放課後のカラオケで響く“失恋ソング”──運命の修学旅行を控えた女子高生の最後の1日『君と私』

#キム・ジウン#チョ・ヒョンチョル#パク・ヘス#君と私#韓国映画

(C)2021 Film Young.inc ALL RIGHTS RESERVED 
『君と私』
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青龍映画賞で最優秀脚本賞と新人監督賞をダブル受賞する快挙

第45回青龍映画賞にて最優秀脚本賞と新人監督賞をダブル受賞した俳優チョ・ヒョンチョルの長編監督デビュー作『君と私』。セウォル号沈没事故を題材にした本作より、切なさ溢れる本編映像と各界著名人からの推薦コメントを紹介する。

・セウォル号沈没事故を題材に描く青春映画『君と私』 女子高生2人の切なく儚い1日

本作は、2014年4月に韓国で発生したセウォル号沈没事故を題材に、済州島行きの修学旅行を翌日に控えた女子高生セミとハウンが過ごす、夢のような1日を描いた物語。

『君と私』

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修学旅行の前日。セミ(パク・ヘス)は教室で不思議な夢を見る。胸騒ぎを覚えた彼女は学校を抜け出し、想いを寄せるハウン(キム・シウン)の病室へと走った。ハウンは自転車事故で脚を負傷し、修学旅行を諦めて入院していたのだ。

セミは「一緒に修学旅行へ行こう」と必死に説得し、ビデオカメラを手に旅費を工面しようと奔走する。しかし、どこか煮え切らないハウンの態度に、抑えてきたセミの感情がついに溢れ出す。心に秘めた想いを今日こそ伝えたい——。言葉にならない気持ちを抱えたまま、2人だけの夜が訪れる。

『君と私』

監督・脚本を手掛けたのは、ドラマ『D.P. -脱走兵追跡官-』などで名バイプレーヤーとして多彩な役柄を演じてきた俳優チョ・ヒョンチョル。長編監督デビュー作ながら、7年の歳月をかけて丁寧に練り上げた脚本は高く評価され、第45回青龍映画賞では『ソウルの春』(23年)や『パスト ライブス/再会』(24年)といった大ヒット作を抑え、最優秀脚本賞と新人監督賞をダブル受賞する快挙を達成した。

撮影は、これまで広告やMVを中心に活動してきた新進気鋭の映像作家DQMが担当。さらに、日本でも人気の高い韓国の4ピースバンド・ヒョゴのメインボーカル、オヒョクが音楽を手掛けるなど、韓国カルチャーシーンを牽引するクリエイターが集結している。

『君と私』

今回紹介する本編映像では、主人公セミ(パク・ヘス)が、放課後に友人たちと訪れたカラオケで、想いを寄せるハウン(キム・シウン)への溢れ出る気持ちをメロディにのせて熱唱する姿が描かれる。セミが歌っているのは、2000年代に活躍した4人組女性ボーカルグループ・Big Mamaのヒット曲「諦め」で、韓国ではカラオケの定番として知られる代表的な失恋ソング。カラオケの背景映像に映るセミとハウンの姿、そして切ない歌声が、見る者の感情を揺さぶる印象的なシーンとなっている。

また、本作を鑑賞した各界の著名人や、チョ監督がこれまで出演してきた作品の監督・共演者からの推薦コメントが到着した。

『君と私』

俳優チョ・ヒョンチョルが飛躍する大きなきっかけとなったドラマ『D.P.―脱走兵追跡官―』のハン・ジュニ監督からは「優しいけれど、深く深く、登場人物たちの感情に切実に共感させる映画」、ドラマ『調査官 ク・ギョンイ』で共演した女優イ・ヨンエからは「とても繊細で叙情的で、切なく儚い作品」と、俳優としてだけでなく監督としての才能を称える熱いメッセージが寄せられている。

『違国日記』などの作者として知られる漫画家・ヤマシタトモコは、前述の『D.P.―脱走兵追跡官―』でチョ・ヒョンチョルが助演男優賞を受賞した2022年百想芸術大賞でのスピーチの印象をもとに、本作への感想を寄せた。そのほか、モデルで俳優の太田莉菜、DIVAのゆっきゅんなど、各界から総勢11名による絶賛コメントが集まっている。

■ハン・ジュニ:『D.P. -脱走兵追跡官-』監督

映画の中盤あたりからだったでしょうか。涙が出はじめて、映画が終わってからもしばらく泣きました。つらいけれど、長く記憶しなければならない瞬間たちも時間が経てば無意味になってしまうと言われます。そんな瞬間をつかまえて、見つめ、観客に伝えることも映画が存在する理由だとするなら、この映画はまさにその証明です。優しいけれど、深く深く、登場人物たちの感情に切実に共感させる映画『君と私』。

■イ・ヨンエ:女優

監督チョ・ヒョンチョルの作品を心待ちにしていました。とても繊細で叙情的で、切なく儚い作品です。

■ソン・チョイ:『調査官ク・ギョンイ』脚本家

十分に長い時間をかけて細やかに観察された、愛の風景。その輝かしい瞬間、瞬間が目も眩むほど美しい。

■イ・ジョンピル:『サムジンカンパニー1995』監督

愛が消えてしまったかのような世界で、必ず見るべき映画。私たちは粉々に壊れたとしても、あなたと私はつながっているのだと、最後には証明してくれる。

■ヤマシタトモコ:漫画家

2022年百想芸術大賞でのチョ・ヒョンチョルのスピーチを見た時、傷ついたままでいられる優しさと強さを備えた人物だと思った、その時そのままの印象の映画だった。何度も思い出しそうだ。

■太田莉菜:モデル・俳優

わたしは光の粒子になって少女2人を取り囲む全ての時間の中に漂っている。生きた言葉たちが意識の中にみずみずしくしみこんでくる。これから春の陽光ややわらかな風を浴びる時、チョ・ヒョンチョル監督が授けてくれた 2人が愛し、愛しあった永遠の時間を思い出すとおもう。

■ゆっきゅん:DIVA

毎日好きだった。息ぴったりで悲しかった。毎日未熟だった。うまく伝えられなかった。この1日を見たらその時間の蓄積がわかる。夢のように苦しくなる素晴らしい映画。

■枝優花:映画監督・脚本・写真家

「あんたは自分のことしか考えてない」そりゃそうだ、自分の人生なのだから。でも、大切な人に愛されたいと思ったとき自分に向けている眼差しをその相手に向けることが実はそれが自分の心を本当の意味で眼差す、ということなのかもしれない。でも私たちはそのことに失って初めて気づく。何度も何度も繰り返していつになったら手遅れではなくなるのだろうか。人生は有限なのだといつになったらわかるのだろうか。

■向坂くじら:詩人

大切な人を亡くしたとき、わたしたちはその人が生きていたということを忘れたくないと思う。だけどそれは結局のところ、なにを覚えておきたいという望みなんだろう。たやすく失われてしまうそのものとは、つまりなにのことだろう。触れれば血が脈うつようなその内実を、この映画は映し出そうとする。

■前田エマ:モデル

今日も、そして明日も、平等にあると思って疑わなかった青春の1日。そんな、なんてことのない大切な1日に、君がくれた言葉やまなざしが、まるで白昼夢のように私を包む。いつまでも手を振る君を、淡い光のなかで、見ていたいのに。

■稲川右樹:帝塚山学院大学准教授(韓国語教育専門家)

当時、僕はソウルの自宅で、船体が若い命と共に深く冷たい海の底に沈んでいくのを、リアルタイムでただただ見つめていた。セウォル号は同時代を生きた韓国の人々にとって、単なる事件ではなく極めて強い当事者性を持った「体験」となった。この作品の「君」は「私」だったかもしれないし、「私」は「君」だったかもしれない。この作品を見る私は「私」だったかもしれないし、「君」だったかもしれない。

『君と私』は2025年11月14日より全国順次公開。