セクハラ隠蔽にスパイまで動員していたことが明らかに! 大物に迫る捜査の手

#ハーヴェイン・ワインスタイン

ハーヴェイン・ワインスタインのセクハラ問題について報じる「ニューヨーカー」誌記事/公式サイトより
ハーヴェイン・ワインスタインのセクハラ問題について報じる「ニューヨーカー」誌記事/公式サイトより

10月5日(現地時間)、「ニューヨーク・タイムズ(NYT)」紙に大物映画プロデューサー、ハーヴェイン・ワインスタインの長年にわたるセクハラ行為を告発する記事が掲載された。1ヵ月が過ぎた今、騒動は収まるどころか、他の映画関係者たちに対する告発も相次ぎ、ハリウッドを揺るがす事態になっている。

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ハリウッドにはキャスティング・カウチという言葉がある。新人女優や女優志望者に、プロデューサーが映画出演のチャンスを匂わせてカウチ(長椅子)で性的関係を持つことを指し、映画界の悪習を表すこの業界用語は広く一般にも浸透している。昔から、何人もの俳優たちが実名暴露は避けながらも体験を語ってきたが、 大きく問題視されることはないまま、公然の秘密状態が続いてきた。

そうした風潮につけ込み、30年近くもの間、若い女優たちや自社(ミラマックス、ワインスタイン・カンパニー)社員、映画関係者たちに不適切な性的嫌がらせを続けてきたのがワインスタイン。手がけた作品がアカデミー賞にノミネートされた回数は300を超え、『イングリッシュ・ペイシェント』『英国王のスピーチ』など作品賞5回を含め、受賞は80回を超えるハリウッドの最重要人物の1人だ。

NYT紙記事では、『コレクター』などのアシュリー・ジャッドが1997年に受けた被害について実名で告白したほか、『スクリーム』で知られるローズ・マッゴーワンなど少なくとも8人の被害者との示談がまとめられていたと報じられた。

ワインスタインの手口はいつも同じだった。仕事の打ち合わせやパーティだと言って相手をホテルに呼び出し、自室に連れ込んでマッサージをさせたり、自分がシャワーを浴びるのを見せようとする。そればかりか無理やり性行為に及んでいたことも後述の「ニューヨーカー」誌記事で明らかになった。仕事で滞在するビヴァリーヒルズやロンドン、カンヌ近郊の高級ホテルでのことだ。

イタリアの女優・監督で、アメリカ映画でも活躍するアーシア・アルジェントの2000年の監督・主演作『スカーレット・ディーバ』には、ヒロインの女優がホテルの一室でプロデューサーに襲われるシーンがある。この場面は、彼女自身がワインスタインから受けた暴行を基に描かれたものだという。

10月10日(現地時間)、「ニューヨーカー」誌には、21歳だった1997年にワインスタインにレイプされた経験を語ったアルジェントを始め、他の被害者たちが声を上げた。ミラ・ソルヴィーノやロザンナ・アークエットは関係を持つことを拒否したことから、ワインスタインの差し金でその後のキャリアに影響が出たと語り、同誌は2015年にイタリア人モデルのアンブラ・グティエレスがニューヨーク警察に提出した録音テープの内容も公開。強引に部屋へ連れ込もうとして相手が拒むと、「出て行け。二度と電話してくるな」とワインスタインが追い払う一部始終が明かされた。

同日の「NYT」紙上には、ワインスタインの秘蔵っ子と言われたグウィネス・パルトロウ、アンジェリーナ・ジョリーといったオスカー女優たちも、駆け出し時代に被害に遭っていたと名乗り出た。その後も『キル・ビル』のダリル・ハンナをはじめ、ワインスタイン製作の映画に出演した女優たちの告発は続いた。

堰を切ったような告発の連続に、何故いま急に? という声も聞かれるが、今まで表沙汰にならなかった理由としてまず考えられるのは、告発によって女優生命を絶たれることへの恐怖だろう。

性的嫌がらせを仕掛けてくるのが絶大な権力者であるという点では、パワーハラスメントでもある。レッドカーペット上で女優志望者へのアドバイスを求められ、「ハーヴェイ・ワインスタインに誘われても、行かないこと」と答えたコートニー・ラヴは、その後にエージェントからハーヴェイについて公の場での発言を禁じられた。

声を上げるまでに10年、20年もかかったのは、心身に受けた大きな傷から立ち直るのに時間を要したこともあるだろう。

圧倒的に男性優位なハリウッドでも少しずつ女性がパワーを持ち始めたこと、ツイッターなどSNSで世界中から寄せられた最初の証言者たちの勇気を讃える声に背中を押されたこともあるだろう。その一方で、アルジェントは自国イタリアでひどいバッシングを受け、国外移住を決意した。

ワインスタインは当初、代理人を通して報道は虚偽だとコメントしたが、ともに映画会社を経営してきた弟のボブは「兄の主張は何から何まで不誠実です」と突き放し、兄を解雇した。エミー賞を主催するテレビ芸術科学アカデミー、アカデミー賞主催の映画芸術科学アカデミーもワインスタインの永久追放を決定。ファッションデザイナーの妻、ジョージナ・チャップマンは離婚を決意したという。四面楚歌のワインスタインはアリゾナ州でセックス依存症のリハビリ施設に入所したが、わずか一週間で出所。現在は同地で外来のリハビリ・プログラムを受けている。

11月6日(現地時間)、「ニューヨーカー」誌は、セクハラ行為に関する記事掲載の動きを察知したワインスタインが隠蔽目的で、イスラエルの諜報機関モサドの元局員が多数所属する「ブラックキューブ(Black Cube)」や大手調査会社「クロール(Kroll)」などを利用して、情報収集を試みていたことも明らかに成った。彼らは女性権利活動家と身元を偽って、被害を公言する前だったローズ・マッゴーワンや取材していた記者らに接触していたという。

明るみに出た蛮行の数々は、もはやスキャンダルという域には収まらず、ロサンゼルス警察や英警察も捜査を進めている。

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