心揺さぶる感動作『インスペクション』を彩るスピリチュアルな楽曲! アニマル・コレクティヴ起用秘話

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『インスペクション ここで生きる』
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『インスペクション ここで生きる』
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『インスペクション ここで生きる』
『インスペクション ここで生きる』

社会や愛する人々に認めてもらいたい願望、それが実現するという希望を抱かせる曲

A24が新たに贈る感動作『インスペクション ここで生きる』の音楽を、インディー・ロックバンドのアニマル・コレクティヴが担当している。同バンドがいかにして起用されたのか、エレガンス・ブラットン監督とプロデューサーによる楽曲起用秘話を紹介する。

・ゲイであるために母に捨てられ、16歳でホームレスになった青年が生きるために選んだ道とは!?

『ムーンライト』(16年)『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(22年)などの革新的な作品を次々と送り出してきた映画会社A24に見出された本作は、監督自身の体験を描き、世界で絶賛された心揺さぶるヒューマンドラマだ。

イラク戦争が長期化する2005年のアメリカ。ゲイであることで母に捨てられ、生きるためにすがるような想いで海兵隊に志願した青年。しかし、彼を待ち受けていたのは、軍という閉鎖社会に吹き荒れる差別と憎悪の嵐だった。

『インスペクション ここで生きる』

海兵隊に在職中の20代で初めてカメラを手にし、そこから映像記録担当としてキャリアを始めたエレガンス・ブラットン監督の長編デビューにして、彼の体験にもとづく実話である本作。社会から疎外され、“透明だと思っていた”自分を癒すために映画を撮ろうと決意した監督は、「この映画で主人公が感じる欲望、恐れ、そして最終的に抱く目標まで、すべて本物です」と語る。

主人公エリス・フレンチを演じるのは、俳優、そして歌手としても活動するジェレミー・ポープ。本作で第80回ゴールデングローブ賞で主演男優賞(映画・ドラマ部門)にノミネートされたほか、世界各国で高い評価を受けた。

『インスペクション ここで生きる』

本作の印象的なシーンで使用されている、アニマル・コレクティヴ手掛ける劇伴の数々。エレガンス・ブラットン監督の半生を描いた本作において、主人公が抱く感情や行動に深く寄り添った劇伴に仕上がっている。

「21世紀の最重要バンド」とも評されるアニマル・コレクティヴ。1990年代半ばに友人同士で自然発生的に結成されると、アルバム毎にメンバーが違う独自の音楽性で、アンダーグラウンドシーンを中心に注目を集めた。後にイギリスのレーベルと世界契約を結ぶと、数々の年間ベストに選出される作品を数多くリリースし、映画では本作と同じA24製作の『WAVES/ウェイブス』(19年)にも楽曲提供。8月25日には限定12インチの発売も控えるなど、世界中で絶大な人気を誇る。

そんな彼らの音楽が、いかにして本作に落とし込まれることとなったのか。鍵となったのは、本作のプロデューサーであり、ブラットン監督のパートナーでもあるチェスター・アルジャーナル・ゴードンのようだ。コロナ禍に、チェスターと共にニューヨークからアニマル・コレクティヴメンバーの出身地でもあるバルチモアに引っ越した監督が、当時を振り返る。

「その頃、アニマル・コレクティヴのアルバム『Merriweather Post Pavilion』を週に2回は聴いていて、チェスターが『楽曲をお願いできないか連絡してみる?』と提案してきた。彼の言う通り、ダメ元でコンタクトしてみたら、イエスと言ってくれたのさ。何が起こるか分からないものだね」。監督は当時の喜びを「アニマル・コレクティヴの5人目のメンバーになれた気分だった」と表現した。

一方、アニマル・コレクティヴのブライアン・ワイツ(ジオロジスト)は、今回のオファーを「まったく予想していなかった」と茶目っ気たっぷりに振り返る。「僕たちの音楽はホラーやSFが向いていると思っていた。だからエレガンスから連絡があり、僕たちが経験したことのないような彼の人生について描くと知らされた時は、『君のストーリーを伝えるのに僕たちは本当に適している?』と思わず聞いてしまったよ」と当時の想いを明かす。

オファーに対する驚きつつも、最終的に映画の世界観をさらに深める仕上がりとなった今回の楽曲について、エイヴィー・テアは「強さを保ちながらも繊細さも垣間見える曲にしたかった。社会や愛する人々に認めてもらいたい願望、それがいつか実現するという希望を抱かせるような曲に仕上がった」と自信を覗かせる。

エレガンス・ブラットン監督
エレガンス・ブラットン監督

監督によると、本作の楽曲は主人公・フレンチが新しい“居場所”を探し求めるというコンセプトに基づいているという。「僕はゴスペルやR&Bを聴いて育ってきた。ソウルフルでコール&レスポンス系の音楽だね。本作にはスピリチュアルな楽曲が多く用いられている。ボンゴやイスラム教の祈りやキリスト教のコーラスなども取り入れているんだ。これまで自分の居場所を見出すことが出来ていなかった主人公が、“自分自身を貫いていく”。そんな様子を表現できるサウンドを目指したんだ。楽曲の各要素は、スクリーン上の多様性にインスパイアされていて、変化をもたらす器となっている」と語っている。

ブートキャンプの単調さや気が変になりそうな感覚と、フレンチが体験する変化を並べて配置することが狙いだったそうだ。ただ美しいだけではない、感情の震えを増幅させるようなチャレンジングな劇伴にぜひ耳を傾けてほしい。

『インスペクション ここで生きる』は8月4日より全国公開。

・[動画]ゲイであることで母に捨てらた青年の生きる道は軍しかなかった/映画『インスペクション ここで生きる』予告編