香川京子、名作『東京物語』や原節子、小津安二郎監督について語る

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香川京子
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世界中の映画監督やファンから今なお愛され続けている名匠・小津安二郎監督。彼の生誕115年にあたる今年、4Kデジタル修復版特集上映「小津4K 巨匠が見つめた7つの家族」(配給:松竹メディア事業部、KADOKAWA)が6月23日より角川シネマ新宿にて幕を開けたが、これを記念し、5月のカンヌ国際映画祭にて4Kデジタル修復版でワールドプレミア上映された『東京物語』に出演する香川京子が同日同所でトークショーを行った。

FIAF賞受賞の香川京子が外国人記者クラブで会見、巨匠監督との思い出を語った

上映後の余韻冷めやらぬ中、芸能生活70周年となる今もなお、凛とした美しさと品格がある香川が登場すると、客席から割れんばかりの拍手が。4Kデジタル修復版を見て「今はもうなくなってしまった尾道の瓦屋根がピカピカと輝いていて感激した」と言う香川は、「『東京物語』の尾道のシーンは実は2カットしか出ていないんです、あとは大船のセットで撮影した」と当時の撮影風景を思い出し、「現場に入るとカメラが低い位置にどんと据えられており、小津監督は自分の決めたフレームの中に人物や物をはめ込んでいくようでした」と振り返った。

香川の義理の叔父は映画プロデューサーの永島一朗氏。「叔父さんに連れられて行った銀座の東興園でたまたま小津監督に挨拶することがありました。その後、撮影所の近くの料理屋で改めて小津監督と話をした。『あれが面接だったんでしょうね』」と笑う香川。そこから『東京物語』への出演が決まったという。「でも、撮影中もまだ若かったこともあって、監督さんとお話しする機会はなかなかなかった」そう。

そんなある日、小津監督と話すチャンスが来た。「照明の準備を待っている間だったでしょうか、小津監督が『僕は世間のことにはあまり関心がないんだよと』話していました。私自身が社会人の1人として世間のことをもっと知っていこうと自覚したところだったから、監督さんの言葉の意味がよく理解できないまま何十年か経って、小津監督の『人間を描けば社会のことは自然に出てくる』という言葉を知り、未だにとても印象に残っているんです」と当時のことをしみじみと思い出していた。

オシャレと評される小津監督のファッションについて聞かれると、「小津監督はいつも綺麗な真っ白なシャツを着こなしていた、明るい白のイメージが強いです」と回答。原節子については「『東京物語』に出演したのは小津映画で見るような女性とはまた違って、お酒も、特にビールがお好きだったようです。とっても明るい方で豪快に笑う元気で楽しい方だった。飾らない人でとても優しかった」と振り返った。また、原とは『東京物語』撮影時に旅館での部屋が隣だったようで、「嬉しくて遊びに行かせてもらったりした。実は小津監督さんのことはそんなに知らなくて、原さんと共演できることが本当に嬉しかったんです」と笑顔で語った。

また、笠智衆については「特に芝居をしなかったとしても、そこにいてくれるだけで安定感と安心感を与える、すごい存在感のある人物だった」とコメント。さらに「『東京物語』撮影当時、実は40代で70代の父親役を演じていた。すごいですね」と笠について語ると、「背中に布団を入れて、腰が曲がった感じを出して、自分と5、6歳しか違わない杉村春子さん、山村聰さんと親子役を演じていたんです。妻役の東山千栄子さんは笠智衆さんより14歳年上、それで夫婦として演じていたんです」と続け、会場の驚きを誘っていた。