『国宝』が席巻、『タンゴの後で』『10DANCE』も注目集める 2025年注目記事まとめ

#10DANCE#28年後...#タンゴの後で#でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男#ぼくらのふしだら#国宝#黒川の女たち

(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会
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『タンゴの後で』
『28年後...』
『黒川の女たち』
Netflix映画『10DANCE』
『ぼくらのふしだら』
『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』
(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

2025年、映画は単なるエンターテインメントの枠を超え、社会の歪みや人間の本質に鋭く切り込んだ。

大ヒットを記録し国際映画祭でも高い評価を受けた『国宝』を筆頭に、表現の自由と暴力、身体と権力の関係を問い直す作品が相次いで話題に。本記事では、『国宝』を軸に、『10DANCE』や問題作・話題作を含む、2025年に注目された映画記事をまとめて振り返る。

傑作と呼ばれた映画の裏で何があったのか?『タンゴの後で』が話題に 

70年代最大のセンセーションを巻き起こした『ラストタンゴ・イン・パリ』(72年)。傑作と呼ばれた映画の裏側で何があったのか? エンターテインメント業界における権力勾配、搾取について鋭い視線を投げかけた問題作『タンゴの後で』が大きな注目を集めた。

2024 (C) LES FILMS DE MINA / STUDIO CANAL / MOTEUR S’IL VOUS PLAIT / FIN AOUT
2024 (C) LES FILMS DE MINA / STUDIO CANAL / MOTEUR S’IL VOUS PLAIT / FIN AOUT

19歳のマリア・シュナイダーは気鋭の若手監督ベルナルド・ベルトルッチと出会い、『ラストタンゴ・イン・パリ』で一夜にしてトップスターに駆け上がる。しかし、48歳のマーロン・ブランドとの過激な性描写シーンの撮影は彼女に苛烈なトラウマを与え、その後の人生に大きな影を落していく。本作は「70年代最大のスキャンダル」と言われた作品の舞台裏で一体何が起きていたのか? 映画の撮影現場での問題について声を上げた最初の女性の一人である、シュナイダーの波乱に満ちた人生に焦点を当てる。

予告編では、才能豊かな19歳のマリアが当時、新進気鋭の監督であったベルトルッチから性的に大胆な映画を「芸術的に撮る」と説得され、『ラストタンゴ・イン・パリ』に出演。マリアの体当たりの演技、そして大スターのマーロン・ブランドとの共演は、彼女を一瞬にしてスターダムに伸し上げるが、それは彼女の望んだ形ではなかった。70年代当時、「芸術か? 猥褻か?」と話題になった作品は、本作では「芸術か? 暴力か?」と現代の我々に問いかける。

・過激な性描写シーンでトラウマに…「70年代最大のスキャンダル」と言われた作品の裏で一体何が起きていたのか?

サバイバル・スリラー映画『28年後』の衝撃的な場面写真

アカデミー賞受賞監督のダニー・ボイルとアカデミー賞ノミネート脚本家アレックス・ガーランドによるサバイバル・スリラー映画『28年後』の人間と感染者たちの姿を映し出した日本版特報と場面写真が注目を集めた。

『28年後...』
『28年後...』

人間を一瞬で凶暴化させるウイルスがロンドンで流出し、未曾有のパンデミックにより、文明は崩壊。<感染者>は人間性をなくし、人間ではないものに変わり果ててから28年。感染を逃れたわずかな<人間たち>の命がけのサバイバルが繰り広げられる。

場面写真は3点。感染を逃れた人間たち(アーロン・テイラー=ジョンソン、アルフィー・ウィリアムズ)が武器を片手に、何かから必死で逃げ惑う様子をとらえたカット、山詰みにされた人間の頭蓋骨を前に、顔も体も汚れまみれの男性(レイフ・ファインズ)の姿、さらに、あばら骨が浮き出るほど痩せこけた感染者(とみられる)の衝撃写真となる。本作で描かれる世界は、世界的パンデミックを経験したわれわれ人類に向けられた黙示録なのか? それとも——。衝撃的な場面写真にぜひ注目してほしい。

・ウィルスに感染し変わり果てた“人間”の姿が衝撃すぎる…パンデミックから28年後の世界描く『28年後』公開決定

戦時下の性暴力を記録したドキュメンタリー『黒川の女たち』

80年前の戦時下に起きた、語られてこなかった性暴力と犠牲の史実を描くドキュメンタリー映画『黒川の女たち』の公開が決定し、その内容に注目が集まった。

(C)テレビ朝日
(C)テレビ朝日

本作は、日本の敗戦間際の満洲で、岐阜県から渡った黒川開拓団が生きて帰国するため、敵であるソ連軍に助けを求め、その見返りとして18歳以上の女性たちが「接待」という名のもと性の相手として差し出された事実に向き合う作品だ。犠牲となった15人の女性たちは、意味すら理解しないまま過酷な運命を背負わされた。

帰国後も彼女たちを待っていたのは差別や偏見、沈黙の強要だったが、2013年、女性たちはついに公の場で真実を語り始めた。監督は『ハマのドン』の松原文枝。幾重にも重なる加害の構造と、封じられてきた記憶を丁寧に紡ぐ。語りを担当した大竹しのぶは「過去をきちんと知り、未来を考えることの大切さ」を強く訴えている。

・性接待に差し出された15人の女性たち 仲間を守った彼女たちの過酷な半生とは?『黒川の女たち』

竹内涼真&町田啓太主演『10DANCE』場面写真がセクシーすぎると話題に

Netflix映画として実写化される『10DANCE』の場面写真も注目を集めた。本作は、井上佐藤による同名人気漫画を原作に、競技ダンスに人生を賭ける2人の信也の情熱と葛藤、そして揺れる感情を描く物語。BL作品としても高く評価され、「このBLがやばい!2019」を受賞した話題作だ。

Netflix映画『10DANCE』
Netflix映画『10DANCE』

W主演を務めるのは竹内涼真と町田啓太。約8年ぶりの共演となる2人が、ラテンとスタンダードという異なるダンスジャンルに挑む。竹内が演じるのは、ラテンダンス日本チャンピオンでありながら国内大会にこだわる鈴木信也。社交ダンス初挑戦とは思えないダイナミックな踊りを見せる。一方、町田はスタンダード日本チャンピオンで世界2位の杉木信也を演じ、鈴木を〈10ダンス〉の世界へと導く存在として魅力を放つ。

共演には土居志央梨、石井杏奈ら実力派が揃い、監督は『るろうに剣心』シリーズの大友啓史。公開された場面写真では、ラテンの迫力、ボールルームの気品、2人の信也がぶつけ合う情熱が静止画とは思えない躍動感で切り取られている。大友監督は「競技スポーツであると同時に、人生を賭けたアート表現」と語り、肉体と内面の炎を描き切る意気込みを示した。

 ・竹内涼真、鍛え上げた胸筋が色気全開 町田啓太のダンスシーンにも注目!『10DANCE』場面写真

田野優花のドSな表情に背筋が凍る!? 『ぼくらのふしだら』本編映像

奇才・大見武士のダークエロス漫画を小林大介監督が衝撃の実写映画化した『ぼくらのふしだら』。本作より、狂気に堕ちた田野優花のドSな表情に背筋が凍る本編映像が公開され大きな注目を集めた。

(C)大見武士・少年画報社/映画『ぼくらのふしだら』製作委員会
(C)大見武士・少年画報社/映画『ぼくらのふしだら』製作委員会

本作は、溢れる性欲と引き換えに時間停止能力を手に入れ、抑圧から解放された女子高生が巻き起こす、サスペンス×淫猥×思春期学園ストーリー。今回紹介する本編映像は、田野優花が演じる劣等感にまみれた学園生活をおくる主人公・美菜実が、溢れる性欲と引き換えに得た“時間停止能力”の恐ろしさを描くシーン。試験中にも時間停止を乱用していた美菜実は、不自然に解答が進んでいく答案用紙を見た教師に能力を勘づかれてしまう。不正行為を暴かれたくなければ、時間停止能力を自分の利益のために使わせろと脅してきた教師を前に、 美菜実の狂気が一線を越えてしまう。

大人しい生徒だった美菜実が「触んなカス」と吐き捨てると、教師のスマートフォンが大破し、どこからともなく無数の刃物が降り注ぎ出す。この能力があれば、他人の命も簡単に奪うことができると見せつけるように、美菜実は容赦なくナイフを飛ばす。情けなく命乞いをする教師を見下ろし、狂気を孕んだドス黒い美菜実の表情に背筋が凍る衝撃のシーンとなっている。

・女子高生が闇堕ちする瞬間! 試験の不正で脅す教師に新感覚エロティック・ホラーの見どころシーン

綾野剛が“殺人教師”に仕立て上げられる男を熱演、『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』予告編

第6回新潮ドキュメント賞を受賞した福田ますみのルポルタージュを原作に、綾野剛主演で映画化された衝撃作『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』の公開記念予告も話題を集めた。共演には柴咲コウ、亀梨和也ら実力派が名を連ね、監督は三池崇史が務める。

(C)2007 福田ますみ/新潮社 (C)2025「でっちあげ」製作委員会
(C)2007 福田ますみ/新潮社 (C)2025「でっちあげ」製作委員会


物語の舞台は2003年。小学校教諭・薮下誠一(綾野剛)は、児童への体罰を理由に保護者・氷室律子(柴咲コウ)から告発される。告発内容は瞬く間に週刊誌記者・鳴海三千彦(亀梨和也)によって実名報道され、「殺人教師」という強烈なレッテルが貼られていく。世論は一気に薮下を断罪し、誹謗中傷や停職処分など、彼の日常は崩壊していった。

一方、律子側を支援する大弁護団が結成され、裁判は誰もが勝訴を確信する展開へ。しかし法廷で薮下は「すべてはでっちあげだ」と完全否認する。予告映像は当事者の視点を排し、過熱する周囲の糾弾と「なぜ、それを信じるのか」という問いだけを突きつける構成が印象的だ。

・綾野剛、自宅には誹謗中傷の落書きが散乱 押し寄せるマスコミ次第に追い詰められていく『でっちあげ』予告

『国宝』が上海国際映画祭に出品! 李相日監督が上海上映への思い語る

11月24日までの公開172日間で、観客動員数12,311,553人、興行収入17,377,394,500円を突破し、邦画実写No1を記録(※興行通信社調べ)した『国宝』。国内のみならず、世界でも注目される本作が、上海国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門 カンヌ エクスプレスに出品され、絶賛の嵐を呼んだ。

(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会
(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会
 

 1300人収容できる大光明電影院に集まった観客に、李相日監督は「ニーハオ」と笑顔で挨拶。

「今回、上海で上映できることは僕にとって特別な想いがあります。『国宝』の映画制作にあたり、学生時代にチェン・カイコー監督の『さらば、わが愛/覇王別姫』(93年)を見た衝撃から、いつかこんな映画を撮ってみたいという想いを持っていた。それが歌舞伎をテーマに映画を撮ってみたいという思いにつながっていました」と秘めた思いを語った。

観客から「涙が出るほど感動しました。吉沢亮さんと横浜流星さんは今までと全然違う表情でした。こんな素敵な演技ができると想像できなかったです。なぜ2人をキャスティングしたのかとても興味があります」と質問に、李監督は「顔が美しいからです()」と質問が飛ぶと、会場の笑いを誘う一幕も。記事では、李監督が語る吉沢と横浜の印象についても紹介している。

・『国宝』吉沢亮&横浜流星のキャスティング理由は「顔が…」上海国際映画祭で李相日監督が告白