ちょっと微妙な小松菜奈と菅田将暉の中学生役…

#溺れるナイフ#元ネタ比較#週末シネマリサーチ

『溺れるナイフ』
(C)ジョージ朝倉/講談社 (C)2016「溺れるナイフ」製作委員会
『溺れるナイフ』
(C)ジョージ朝倉/講談社 (C)2016「溺れるナイフ」製作委員会

…前編「小松菜奈と菅田将暉の共演と聞いて心が躍った!」より続く

【元ネタ比較】『溺れるナイフ』中編
ローティーンの危うさがキモなのだが…

思春期の痛いほど鮮烈な恋愛を描き、絶対的な人気を誇るジョージ朝倉原作の少女漫画『溺れるナイフ』が映画化された。男女共にオーラのあるヒロインたちを演じるのは小松菜奈と菅田将暉だ。これは期待していいかも! うん、うん、それで、それで? 小学生時代はいったい誰が演じるの??とわくわく胸を膨らませた。

だって、この作品はここがキモ。東京でモデルをしていたヒロインが田舎町にやってきて、地元のカリスマ少年・コウと運命的な恋に落ちるところから始まるストーリーだが、この恋の始まりは小学生なのだ。この年齢設定が作品をヒットに導いたといっても過言ではないと思う。

小学校高学年と言えば、子どもではあるが、まるっきりの子どもではない第二次性徴期にさしかかった年頃。男女間の恋愛感情も自覚できるだろう。

ヒロインの夏芽は長身で手足も長く、モデルとしても人気の高い美少女。コウは古い土着的な慣習が残る村の大地主の跡取りで、野性的な魅力があって、大人も一歩引いて手出ししてこない特別な存在。そんな2人はクラスメイトの子どもたちに比べてやけに大人っぽく、子ども同士のおままごと恋愛には到底見えない。コウが仕掛けてくるキス未遂シーンにもドキッとさせられるぐらいだ。

やがて中学生となるが、まだまだ大人と子どものはざまのローティーン。ある事件が起こるが、夏芽が男から性的対象と見られているという事実そのものが痛々しく背徳感があって胸をザワザワさせる。

彼女たちは高校生に成長し、なおも物語は続くが、小・中学生時代のエピソードはこの物語に置いて重要で、ローティーンの鮮烈さや危うさがあってこその作品だと思う。

さてさて、映画化ではどのようになったかというと、実は夏芽とコウの出会いからして小松菜奈と菅田将暉が演じているのだ。と言っても、まさか2人が小学生に扮するわけではない。年齢設定を中学生へと上げて、小松菜奈と菅田将暉が中学生を演じているのだ。

これが・・・うーん、なんとも微妙。滑稽なほど「ナシ!」でもないが、中学生というには無理がある。それに、とにかく、大人と子どものはざまのドキドキ感が皆無。菅田は絶食して役作りしたと聞くが、それでもやっぱり大人は大人。キスシーンにしても大人と大人のキスシーンだし、小松菜奈が性的対象に見られても「でしょうね」としか思えない。

また、コウは思春期特有の万能感というか、自分が絶対的な力を持っていると信じていて、それが周りを惹きつける力にもなっている。しかし、事件のために所詮は一介の子どもである現実を味わって人生初めての挫折を経験し、夏芽との仲もこじれていく。

この思春期だから招いてしまう流れを大人である菅田将暉が演じてもなかなか伝わって来ない。うまくいかなくて単にいじけちゃったヤツというぐらいにしか見えないのだ。(後編へ続く…)

後編「原作の賛否両論ラスト、映画ではどう描かれた?」へ続く…

『溺れるナイフ』は11月5日より全国公開される。

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