『ハン・ソロ』映画だけじゃない。途中降板した監督たち

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若き日、恋敵の監督を追い出して自らメガホンを握ることとなったクリント・イーストウッド監督
若き日、恋敵の監督を追い出して自らメガホンを握ることとなったクリント・イーストウッド監督

若き日のハン・ソロを主人公にした映画ではフィル・ロード&クリストファー・ミラーからロン・ハワードに監督がバトンタッチされた。『アントマン』ではエドガー・ライトからペイトン・リード、『ワンダーウーマン』ではミシェル・マクラーレンからパティ・ジェンキンス。「クリエイティブ面の相違」を理由に監督が交代するケースはハリウッドではしばしばある。実写映画だけではなく、ピクサーアニメでも『レミーのおいしいレストラン』『メリダとおそろしの森』『アーロと少年』で監督が交代している。

分配金、クレジット表記はどうなる? 今後も続く『ハン・ソロ』映画の監督降板の影響とは?

これまでの監督交代劇で有名なケースをまとめた。

『風と共に去りぬ』
ジョージ・キューカーは撮影3週間後にクビ。脚本内容でもめ、クラーク・ゲーブルと折り合いが悪かったことからビクター・フレミングに交代。

『マネーボール』
当初はスティーブン・ソダーバーグが監督で企画が進む。彼がドキュメンタリータッチの撮影や、実在の人物のインタビューを交えたいと考えて、スタジオやプロデューサーと意見が対立。ベネット・ミラーに交代。

『迷い婚』
脚本を手がけたテッド・グリフィンが初監督の機会を得るが、主演のジェニファー・アニストンやケビン・コスナーと折り合いが悪く、撮影2週間で降板。ロブ・ライナーに交代。

『スパルタカス』
主演・製作総指揮のカーク・ダグラスがアンソニー・マン監督と撮影後すぐに折り合いが悪くなり、降板。スタンリー・キューブリックに交代。

『スーパーマン』
リチャード・ドナー監督が『スーパーマン1&2』を同時に撮影。1作目のポストプロダクション作業をしなくてはいけなかったため、2作目の半分以上を撮影したものの降板。リチャード・レスター監督が代わり、半分以上を再撮影。結果、レスターが2作目の単独の監督クレジットを得た。

『オズの魔法使』
2〜3週間を撮影した後、フッテージを見たプロデューサー陣がリチャード・ソープ監督の仕事に不満を持ち、ジョージ・キューカー監督をクリエイティブ・アドバイザーに雇う。キューカーは『風と共に去りぬ』を監督するため『オズ〜』の仕事を離れ、ビクター・フレミングが監督を引き継ぐ(その後、フレミングは『風〜』の監督も引き継ぐこととなる)。

『アウトロー』
フィリップ・カウフマン監督とクリント・イーストウッドで撮影中にぶつかり、イーストウッドが勝ってカウフマンを追い出し、自ら監督の座についた。事の発端は共演のサンドラ・ロックをお互いが同じ日にデートに誘ったことだとか。ちなみに、DGA(Directors Guild of America/全米監督組合)にある「製作中の映画に既に携わっているスタッフや俳優を監督にしてはいけない」ルールは今作の監督交代劇から生まれており、「イーストウッド・ルール」とも呼ばれる。(文:相良智弘/フリーライター)

相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。