満島ひかり「馬鹿みたいに泣いちゃって」——映画『兄を持ち運べるサイズに』完成披露試写会レポート
『湯を沸かすほどの熱い愛』『浅田家!』など世界的にも注目される中野量太監督が5年ぶりにメガホンをとる『兄を持ち運べるサイズに』。11月28日の公開に先立って、主演の柴咲コウ、満島ひかり、青山姫乃、味元耀大、中野量太監督が登壇する完成披露上映会舞台挨拶が実施された。
・柴咲コウ「私は兄を心の底から軽蔑した」絶縁状態だった兄の突然の訃報…てんてこまいな家族の4日間描くノンフィクションが映画化
人には見せない姿を映し出してくれた作品
本作は、作家・村井理子氏が絶縁状態にあった実の兄の突然の訃報から始まる家族のてんてこまいな4日間をまとめたノンフィクションエッセイ『兄の終い』の映画化だ。
マイペースで自分勝手な兄(オダギリジョー)に幼いころから振り回されてきた主人公・理子を演じた柴咲は、「昨年の秋に撮影だったんですけども、公開が11月ということでまだ日があるのですが、これからご覧になる皆さんの反応がどうなのか、監督はドキドキだと思いますが、気に入っていただけると嬉しいなと思います」と、コメント。
理子の兄の元嫁・加奈子を演じた満島は、「私はおととい映画を見たばかりで、見終わった後感想を柴咲さんにメールしました。とってもいい映画でした! 理子ちゃんとお兄ちゃんのシーンは初めて見る場面だらけだったんですが、すっごい綺麗な兄妹。今日はいいものが見られると思うので、ぜひ楽しんでください」と話す。
加奈子の娘・満里奈役の青山は、「今回初めての映画で、初めての場所で緊張しています。この映画は、やって良かったという嬉しさと感謝がたくさん込められている映画です! とってもドキドキしています!」と、フレッシュさあふれる挨拶。
そして、その弟・良一を演じた味元も、「本日はよろしくお願いします! 人がすごく多くて緊張しています」と緊張の面持ち。
さらに、本作が約5年振りの新作となる中野監督は、「5年間映画を撮っていなくて、この映画を去年撮ることができました。脚本も書いていて、そこから撮影、編集とずっとやっていたのですが、今までで一番しっくりきたなと思います。自分がやりたい表現とかやりたいものが、結実してきたな、と思います。自分なりに一生懸命生きた5年があって、その間になんか勝手に成長していたのかなと思いました。現場でも素晴らしいキャストと、やりあうこともありながら、いい演技を全員がしてくれたなと思っています。大いに笑って、いろいろなものを持ち帰ってくれたら嬉しいです」と、今の思いを語った。
続けて柴咲は本作を初号で見て、新たな発見があったという。
「いつもだったら(自分の出た作品を)客観的に見られないのですが今回はそういうのが全然なくて。ある意味自分と切り離せて見られて、“ひとりの人間ができてる”、と不思議な感覚でした」
そして、自分の家族のことを思い浮かべながら見たという。
「皆さんにもそれぞれに家族がおありだと思いますし、色々な形があると思うんですけれども、そういったところに思いを馳せながら、ご覧いただけるんじゃないかなと思います」
そんな作品をつくりあげた中野監督は、作品の中でこれまでも家族に残された人々を描いてきた。
「原作本を読んでまあ面白くて。なんか、悲しい話なんだけど、笑ってしまうんです。それって僕が一番目指してるところだ、と一致して、これはやりたいな、と。そして、原作者の村井さんにお話を聞くと、本に書いてない面白いエピソードがいっぱい出てくるんですね。そこで、村井さんが違うと思うものはつくりたくないし、芯のところは絶対に変えないっていうのを心をがけたと思います」と制作秘話を明かした。
そんな脚本を読んだ柴咲は「その役をまとって、自分が動いている姿が想像できるかってところで、お引き受けするかというポイントにもなるんですが、今回は自然とできちゃったんですよね。すごく素敵な脚本だったなっていうのは覚えてます」と絶賛。
さらに演じてみて自身の中での価値観も大きく影響されたと明かし、「家族にも見てもらって、見てもらってから家族会議したいなと思います」と話す。
満島も「脚本を開いて、馬鹿みたいに泣いちゃって、感動して。柴咲さんもオダギリさんも、しっかり共演したことがなくて、自分が映画館に行って見ていた映画に出ていた2人なんですよね。なので、おふたりと共演できたっていうのは、結構私の中で大きくて。(完成した作品を見ても)これまで見てきた柴咲さんとも違うし、オダギリさんも私の映画史上に残る、かなりいい表情がありました。あとは、青山姫乃がすごいんですよ! 初めての映画なのに肝が据わっていて、彼女を助けるつもりでやったお芝居を私ができなかったんですが、『いいよいいよ、自分がいいと思うまでやりな』って言ってもらえて(笑)。味元くんも本人がとっても大人っぽいんですが、映像に映っている姿がまだまだなんか赤ちゃんなんだなって思って、やっぱ中野さん、キャスティング上手だなと思いながら見ていました(笑)」と脚本、そして共演者を手放しで褒めたたえた。
青山も「私とは違う遠くの人だったのが、ママになるってびっくりしたんですが、現場にいないと不安になるくらい安心する存在になりました」と、満島愛を語る青山。
「僕は柴咲さんと満島さんと青山さんと4人で食事をするシーンがあって、そこのご飯がすごく美味しくて、次の日お休みだったので、またその場所に行ったのですが、ピザがなかったので、パスタを食べました」と味元もほほえましいエピソードを明かし、会場もあたたかい雰囲気に。
また、映画にちなんで、「伝えられなかった大切なこと」を聞かれると、柴咲は「昨年この映画に関わらせていただいてから、自分の不器用なところ、口下手なところが目につくようになったんです。自分がちゃんと家族や近くにいる人に愛を伝えられていないということがずしんときていて。どうしていこうかなという気づきをこの作品に与えてもらいました」と柴咲がこの作品で気付かされた自身の一面を明かす。
満島が「撮影しているときに、スタッフの皆がぽろっとこぼす家族の話が胸に残っています。私も柴咲さんと同じで、どうやってまだ肉体が存在する間に伝えられることがあるかなと、いる間に、いる人に何ができるのかなというのは考えました」と話すと、「ウルウルきちゃうね」と柴咲。
青山も「お姉ちゃんに伝えたくて、今年一緒に上京してきたのですが、忙しい慣れない生活の中で、美味しいご飯を作ってくれるんですけど、素直にあるがとうって言えなくて、この映画の機会で、ありがとうって素直に伝えたいです」と姉への感謝を語り、味元は「お母さんに、この映画の撮影のために、お仕事もお休みしてくれて、一緒に付き添ってくれて、ありがとうって言いたかったんですが、新幹線乗らなきゃ行けないとか、疲れているとかで、言うタイミングがすごく難しくて、すぐに伝えられなかったです」と明かした。
そして中野監督は「自分で映画を撮って見終わった後に、このキャスト以外にないなと思った時が一番幸せで、今回もそう思いました。そのことを4人に伝えていなかったのかなと思うので…」と話をふると、整列し、監督に熱い視線を投げかけるキャスト。「ありがとうございます!」と言い合う姿に会場からは拍手が起こった。
舞台挨拶の終盤には、”持ち運べるサイズ”にされたオダギリジョー演じる兄の巨大パネルも登場し、フォトセッションも実施。
最後に柴咲から「改めて、なんで自分のことを評価しないでこの映画が見られたんだろうと思っていたのですが、プライベートな、人には見せない姿や内省しているときの姿を映し出してくれたのかなと思って。なのでそう言った意味で自分の新しい一面を切り取ってもらえたんだなと思います」と心からの感想が。
そのうえで「見終わった後にどんな感想をもつかはそれぞれだと思うのですが、なにかの気づきになっていたら嬉しいです」と異例の公開4ヵ月前の完成披露上映を締めくくった。
『兄を持ち運べるサイズに』は2025年11月28日より全国公開。
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