『火喰鳥を、喰う』が高雄国際映画祭で上映、観客とのQ&Aで語られた撮影秘話
第25回高雄国際映画祭にて映画『火喰鳥を、喰う』が上映され、主演の水上恒司が現地を訪問。10日に行われたオープニングセレモニーではレッドカーペットを歩き、翌11日に行われた記者会見、上映前の舞台挨拶、上映後の観客とのQ&Aにも出席し、現地のファンから大きな歓声を浴びた。
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水上は本作と『九龍ジェネリックロマンス』という2作の主演映画を携えて同映画祭に参戦。10日夕方のオープニングセレモニーでは、まず『九龍ジェネリックロマンス』チームの共演陣と共にレッドカーペットを歩き、続いて本作を代表してひとりでフォトコールに臨み、レッドカーペット脇に集まったファンから大きな歓声を浴びていた。
翌11日は、2作品での舞台挨拶に加え、記者会見と多忙なスケジュールをこなした水上。記者会見では本作への出演について、さまざまな怪奇事件に遭遇する主人公を演じることで“受け”の芝居を求められることが多くなる点に言及し、「この雄司役をやることで、受け身の引き出しを新たに模索する良いチャンスだなと思いました。また、これまでミステリー映画に出るということがなかったので、そこに身を投じて、どういう作品にできるか?ということを楽しみにこの作品に向き合っていきました」と振り返った。

「怪奇現象を描く映画ということで、撮影中におかしなことが起きたりしたことは? さらにこれまでに怪奇現象に遭遇したことは?」という質問には、「今回の撮影中に『怖いな』と思うことはありませんでした。一番怖いのは人間だなと思っているので」と回答。
自身の怪奇体験については「最近はないですね」と前置きしつつ、「幼少期はそういうことをよく言っていたそうですけど、最後に経験したのは高校1年生の時でした。その時、住んでいた場所で、先輩だと思った人に『おつかれさまです』と言ったんですが、それが先輩ではなく幽霊だったという話なんですが…これについて話し出すと1時間くらいかかるので、今日はやめときましょう(笑)」と語り、会場を笑いに包んだ。
また、ある記者から「金城武に似ている」との指摘が飛ぶと、水上は「金城武さんに似ているというのは、これまでも言われたことはあります。ただ(見た目はあくまでも)DNAなので、そういうDNAを持っているということで得するという考え方、(この顔に生んでくれた)両親のおかげで、こういう仕事ができている部分があるのかもしれません。だからこそ、自分の努力をしていかないといけなくて、ただ“運が良かった”人間で終わりたくないので、人間のドロドロした汚さみたいな部分を表現できる役者になりたいなと思っています」と、持って生まれた見た目ではなく、俳優としての表現力を磨いていきたいという決意を語った。
さらに、台湾の人々が高雄のことを「台湾の福岡」と呼ぶことに触れ、福岡県出身の水上は「高雄は北九州の街並みに似ている」と印象を口に。高雄で出会った人々の温かさにも言及し、「みなさん、すごく人間性が良くて、ちゃんと話を聞いてくれて、昨日の(『九龍ジェネリックロマンス』の)舞台挨拶で、質問の内容が鋭く、役者のことをよく聞いてくれて、すごく楽しかったです。福岡も人が温かい土地ですが、それとまた違った人の良さを台湾でより感じています」と笑顔で語った。

特にQ&Aで台湾の観客と直接触れ合えたことは、水上にとっても刺激的な経験になったようだ。「その場で挙手して当てていくというQ&Aが新鮮でしたし、質問の内容も役のことが多くて、役者自身のことが好きということはもちろんあると思うんですが、役者が作り上げたものに対してすごく興味を持って『あれはどういうふうにつくったのか?』『この作品が役者としてあなたの中にどういうふうに残りましたか?』といった質問が多くて、すごく面白かったです」と、充実した表情を見せた。
続けて「現代においてSNSというものを介さないと、ファンの方と交わることがないので、(普段は観客の)意見などを聴くのがそこ(SNS)が主流になっていくんですね。それが(映画祭では)舞台挨拶やQ&Aで、そういう方々の意見、質問、感性や価値観を聴けるということで、そこにやりがいを感じるのは自然な流れなのかなと思います。まだ僕が“大人”になり切れてないのかもしれませんが、僕から『ああです』『こうです』と言うのが一方通行な気がしていて、僕らはあくまでもお客さんがお金を払って映画を見に来てくれることで、映画を作れているので、そういう方々の意見を聞いて、それを取り入れて、次の作品や芝居に反映していくという作り方が僕の中ではしっくりくるので、Q&Aの時間が僕は好きですね」と、改めてファンと直接触れ合い、その声に耳を傾けることの重要性と意義を語った。
その後に行われた本作の公式上映では、上映前と上映後の両方で水上が舞台挨拶に登壇。上映前に水上が劇場に姿を見せると、客席からは歓声と拍手が湧き起こった。
水上は「昨日は『九龍ジェネリックロマンス』で、そして今日は『火喰鳥を、喰う』という作品でこの場に立たせていただいて光栄です。この後の(上映後の)舞台挨拶で高雄とはいったん、さよならになってしまい、寂しい思いがありますが、みなさんとの時間を良いものにしたいと思います」と挨拶した。
上映後には、映画を見終えたばかりの観客とのQ&Aのために再び登壇。MCから、本作のみならず『九龍ジェネリックロマンス』『WIND BREAKER』の3本の映画、さらにドラマ『怪物』など話題作が次々と公開・放送されることについて、「これだけ多くの作品に出演して、少し休みたいと思いませんか」というストレートな質問が飛ぶ。
水上は「(休みは)ほしいですね(笑)」と笑いながらも、「これほどのオファーをいただけること、『君に任せたい』と言っていただけるのは恵まれた環境だと思うので、いまはもちろん心身を大事にしながらですが、場数を踏みたいと思っています。20代でその経験をして、30代から自分もみなさんも納得できる、面白い作品をつくっていきたいと思っております」と語った。
一人目の観客からは、映画のオープニングシーンに登場する白い服の少女や鳥、ノート、そして不気味な笑みにはどんな意味があるのか、あれは現実なのか、それとも幻想なのか、という質問が寄せられた。
水上は「(答えが)僕の中にも明確にあるわけではないです。明確に説明しなくていい、疑問に思ってもらえる存在やセリフ、アクションをどれだけ残せるかというのは、一役者として目指したいところでもあります。現代は、辻褄が合っている“わかりやすさ”を求められる時代だからこそ、こういうふうに遊びを持ってつくることは憧れであったりします。僕の中では(オープニングのシーンは)単純に恐ろしさ、畏怖すべき存在です」と、自身の解釈を明かした。
続いて、山下美月のファンだという男性から夫婦役で共演した印象を尋ねられると、「みなさんから見たら僕も芸能界の人間かもしれませんが、その僕からしても、山下さんのアイドルとして、アーティストとして生きてこられた人生は普通じゃないなと思います。ご自身の一挙手一投足、声や表情で目の前の方たちを魅了していくって相当なことだと思います。この映画では長野で生活している人間のところに東京から嫁いできた夕里子と、ダテさん(宮舘涼太)が演じた北斗のうさん臭さ――あの2人の持つ“異質さ”は、そういう(=アイドル、アーティストとして生きてきた)ところから出ているなと思ったし、すごく役に合っているなと思いました。自分の異質さを順応させようとする夕里子と、目的達成しようとする北斗というのをとても面白く見ていました」と語り、山下や宮舘の表現力を称賛した。

続いて質問した女性は、前日の舞台挨拶で水上が「俳優としていろいろな場所で撮影すると、その土地とのつながりが生まれる」と語っていたことに触れ、本作の長野での撮影の印象やエピソードを尋ねた。
水上は「ダテさんとはスタッフさんを交えて食事に行くことができました。僕は今回の撮影の前から『いつか長野に住みたいな』と思っていたんです。今回の1ヶ月半の撮影を経て、より『長野に住みたいな』と思いました。映画の最初のお墓のシーンで映っていますが、田園が広がっていて、山があって他に何もなくて、その上に入道雲が広がっている――すごく生命力にあふれた土地で、水がすごくきれいなんですね。だから蕎麦がおいしいんですが、『いつかこういうところに住みたい』と思える食べ物があり、人がいて、特に星がきれいでした」と、思い出を振り返った。
舞台挨拶の最後に、水上は観客に向けて「見ていただきありがとうございました。夜も遅いのでお気をつけてお帰りください」と呼びかけ、温かい拍手の中でイベントは幕を閉じた。
劇場に足を運んだ観客からは、「とても面白い映画でした。最後まで見ないと結末がわからなくて、すごく面白かったです」(女性客)との声や、「日本で公開されたばかりの映画が台湾でこうして紹介されることが嬉しい」と語る年配の男性も。「人間の生き方が複雑に絡まっているところが、若い人にも年齢が上の人にも共感できると思うので、どんな年代の人も楽しめる映画になっていると思う」と感想を寄せた。
『火喰鳥を、喰う』は全国公開中。
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