綾野剛、亀梨和也を凍り付かせた柴咲コウの緊迫演技「怖かった」「全体の空気が凍る」

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(C)2007 福田ますみ/新潮社(C)2025「でっちあげ」製作委員会
(C)2007 福田ますみ/新潮社(C)2025「でっちあげ」製作委員会

綾野「芝居合戦というよりは、ノーガードの撃ち合いのよう」

20年前、日本で初めて教師による児童への虐めが認定された体罰事件——その真相に迫った福田ますみのルポルタージュを映画化した衝撃作『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』。本作より、コメント映像と本編&メイキング映像を組み合わせた特別映像「感動編」「共演編」を紹介する。

・綾野剛×柴咲コウ、バチバチの演技対決! 三池崇史監督が「2人とも狂ってる」と絶賛した“奇妙な家庭訪問”

2003年、小学校教諭・薮下誠一(綾野剛)は、保護者・氷室律子(柴咲コウ)に児童・氷室拓翔への体罰で告発された。体罰とはものの言いようで、その内容は聞くに耐えない虐めだった。

これを嗅ぎつけた週刊春報の記者・鳴海三千彦(亀梨和也)が“実名報道”に踏み切る。過激な言葉で飾られた記事は、瞬く間に世の中を震撼させ、薮下はマスコミの標的となった。誹謗中傷、裏切り、停職、壊れていく日常。次から次へと底なしの絶望が薮下をすり潰していく。

(C)2007 福田ますみ/新潮社(C)2025「でっちあげ」製作委員会

一方、律子を擁護する声は多く、550人もの大弁護団が結成され、前代未聞の民事訴訟へと発展。誰もが律子側の勝利を切望し、確信していたのだが、法廷で薮下の口から語られたのは、「すべて事実無根のでっちあげ」だという完全否認だった。

主人公の薮下誠一を演じるのは綾野剛。共演には柴咲コウ、亀梨和也、木村文乃、光石研、北村一輝、小林薫ら豪華キャストが肩を並べる。監督を務めるのは、『悪の教典』(12年)『初恋』(20年)『怪物の木こり』(23年)など映画での活躍はもちろんのこと、2025年にはTVドラマ『新・暴れん坊将軍』でも監督を務めた三池崇史。

先日、「世にも奇妙な家庭訪問」と題して公開されたのは、殺人教師の疑いをかけられた薮下(綾野)と、彼の体罰を訴える母親・氷室律子(柴咲)、その双方の主張をもとにした回想シーンの本編映像。児童・拓翔をめぐる緊張感あふれるやりとりに、SNSを中心に期待の声が続出した。そして今回、コメント映像と本編映像、さらにメイキング映像を組み合わせた特別映像「感動編」「共演編」の2本が同時解禁された。

「感想編」では、薮下誠一役の綾野、氷室律子役の柴咲、週刊春報の記者・鳴海三千彦役の亀梨が、それぞれのキャラクターに絡めて本作の感想を語っている。

映像では、朝の薮下家での1シーンが映し出される。顔面蒼白の薮下が震える手で持つ週刊誌には、自身の名前とモザイク入りの顔写真が掲載された記事。テレビからは「悪魔のような教師」と読み上げるアナウンサーの声が流れ、玄関前には何10人もの報道陣が押し寄せてくる。

世間に追い詰められていく薮下を演じた綾野は、「彼(薮下)があらゆることに巻き込まれていくわけですが、“巻き込まれている”という見方だけが正しいのかといわれると、それも違う気がする」と、多くの登場人物と関わった立場から作品を振り返る。また、本作の見どころのひとつである豪華キャスト陣との共演については「芝居合戦というよりは、ノーガードの撃ち合いのよう」と表現している。

同様に、律子を演じた柴咲も「お芝居をする側としてのワクワク感」「『綾野さんとバチバチできるのかな?』みたいな」と、俳優としての高揚感があったことを語る。さらに、律子を演じるにあたっては「確固たる強さ」を表現するために、瞬きを控えるなど、視覚的にも工夫を凝らして役作りを行ったという。

一方、事件を追いかける記者・鳴海を演じた亀梨は、「人間の複雑さ」「一つの答えには辿り着かないもどかしさが、この映画の魅力」と語り、自身の役についても「記者としての正義や使命が役としてあったと思う」と振り返る。その上で、表現においては“強弱”を意識しながら演じたことを明かした。

最後に綾野は、「あらゆることはそんなに単純じゃなくて、角度によって全部違う」とコメント。三池崇史監督が手がけるエンタメ作品としての面白さを実感しながら、薮下の人生を生きたようだ。

「共演編」では、今回の共演を通じて互いの印象を語り合う。綾野が「とてつもない緊張と高揚が連鎖した」と語るのは、律子の供述をもとに描かれる家庭訪問の回想シーン。片手にタオルを持ち、靴下のまま部屋に入ってくる薮下。濡れた前髪の隙間から覗くその目は、狂気に満ちている。

このシーンについて綾野は、「柴咲さんから出ている律子のムードを受け取れたので、あの薮下が生まれた」と語り、柴咲の存在があってこその演技だったことを明かす。一方の柴咲もまた、綾野の演技を「薮下先生の振る舞い方をつくるのが本当に上手だった」と、一つ一つの仕草を挙げながら絶賛している。

カラスの鳴き声が不気味に響く薮下家の玄関前のシーンには、14年ぶりの共演となった綾野と亀梨の姿がある。亀梨はこの場面について、「役として綾野さんにしっかり突っ込んでいけるかが肝だった」と語り、綾野の現場での在り方や向き合い方に「真似したくてもできない」と深い感銘を受けたという。

綾野もまた、「亀梨さんに引き出されて、これまでに出したことのない声やパワーが出た」と振り返り、「(役を)ちゃんと自分ごととして捉えている姿勢」に改めて感心したと語っている。

さらに綾野は、三池崇史監督の演出についても言及。「俳優が何をするかということを、真正面から受け止めてくださる」と語り、自身がいくつかの演技パターンを提案し、その中から監督が選んで撮影を進めたという裏話も明かしている。

「全体の空気が凍る」「怖かった」「ヤバすぎる」——綾野、亀梨、そして三池監督の3人が口を揃えて語る、柴咲の渾身の“怪演”にも注目だ。

あわせて、3点の場面写真が解禁された。1枚目は、薮下が校長・段田重春(光石研)の指示で保護者懇親会に出席するシーン。児童・氷室拓翔への体罰をめぐり、保護者に対して謝罪と説明を行う目的で開かれたこの会には、母親の律子も出席している。必死に何かを訴えかける薮下の鬼気迫る表情が、事態の深刻さを物語っている。

2枚目は、夫・氷室拓馬(迫田孝也)を従えて学校に乗り込む律子のカット。黒のジャケットを羽織り、シャツのボタンを一番上まできっちりと留めた律子が、すれ違う児童には目もくれず、鋭い眼差しで進む姿からは、息子を守ろうとする母親の強い意志が感じられる。

3枚目は、週刊春報の編集部にて、鳴海が上司である編集長・堂前(髙嶋政宏)に完成した原稿を差し出す場面。鳴海の強い気概に押された編集長は、ついに実名報道に踏み切ることとなる。身を乗り出し、真剣な表情で訴えかける鳴海の姿が印象的なカットとなっている。

『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』は2025年6月27日より全国公開される。