Netflix、アマゾン…動画配信サービスの戦国時代到来!(1回目)

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今月からサービスが始まったネットフリックス
今月からサービスが始まったネットフリックス

●ネットフリックス強さの秘密(前編)

動画配信サービスの世界最大手、ネットフリックスが9月2日に日本でサービスを始め、ネットフリックスの後を追うように、ネット通販大手のアマゾンも9月下旬から日本の有料会員向けに動画配信サービスを始めると発表した。そこで「動画配信サービスの戦国時代到来!」と題したコラムを3回の連載で掲載します。

1&2回目が「ネットフリックス強さの秘密」、3回目が「動画配信サービスの勢力図と未来」です。まず1回目は「ネットフリックス強さの秘密(前編)」。

ネットフリックスは1997年に宅配DVDレンタルサービスの会社として設立。2007年から動画配信サービスを始めた。「定額見放題制」を採用し、本国の米国では毎月7.99、8.99、11.99ドル(1ドル120円換算で959円、1079円、1439円)で映画やテレビドラマなどのコンテンツが見放題だ。低料金で見放題というサービスが受け、米国では4000万人を超える加入者を得ている。海外展開を始めたのは12年だが、全世界では50か国以上に進出、米国と合わせて6500万人の加入者を誇る。16年末までに全世界200カ国でサービスを始める計画だ。

急成長の秘密は「使いやすいユーザーインターフェース(画面の操作性)」「会員の視聴データベースを使って個人個人の好みにあったコンテンツを探すレコメンド機能」、そして「コンテンツの獲得と製作」にある。

ネットフリックスはテレビやパソコン、スマホ、タブレット端末など、ネットにつながるどんな機器でもサービスを楽しむことができる。リモコンのボタンを押すだけでネットフリックスにつながるテレビも発売されている。

同社では、機器によって異なるユーザーインターフェースの改善にも力を入れている。例えばソフト面である改善を加えた場合、新しいバージョンをランダムに選んだ数十万人の会員にテストしてもらう。そして会員の反応が良かった場合は採用し、悪かったらまた改善を行う。こうした小さな改善の積み重ねで年間600回のテストを行っているという。

ネットフリックスの最大の武器がレコメンド機能だ。会員の実に75%が作品名の検索ではなくレコメンド結果から視聴している。その仕組みだが、まず、コンテンツを内容によって細かく分類・タグ付け。その種類は約7万7000にのぼる。一方で、個々の会員の視聴データを蓄積。世界6500万人以上の視聴パターンと照らし合わせ、各会員の興味に合ったコンテンツを画面上に表示する。縦位置にジャンル、横に該当作品が並ぶ。表示される作品は各自の好みで構成され、どれひとつ同じ画面にはならない。レコメンド機能は会員が作品を見れば見るほど精度が上がっていく。

どの会員も5つの「プロファイル」を持つことができる。例えば夫、妻、子どもで別々のプロファイルを持てるため、家族1人1人の興味にあった作品が画面上に表示される。また大人と子どものプロファイルを分けることで、子どもに不適切な作品がレコメンドされないことにもつながっている。ユーザーインターフェースやレコメンド機能などに携わる「製品」(プロダクト)という部署には1000人が所属し、ネットフリックスの技術力を支えている。(文:相良智弘/フリーライター)

相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。

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