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【映画業界研究 Vol.5】ワーナー・マイカルの番組編成本部長に聞く、シネコンのこれまでとこれから | 映画/DVD/海外ドラマ

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(2009年 8月 1日)

【映画業界研究】映画ヒットの鍵を握るシネコン、その裏側に迫る!

『【映画業界研究】映画ヒットの鍵を握るシネコン、その裏側に迫る!』
松本勲(Matsumoto Isao)……(株)ワーナー・マイカル 取締役 番組編成本部長。1961年生まれ、大分県出身。熊本大学法学部卒。93年に入社後、第一号サイトの海老名ほか劇場支配人を経て、95年、本社番組編成部へ異動。03年5月より現職。

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1993年4月… 2008年にオ… デジタル3Dシ…

[ムビコレNEWS]  1991年に設立、93年4月に日本で初めてのシネコン「ワーナー・マイカル・シネマズ海老名」を開業させたのがワーナー・マイカルだ。以来16年、今では60サイト(劇場)、493スクリーンに増えるなど、順調な成長を見せている。ワーナー・マイカルだけではない。今や映画館といえばシネコンの時代だ。スクリーン数の比率を見ても、全体の8割をシネコンが占めているのだ。

これによって変わってきたのが、日本の興行システム。そこで、ワーナー・マイカルの取締役 番組編成本部長の松本勲氏に、この16年を振り返ってもらいつつ、興行や番組編成のしくみ、映画の可能性についても語ってもらった。

シネコンの台頭が興行のしくみを変えた

シネコンにはじめて足を運んだとき、これが映画館かと驚いた人も多いはず。1つのサイトに7つも8つもスクリーンがあることだけではない。近未来的な内装、売店の品揃え、ゆったりとした椅子と、そのどれもが従来の日本の映画館の常識から、かけ離れているからだ。

「確かに、はじめて来場するお客様にとって、極めて斬新だったと思います。私たちはワーナー・マイカルの名からもわかるとおり、株主の一方がタイム・ワーナー・グループだったので、劇場空間のデザインもアメリカンだった。この空間に病みつきになってくださった方もかなりいました。ですが、業界の下馬評では、日本では成功しないと言われていたんです」

失敗するという下馬評の最大のポイントが、日本の地価や人件費の高さにある。

「広大な土地があるアメリカの地方都市では、土地代も安く、スタッフの人件費も日本より低く押さえられる。加えて、その頃の日本は、映画を見に行くのなら都市のターミナル、東京なら銀座や渋谷というのが一般的でした。ところが、弊社の場合はその反対なので、みなさん懐疑的で、早々に失敗して撤退するだろうという見方が多かったのです」

だが、そうした下馬評をものともせず、同社は「そんなところに市場があったのか?」と思うような郊外に次々とシネコンをオープンさせていく。

「実は海老名の立ち上げ時は、作品ラインナップがあまり充実していなかったんです。それを吹き飛ばしたのが93年夏公開の『ジュラシック・パーク』。その人気は本当にすさまじかったですね。この作品を期に、一気にエンジンがかかり、施設の物珍しさと強力なコンテンツという2つの要素がかみ合って、毎回札止めのような状態になっていきました」

とはいえ、すべてが順風満帆だったわけではない。シネコンの出店によってあおりを受ける近隣の劇場に配慮し、多くの配給会社が話題作をシネコンに提供しないことが、しばしば起こっていたからだ。

「状況が変わりはじめたのが、洋画では2000年前後です。配給会社が映画の需要は大都市だけでなく、全国津々浦々にあるのではないかと認知しはじめたのですね。それからは、話題作を出してもらえなかったサイトにもフィルムが届き、問題なく上映できるようになっていきました。
 この背景をもう少し詳しくお話しすると、開業後しばらくの間は9大都市が地方を圧倒、興収比率も7対3くらいで、映画興行における大都市の力は絶大でした。それが、弊社もかなり郊外に出店を重ねたこともあって地方のスクリーン数が増え、2000年の直前くらいには、大都市と地方の興収比率が55対45くらいになったのです。地方が実績を積み重ねたことが、配給会社の考えを変えたわけです。ちなみに最近では、ファミリー映画のような全国でヒットを望める作品の場合、地方が7割、9大都市が3割と、両者の関係は完全に逆転しています」

シネコンの台頭はまた、興行のしくみをも変えていく。シネコン以前は、全国公開されるような映画は、主にブロックブッキングという形がとられていた。これは、東宝、松竹、東映といった大手興行会社が邦画系、洋画系といった形で、あらかじめ地方の劇場を押さえておくシステム。これにより各映画館は「春休みはコレが目玉で、夏休みはコレ」といった具合に、あらかじめ年間ラインナップを組めるというメリットがあった。だが逆に、作品の公開期間が決まっているため、客入りが悪い映画でも、それを上映し続けることが義務づけられる。

ところがシネコンの場合、7スクリーンで10作品を上映するようなケースが一般的。そのため、入りの悪い映画は上映回数を減らし、その分、人気作を多く回して対応することができるようになる。結果的に、配給会社が1度ブッキングすれば、その映画が上映され続けて当たり前という状態から、上映はされるものの、1日に何回上映されるかは客の入り次第というスタイルに変わってきたのだ。

これをコンビニに例えると、商品を置いてもらえれば売れた時代から、置いてもらった後、入り口近くなど、より客の目を引く棚に並べてもらわないと売れない時代に変わったと言えるかも知れない。こうなってくると配給会社は、自社作品をどの棚に置いてもらえるか(何回上映してもらえるか)が気になり始める。

「その点は、配給と興行の思いが一致するのが難しいところです。シネコンが10点満点で6点をつける作品があるとしたら、おそらく配給会社は8点くらいをつけていると思います。ですが、シネコンの場合は数字に基づいているんです。というのも、シネコンが画期的だったのが、コンピュータ化を進めて、データが充実したこと。そこで、データを用いた相対評価が可能になりました。例えば大ヒット公開中のAという作品と、新しく公開になったBという作品があるとして、累計ではAが断然上でも、今はBの方が勢いがあるということが数字でわかる。そうなると、AよりもBを回数多く上映した方が、より市場にマッチしていることになります」

この上映回数を決めるのは、もちろん、ワーナー・マイカルだ。

「ですが、朝から晩までフルで上映できない時などは、あらかじめ『この時期は作品数が多いので、1日に3回の上映になります』と説明しておきます。やはり、ざっくりとしたお約束をしておかないと、トラブルの原因になりますから」

製作・配給と興行はクルマの両輪

常に業界のリーディングカンパニーでもあり続けるワーナー・マイカルは、3D映画にもいち早く取り組んできた。09年7月現在の3D対応数は、40サイト、51スクリーンにのぼる。これは日本の3D対応スクリーン数(約160/7月11日現在)の約3割にあたる。そして3Dの威力は、同じ作品が3Dと2Dの両タイプで公開される場合、より顕著に現れるという。

「例えば『モンスターVSエイリアン』は3Dが2Dを圧倒しています。ざっくりとした言い方をすれば、3Dは2Dの動員で2倍以上、興収では3倍以上。ただ、昨年公開された『センター・オブ・ジ・アース』のときは、もっと差が激しかったですね。あれで私たちも手応えを感じましたし、業界内でも『3Dってこんなにすごいのか!』といった情報が飛び交うようになっていきました」

戦後、日本は映画ブームを迎え、60年にはスクリーン数が7457と史上最大を記録する。だが、その後、テレビの普及と共に映画は衰退の一途を辿り、もっとも落ち込んだのが1734スクリーンになった93年だ。奇しくも、この年に誕生したのが、冒頭にも記したとおり、日本初のシネコンとなったワーナー・マイカル・シネマズ海老名。

以降、スクリーン数は右肩上がりで増え続け、08年には3359にまで拡大。16年間で、約2倍に増えた計算だ。しかし一方で、年間興収は、93年が1637億円で、08年が1948億円と、応分には変動していない。01年以降は毎年2000億円前後と、ほぼ横ばい。1スクリーン当たりの売上は、むしろ落ちているなど、今後も映画界は、決して楽観視できるような状態ではない。

「確かに楽ではありません。業界では約4000万人の映画ファンがいると言われています。その方たちが年4回、映画を見に行くとして、のべ1億6000万人が映画人口と言われています。ここからは私見になりますが、人口の爆発的増加が見込めない以上、この4000万人以外の方に劇場に来ていただくのは、かなり難しいでしょう。それよりも現実的なのは、4000万人の方に、あと1回多く、劇場に足を運んでいただくこと。そうすると映画人口は2億人になります」

そのために、快適な空間や時間を提供する努力を積み重ねてきたのがワーナー・マイカルだ。だが、「ほかにもまだ、できることはある」と松本氏は語る。

「これは願望ですが、映画の製作・配給サイドの方に、今以上に、私たち興行サイドのフィードバックに耳を傾けていただけないかと思っています。例えば、『おくりびと』を見たお客様は、こんなところが心に響いたとか、はじめてシネコンに来られた方が普段より多かったとか。日々、お客様に接している私たちほど、どんな作品が求められているのかを伝える適任者はいないと思います」

「興行と製作・配給はクルマの両輪」と松本氏。「いい作品を作っていただく必要はありますが、私たちも受け身の姿勢ばかりでなく、劇場での体験をより充実したものにしていただくためには何ができるかを、しっかりと考えていきたいですね」と力強く語っていた。

(テキスト:安部偲)

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