えば、ここできり丸と会ったときに笑うのは、なぜなんだろうと考える。現場では、ワイヤレスで、1人ひとりの声を聞くことができるんですが、本番前に、「今の笑顔じゃだめなんだ。こうだったんだから、そういうことじゃないんだよな」とか呟いてるんですよ(笑)。で、相手にも「今のはこうだから、こうなんなきゃだめなんだよ」なんてことを言っている。

──スゴイですね。
三池:プロの役者ですよ。すれてないプロの役者ですから、非常に強いです。ピュアな役者。彼の言っていることを聞いているとね、正論ですよ。おっしゃる通り(笑)。

──ちなみに三池監督は、演出の際、実際に表情を作って役者に指導されるとか。
三池:それは僕のクセで(笑)。要はデフォルメすべきところと、そうじゃないところを明確にするためにね。特に『忍たま乱太郎』はギャグものなんで。ポイントが絞れてないと、グラグラっとなっちゃう。だからこのくだりのピークはこの辺かな、ということを伝えようとするとそういう表情になっちゃうんです(笑)。

──実写化にあたって、大切にされたことは何でしょう。
三池:『忍たま乱太郎』のような映画をやるには、『忍たま乱太郎』のような欠点がなくてはならないだろうと。

──欠点、というと?
三池:もともと主人公が落第生で、立ち直る話ではなくて、ダメでもいいじゃんっていう話。作品も後半になって良くなってっちゃいけないんです。いい映画じゃダメなわけ。ダメな映画だけどいいよねっていう(笑)。感動しちゃダメなんです。勝手にたまたま感動しちゃうのはいいんだけど。
で、それは基本、原作と一致するわけです。原作をリスペクトしていることが原作者に伝わって信頼関係が出来上がれば、あとはこちらでキャラクターを預かれる。平幹二朗がやる学園長はこれだっていう形でできるわけですね。作品を愛していることが伝わりさえすれば、何をしても許されるわけです。

──その平さん演じる学園長をはじめ、古田新太さんの食堂のおばちゃんなど、実写版は原作やアニメとは少々違ったキャラクターに生まれ変わっているものもありました。キャスティングで心がけられた点は?
三池:僕の場合、何かを期待して呼ぶというより、どうなるかわからないっていうところに魅力を感じてキャスティングするんです。

──特に平さんの学園長は、おそらく往年のファンからは考えられないだろう凄いことになってました(笑)。
三池:平さんは大ベテランで、しかも二枚目。でもいま平さんの一番の強いところは、大きな病気をして、死というものについてリアルに感じている人だということ。過去に作ってきたものを大事にして、その範囲で自分を守ろうとする人か、それとも、自分はまだ何もやっていません、これからだよって思える人か。その違いは大きい。
僕は割と後者であろう人を選んでいるつもり。普通やらないよねっていうものを投げて、やるって返事が来て。「え? ホント、まじ!?」って。こっちから頼んだのに(笑)。「かっこいいねぇ、やっちゃうんだ」って(笑)。

──ところで、監督はこれまでにも子どもをモチーフにしてきていますが、監督にとって“子供”とは?
三池:大人がなくしてしまったものを全て持っている存在。若いっていうだけで勝ってる。可能性があるし。社会において大人になるっていうことはつまらない人間になることだという。

──でもここに出てくる大人たちは決してつまらなくないですよね。
三池:役者は、人の魅力、輝いているところに特に敏感なはずなんです。勝負しなきゃいけないけれど、子どもには勝てないってわかってる。でも役には立てるかもしれない。共存できるかもしれない。そこにかけるんです。

──観客には本作のどんなところを楽しんでもらいたいですか?
三池:子どもたちが、『忍たま乱太郎』という奇妙な世界で扮装して楽しんでいる。そのワクワクした感じを見て、あ、いいね、『忍たま乱太郎』。みたいに気楽に思ってもらいたいね。映画って簡単そうだなって感じてもらえるといいかなって。これだったら、オレでもできるぞって。学園祭? 誕生日のプレゼント? じゃあ、なんか映画を作ろうよ、みたいな。今、機材は身の回りにあふれているわけだから。

『忍たま乱太郎』は7月23日より新宿バルト9ほかにて全国公開される。(原稿・写真:望月ふみ)

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