2017年は洋画が強かった! 邦画実写は低迷で、トップ10入りはゼロ

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左:『美女と野獣』/右上:『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』/右下: 『怪盗グルーのミニオン大脱走』
左:『美女と野獣』/右上:『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』/右下: 『怪盗グルーのミニオン大脱走』

【映画興収レポート/2017年】
1位は興収125億円の『美女と野獣』

2017年の年間興行成績をまとめたところ、興行ランキング1位は興収125億円の『美女と野獣』。ディズニーの名作アニメの実写化という抜群の知名度、アニメ版を知る大人にとってなじみの曲の数々、日本のミュージカル界のスター俳優をキャスティングした吹き替え版などが女性を中心に幅広い層に受けた。

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2位は2作あり、1つが『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』。『ハリー・ポッター』の最終章『死の秘宝PART2』から5年が経っているが、「『ハリー・ポッター』新シリーズ」を宣伝で訴求することで根強いファンをつかまえた。

公開直前の来日PRにも力が入っていた。主役のエディ・レッドメインはじめ主要キャスト4人の他、監督とプロデューサーが来日。11月21日に東京・六本木ヒルズアリーナでジャパンプレミア、22日にスペシャル・ファン・ナイト、公開初日の23日には東京・新宿ピカデリーで舞台挨拶を実施。3日連続での来日イベントは極めて異例のことだ。

もう1つの2位は『怪盗グルーのミニオン大脱走』。『怪盗グルーの月泥棒 3D』(10年)が12億円、『怪盗グルーのミニオン危機一発』(13年)が25億円、『ミニオンズ』(15年)が52.1億円。「倍々ゲーム」で興収を伸ばし、さらに伸ばして73億円。ミニオン人気からタイアップが充実。マクドナルドでハッピーセットキャンペーンを8月に実施。パルコの夏のグランバザールで「パルコアラ」と「ミニオン」が共演し、CMソングでは怪盗グルーの声を吹き替えた笑福亭鶴瓶が声で出演。Honda SENSINGでは怪盗グルーのキャラクターたちが出演した独自アニメーションによるCMが製作された。

4位は『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』。興収69億円をあげ5年連続でシリーズ最高記録を更新した。通常、ファミリー向けアニメは大人になると卒業するが、コナンは卒業しない大人客が増えている。大人客が見込めるのでレイトショーでも上映できるのが強み。配給元・東宝の初日アンケートでは20代が41.5%と最も多く、次が15〜19歳の27.1%だった。

17年は洋画が強かった。トップ10を見ると、洋画実写5本、洋画アニメ3本、邦画アニメ2本。邦画実写はゼロで不振だった。年間興収で9年ぶりに洋画が邦画を上回りそう。

邦画実写最大のヒットは『銀魂』。テレビドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズなど独特のコメディセンスで知られる福田雄一が、ギャグやパロディが多い『銀魂』をうまく料理したことでファンも納得の出来栄え。来年夏には続編が公開されるので、さらに人気が高まりそう。

一方『銀魂』を除き、人気マンガの実写映画化は興行的に期待外れが目立った。『3月のライオン』『東京喰種トーキョーグール』『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』が軒並み10億円前後だった。

(文:相良智弘/フリーライター)

[2017年 公開作ランキング]
1位『美女と野獣』125億円
2位『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』73億円
2位『怪盗グルーのミニオン大脱走』73億円
4位『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』69億円
5位『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』68億円
6位『モアナと伝説の海』52億円
6位『SING/シング』52億円
8位『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』46億円
9位『映画 ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』44億円
9位『ラ・ラ・ランド』44億円
(ムビコレ調べ)

相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。

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