高畑充希×中島健人×デブラ・ゼイン×福間美由紀、映画界の“変化点”を語る——キャスティングと女性の未来
#デブラ・ゼイン#中島健人#是枝裕和#福間美由紀#第38回東京国際映画祭#高畑充希
現場改革・女性描写・アカデミー賞新設部門をめぐる本音トークが展開
第38回東京国際映画祭公式プログラム TIFFスペシャルトークセッション ケリング「ウーマン・イン・モーション」トークが、11月2日に開催。映画監督の是枝裕和によるオープニングスピーチに続き、高畑充希(俳優)、中島健人(俳優・アーティスト)、デブラ・ゼイン(キャスティング・ディレクター)、福間美由紀(プロデューサー)が登壇し、キャスティングの裏側や、女性が映画制作において果たす役割の変化について意見を交わした。
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東京国際映画祭において5回目の開催となるケリング「ウーマン・イン・モーション」トーク。そのオープニングには、本プログラムの意義に賛同し、2022年には自身もスピーカーとして登壇した是枝裕和監督が姿を見せた。
是枝監督は、「この取り組みを知ってちょうど5、6年。こういうことが日本でもできればと思っていたタイミングでカンヌ国際映画祭のパーティーにお招きいただき、以来、その想いに賛同してまいりました。映画監督という仕事はどうしても外の世界に触れる機会が少なく、世界が狭まっていく危機感を感じています。こういう形で外の世界の方と連携しながら、何が課題なのか、何が欠けているのか、というのを見つめていく機会がとても重要だということに気づき、まずは自分の現場から変えていこうとしています」と、「ウーマン・イン・モーション」が掲げるテーマへの思いと、その取り組みによって生まれた変化について語った。

さらに、「こういったイベントを通して、自分自身の意識改革にもつなげていきたいと思っています。皆さんにも、いま映画業界で変化が起きていることを受け取って帰って欲しいです」と述べ、イベントの幕開けにふさわしい言葉を会場に投げかけた。
是枝監督のスピーチに続き、盛大な拍手に包まれる中、今回のトークゲストが登壇。ドラマ・ミュージカル・映画と幅広く活躍する俳優・高畑充希、アーティスト活動と並行して俳優業や海外作品への出演にも意欲を見せる中島健人、是枝監督率いる「分福」で『ベイビー・ブローカー』(22年)『真実』(19年)『阿修羅のごとく』などの映画・ドラマを企画・プロデュースしてきた福間美由紀に加え、CSA(キャスティング協会)所属のキャスティング・ディレクター、デブラ・ゼインが初来日し、スペシャルゲストとして登壇した。

「この先、自分が子育てをしたり、母として生きていく中で、試行錯誤したり、壁にぶち当たるときが来るのかなと感じています。そんな中、このイベントに招待いただいたのはとても良いきっかけになると思いました。お招きいただき嬉しいです」と語るのは、プライベートと仕事をしなやかに両立する姿が多くの共感を呼ぶ高畑。
一方、男性という立場からの視点にも着目しながらトークセッションに参加する中島は、“映像業界における女性”をテーマにした今回の試みについて、「インティマシー・コーディネーターという職種ができたり、子どものいる方にとって働きやすい環境が整ってきたりと、進化し続けているタイミングですよね。今の世代の感覚でたくさんディスカッションしていきたいですし、皆さんと一緒に、女性がどう映画作りに尽力していくのか、しっかり学んでいきたいです」と、“ウーマン・イン・モーション”が掲げるテーマへの率直な思いを明かし、笑顔で参加への意欲を語った。

プロデューサーとして国内外で多くの作品を手がけ、制作現場を知る福間は、「海外の現場を知るたびに、日本ではどうなんだろうと考える機会が増えました。その経験を踏まえてお話しできるのが楽しみです」とコメントした。
今回のトークは、来年3月に授賞式が行われる第98回アカデミー賞で新設される「キャスティング賞」を背景に、キャスティングの重要性、映画やドラマで描かれる女性像の変化、さらなる女性活躍をテーマとしている。
トーク前には、伝説的な女性キャスティング・ディレクター、マリオン・ドハティを追ったドキュメンタリー『キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性』が特別上映され、ゼインは「キャスティングという仕事を作り上げた人です。伝説的な彼女の存在は非常に大きいです」と敬意を込めて語った。
ハリウッドで約30年活躍し、『アメリカン・ビューティ』(19年)『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(02年)『ドリームガールズ』(06年)『オーシャンズ』シリーズ、『猿の惑星』シリーズなど、多くのヒット作に携わってきたゼインは、「この仕事は世界中の俳優の知識が必要です。最終決定は監督が担いますが、キャスティング・ディレクターの意見が作品に大きな影響を及ぼすこともあるんですよ。意見が食い違った時には、監督と喧嘩をするくらいのことも起こります(笑)」と経験を交えて語り、高畑や中島も興味深く耳を傾けていた。

高畑は、「自身で役を選ぶというより、役に選ばれるという感覚になることがあって。自分では合っているかな?と思う役でも、自分をよく見てくれる方が選んでくれた役だから、とチャレンジすると、そのことで自分自身の課題が見えたりします」と、俳優としての感覚を交えて語った。そして、思わずゼインに「人を見てキャスティングするときに、心がけていることは?」と質問を投げかけた。
これに対しゼインは、「役柄のことを考えていますね。すごく演技が上手でも、役とのマッチングが大事なので、これは意識した方が良いと思います」とアドバイス。
その言葉を受け、中島が「もし自分がゼインさんの作品に出るならどんな役が合うと思いますか?」と冗談交じりに問いかけると、「大学生の役かしら? 若く見えます(笑)」とゼイン氏もお茶目に返し、和やかなムードでトークは盛り上がった。
第98回アカデミー賞で初めて「キャスティング」部門が創設されることについて、ゼインは「これまで女性の仕事だと思われていた部分もあると思います。ようやくその価値が理解されました。記念すべき年になると思いますし、どんな結果になるのかワクワクしています」と、キャスティング・ディレクターという職種の今後に期待を寄せた。
また、映画の中で描かれる女性像の変化について問われると、「時代を反映していると思います。女性がリーダーを果たす役柄や女性のヒーローなどが増えてきましたし、そういう機会はどんどん増していくと思います」と現状を分析。
中島も「『バービー』(23年)や『プロミシング・ヤング・ウーマン』(20年)など、女性が主体となって生き抜く力強さを描いた作品が増え、時代に順応した作品が作られているように感じます」と同意した。
一方で、「本当の意味で、“人間”として平等に描かれている作品が見たいですよね。LGBTQの方々を描く作品も、当事者が演じるべき、という意見など色々あると思いますが…」と鋭い視点で切り込んだのは高畑。
ゼインは「良い質問ですね」と応じながら、「私は必ずしも当事者である必要はないと思っています。フィクションなのか、ドキュメンタリーなのか、その線引があいまいになる場合もありますが、上手い人が演じるべきです」と、キャスティング・ディレクターとしての見解を示した。

映画における女性描写の変化に希望を見出す福間は、「昔も魅力的なヒロインを描いている作品はたくさんありますが、私がプロデューサーとして参加する作品でも、女性の眼差しや価値観を物語に落とし込むことは特に意識しています。まさに、女性の生き様が描かれている『遠い山なみの光』(25年)を製作したときは、物語の中では複数の女性が登場するけど、それが一人の女性の多面的な一面に見えるように心がけて作っていました」と、現場の最前線ならではのエピソードを披露した。
映像業界における女性の問題が少しずつ改善されていく中で、さらに女性が活躍するために何ができるのかという質問が投げかけられると、福間は「2018年、フランスで映画作りを行っていた際に驚いたのが、撮影時間は8時間まで、土日は休み、というルールが定まっていたことです。カルチャーショックと言える衝撃でした。その現場には、女性や子育て中の方も多くて…。社会保障がしっかりしていることで、女性でもキャリアを続けることができるんです。日本では、生活を犠牲にせざるを得ないことがあまりに長く続いてきました。今、そんな日本でもルールが設けられるようになったりと、変わろうとしている中にいます。意識をアクションに変えていく最中です」と、世界の現場を知る者ならではのリアルな視点で語った。
現場の最前線に立つ高畑も、「当事者としても、転換期を迎えていると感じています。子どもができて子育てをしていく中で、『もっとこうだったいいのに』と思うことが増えていくのかもしれません。そうなったら、我慢せずに声に出していくことで、働きやすい環境作りに貢献できたら嬉しいです」と、母として、俳優としての姿勢を示した。
一方、中島は「まずは食事の時間をしっかり作るとか、ファミリーデーを設けてみるとか、少しの変化が現場を充実させていくきっかけになると思います。みんながそれに気づき始めているので、時代の真ん中にいる一人の映画人として、推奨していけたら良いなと思います」と語り、未来への想いと行動する意志を示した。

最後に、ゼインは「期待以上に多くのことを学べたイベントでした。皆さんにとっても、たくさんの発見があったら嬉しいです」とコメント。
福間も「とても新鮮でした。どんな人でも、映画を愛し、支えてくれる人みんなが声に出していいんだと思ってくれる機会になったと思います」と手応えを語った。
高畑は「こういう経験はあまりないのでドキドキしましたが、色んな人の意見をきけて面白かったです。明るい未来が見える気がして嬉しいです」と笑顔を見せた。
中島も「時代を変えることに少しずつ尽力していきたいです。改めて、第98回アカデミー賞でのキャスティング賞創設を祝福します」と締めくくり、登壇者たちの力強いメッセージに包まれたイベントは大盛況のうちに幕を閉じた。
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