元自衛官の“戦闘”とPTSDを描く『火の華』が満席&喝采! 防衛強化ムードの今、初日にスタンディングオベーション

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『火の華』
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『火の華』
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PKO派遣・PTSD・日報隠蔽──若い映画人が切り込んだ社会の盲点

自衛隊日報問題を着想に、南スーダンで“戦闘”に巻き込まれた元自衛官の壮絶な体験とその後の宿命を描いた映画『火の華』が10月31日に公開され、3連休において渋谷ユーロスペース観客動員率85%超の大ヒットを記録。11月1日には公開記念舞台挨拶が開催された。

・国家が隠蔽した“戦争”の記憶、沈黙の代償は命だった…実際の報道に着想を得た衝撃作『火の華』

本作は、南スーダンにPKO派遣された元自衛官の壮絶な体験と、その後に背負う宿命を克明に描いたオリジナルストーリー。新藤兼人賞銀賞を受賞した『JOINT』(21年)で鮮烈なデビューを果たした小島央大監督と、主演の山本一賢が共同で企画・脚本を担当し、日本映画ではこれまで扱われることのなかった「元自衛官のPTSD」と、日本の伝統文化である「花火」をモチーフに、〈戦う〉ことや〈平和〉の在り方、そして人間の本質にまで問いを投げかける。

『てっぺんの向こうにあなたがいる』『盤上の向日葵』『爆弾』などの大作映画が同日公開された3連休。本作の上映が始まるやいなや、約1年間待ち続けた観客が渋谷ユーロスペースに押しかけ、舞台挨拶回はすべて満席に。3連休の動員率は85%超えという大ヒットとなった。

さらに、主演・山本一賢と小島央大監督の対談、自衛隊日報の開示請求を行い「日報隠蔽」発覚の契機を作ったジャーナリスト・布施祐仁、自衛官のメンタルヘルス対策に携わってきた元・自衛隊精神科医官で医学博士の福間詳、そして南スーダンに実際にPKO派遣された元陸上自衛隊員・小山修一によるレビューなど、本作の魅力を多角的に読み解くパンフレットの購買率は、なんと35%。上映後のサイン会には毎回長蛇の列ができ、ロビーは異様な熱気に包まれた。

昨年のマスコミ試写では満席となり、作品への評価も非常に高かったものの、2024年11月に出演者兼プロデューサーの起訴を受け、同年12月に公開延期となっていた本作。公開延期の原因となった刑事事件が今年2025年4月に終結したことを受け、劇場公開が決定した。

公開前には、俳優・池松壮亮や藤原季節、監督の瀬々敬久ら映画人ほか、漫画家の新井英樹、小説家の佐藤究、芸人の千原ジュニア、戦史・紛争史研究家の山崎雅弘ら、各界の著名人29名から絶賛コメントが到着。

10月31日発刊の新聞各紙では、「暗さに支配された画面設計が、簡単には読み取れない心の傷の深さを、静かに、重厚に浮き彫りにしていく」(朝日新聞)、「命を奪う重く冷たい銃声から、生命力が輝く花火のさく裂音へと転換する様子に、小島央大監督らの思いが詰まっている」(毎日新聞)、「小島央大監督は、火がつかさどる創造と破壊の両面を追求する」(東京新聞)など、小島監督の手腕を絶賛する映画評が並んだ。

小島監督の前作『JOINT』でいち早く才能に注目し、公開延期後もなお作品の持つ力を信じて劇場公開を決断したユーロスペースの北條誠人支配人は、この盛り上がりについて「上映が終わるごとにおこる拍手の波。監督に話しかける人の多さ。邦画洋画問わずに最近にはない熱さを感じます。この11ヵ月が無駄ではなかったことを確信しました」と驚きと確信を語っている。

奇しくも公開直前に新政権が発足し、防衛力強化の方針が明らかになった今、平和のあり方を問う本作がどのように広がっていくのか、注目が集まっている。

『火の華』

11月1日には、山本一賢、柳ゆり菜、松角洋平、伊武雅刀、田中一平、原雄次郎、新岡潤、ゆかわたかし、今村謙斗、山崎潤、遠藤祐美、YUTA KOGA、小島央大監督ら、総勢13名による公開記念舞台挨拶を実施。登壇者たちが会場に入場すると、観客は立ち上がり、大きな拍手と歓声で迎えた。鳴りやまないスタンディングオベーションが続いた。

感無量の表情を浮かべた小島央大監督はまず、「約5年、この映画を作り始めてから、ようやくこの日を迎えられて本当に幸せです。作る前から、なぜ花火が美しいんだろう? そして同時になんで映画が好きなんだろう?ということをずっと考えていました。キャストやスタッフの皆さん、そして観客の皆さんとスクリーンで映画を見るという一体感を感じることができて、本当に幸せで仕方ありません。ありがとうございます」と挨拶。

続いて、本作で共同企画・脚本を担当し、主演を務めた山本一賢は、凛々しく観客を見据えながら、「今日は本当にありがとうございます。今日を迎えられて、なんとも言えない気持ちです。ユーロスペースの支配人の北條さんには本当に感謝しています」と、満席の観客と再上映に踏み切った劇場への感謝を述べた。

山本一賢扮する島田東助を花火師の道へ導く「藤井煙火」社長で名花火師・藤井与一を演じた伊武雅刀は、「私はかれこれ100本以上の映画に出演しているんですけど、この映画の完成版を見たときに、“なかなかいいじゃないか”って思いましたね。そんなことは初めてじゃないかな。こんなに嬉しいことはないですよ」と本作の完成度を称賛した。

翌11月2日には、前日はスケジュールの都合で登壇できなかった、藤井煙火の長老で工場長を演じたダンカンが駆けつけ、山本、小島監督とともに舞台挨拶を実施。ダンカンは「舞台挨拶は何十回も40年以上やってるけど、皆さん映画を見るのが本当に好きなんだろうな、と真剣なお客さんばっかりですよね。今日は本当のお客さんだな、と緊張している。本物の映画だから、本物のお客さんが来てくださったのかなと感動さえ覚えています」と思いを語った。

■ユーロスペース支配人・北條誠人

当初の公開予定よりも11ヵ月遅れての初日を迎えました。新しい総理大臣がアメリカとの親密な関係のもと防衛費の増大を唱える今が、『火の華』の公開によりふさわしい秋になりました。上映が終わるごとにおこる拍手の波。監督に話しかける人の多さ。邦画洋画問わずに最近にはない熱さを感じます。この11ヵ月が無駄ではなかったことを確信しました。

『火の華』は全国順次公開中。