子役から『スーパーマン』の悪役に! 百戦錬磨の美形俳優ニコラス・ホルト

#この俳優に注目#スーパーマン#ニコラス・ホルト

『スーパーマン』レックス・ルーサー役のニコラス・ホルト
『スーパーマン』で宿敵レックス・ルーサーを演じるニコラス・ホルト
(C) &TM DC(C)2025 WBEI
『スーパーマン』レックス・ルーサー役のニコラス・ホルト
『スーパーマン』ニコラス・ホルト
『スーパーマン』
『スーパーマン』
『トールキン 旅のはじまり』
『ウォーム・ボディーズ』
ウォーム・ボディーズ

ヒーローのオーディションを受けたら悪役に抜擢

【この俳優に注目】ニコラス・ホルト

現在公開中の『スーパーマン』で、伝説的な悪役レックス・ルーサーを演じているニコラス・ホルト。これまで、ジーン・ハックマンやジェシー・アイゼンバーグなど様々な年代の実力俳優が演じてきたルーサーに、主演俳優級の華やかさをもたらしている。

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実は、ホルトは本作でスーパーマン役のオーディションを受けていた。だが、事前の準備中から「もしかしたら、レックスをうまく演じられるかもしれない」という一抹の思いがあったという。

オーディション当日、会場でデヴィッド・コレンスウェットが太陽の光の中に座っているのを目撃したとき、「まるでスーパーマンがパワーを充電するようで、それを見て『彼こそスーパーマンだ』と思いました」とホルトは後に語ったが、その直感通り、スーパーマン役には『Pearl パール』(2022年)『ツイスターズ』(2024年)などのコレンスウェットが抜擢され、ホルトはジェームズ・ガン監督から直接、ルーサー役のオファーを受けた。脚本を読んでいた時の感触が蘇り、「やはりこの役の方が自分に合っている」と確信し、撮影に臨んだという。

『スーパーマン』

『スーパーマン』場面写真(メイン) (C) &TM DC(C)2025 WBEI

ホルトが演じるルーサー像の特徴は、スーパーマンという“無敵の存在”をも凌駕するリアルな説得力だ。文字通りの超人的パワーを持つヒーローに対抗するのは、高度な知能と冷酷無比な性格。それを覆い隠すカリスマ性で大衆の心をつかみ、恐怖を煽り、印象操作をしていく様は、私たちが生きる現実社会が反映されている。

ホルトは「Entertaiment Weekly」誌上で、現代のテック長者を思わせる“科学的天才”としてルーサーを構築したと言い、キャラクターには知性と狂気が交錯していると語っている。

『スーパーマン』

『スーパーマン』でルーサー役を演じるニコラス・ホルト(左)。 (C) &TM DC(C)2025 WBEI

ヒュー・グラント主演『アバウト・ア・ボーイ』の子役!

1989年生まれのホルトは5歳から子役として活動を始め、2002年の『アバウト・ア・ボーイ』でヒュー・グラントと共演し、世界的に注目された。

キャスティングされた当時11歳だったホルトは、演技は仕事というより遊びの延長のような感覚で、オーディション・プロセスが長かった同作への出演には消極的だったという。映画の大ヒットで一躍人気者になったが、普通の生活を望んだ彼は10代半ば過ぎまでは学業を優先した。

身長190センチの美青年へと成長し、若手スターの仲間入り

イギリスでティーンドラマ『SKINS』(2006年~2008年)の主演を経て、ホルトが再び大きな注目を浴びたのが『シングルマン』(2009年)だ。『アバウト・ア・ボーイ』のマッシュルームカットのあどけない少年のイメージから、190センチの長身の美青年への成長は鮮烈な印象を与えた。

その後は『X-MEN』シリーズのハンク・マッコイ/ビースト役でハリウッドにも本格的に進出し、キャリアを広げていく。同シリーズで共演したジェニファー・ローレンスとのロマンスもゴシップメディアに追われ続け、若手スターとしての躍進が続いた。

時代劇、アクション、異色ホラーまでこなす変貌自在の演技力

スターに必須の華を持つホルトの最大の強みは変幻自在の演技力だ。彼自身、主演俳優としての地位を築くよりも演じる面白さを追求してきたのはそのキャリアを見れば、明白だ。

スキンヘッドに白塗りのウォーボーイ、ニュークスを演じた『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)、『女王陛下のお気に入り』(2018年)のロバート・ハーレーやTVシリーズ『THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~』(2020年~2023年)の皇帝ピョートルなど、時代劇で高慢な権力者を芝居がかった表現で演じている。そして『ロード・オブ・ザ・リング』の原作者J・R・R・トールキンを演じた主演作『トールキン 旅のはじまり』(2019年)で自ら新たな言語を考案する求道者のひたむきさを丁寧に演じた。

『トールキン 旅のはじまり』

『トールキン 旅のはじまり』では、リリー・コリンズと共演。(C)2019 Twentieth Century Fox

ブロックバスターから小規模作品まで、アクション、ドラマ、コメディ、そして『ウォーム・ボディーズ』(2013年)や『レンフィイールド』(2023年)、『ノスフェラトゥ』(2024年)といった異色ホラーまでジャンルを問わずに出演してきた彼のフィルモグラフィーは、30代半ばにしてかなり多彩だ。

『ウォーム・ボディーズ』

ゾンビ版“”ロミオとジュリエット”として話題になった『ウォーム・ボディーズ』で、ホルトは主人公のゾンビR(アール)を演じた。
(C) 2013 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved

最新の主演作にあたるクリント・イーストウッド監督の『陪審員2番』(2024年)は、ある殺人事件の陪審員に選ばれるも、誰にも言えない秘密を抱える主人公の葛藤を見事に表現した。メガロマニアの権化というべきレックス・ルーサー像と大きく異なる、普通の男性役にもしっくり馴染む。この人に演じられない役はないだろう、と思わせる自然さだ。

ホルトの幼い息子がバリカンを手に!?

ルーサーといえばスキンヘッドが代名詞。ホルトも髪を剃り上げて演じているが、バリカンで丸刈りにする役を務めたのは彼の幼い息子だという。剃りたての頭を叩いて喜んでいた、と息子の様子をインタビューで明かすホルトは、息子2人をもうけたモデルのブライアナ・ホリーと幸せな家庭を築いている。

いつの日かトム・クルーズとの共演にも期待

既に確固たるキャリアの持ち主であっても、オーディションを受けるというのがハリウッドの映画界。そして彼も百発百中ではなく、これまで『THE BATMAN-ザ・バットマン』(2022年)や『トップガン マーヴェリック』(2022年)のオーディションでは役を得られずに終わっている。

だが、彼の実力を買ったトム・クルーズは『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(2023年)のガブリエル役をオファーした。残念ながら、スケジュールの都合で実現しなかったが、クルーズの若き日と風貌が似ているホルトとの共演はいつか実現してほしい。

スクリーンを支配するスター性と、細部まで役に染み込んでいく性格俳優の才能を融合させる彼のこれからの活躍には大いなる期待しかない。(文:冨永由紀/映画ライター)

ニコラス・ホルトの美しさが際立つキャラクターポスターなどその他の写真はこちら

『スーパーマン』は、全国公開中。